06 ミラ嬢とシリウスの距離①
ゆったりとした空間の中で、数刻の眠りに目を覚ました頃合いだろうか?
何故か俺は、とてもじゃないが冷静ではない状況に陥っていた。
あれ? 俺は確か草の上に寝てたよな?
なのに何で、俺は、ミラ嬢が横で寝ていて、抱きついているのだろうか?
ヤバイよな? と言うより何でミラ嬢まで寝てんだよ。
俺は嫌な汗がダラダラと流し、出来るだけミラ嬢が刺激で目を覚まさないように慎重に移動する、そのとき、ミラ嬢が異様に刺激的な艶っぽい声がして、グハッとヤバイ感覚に襲われたとき、ミラ嬢が目を覚ました。
そして俺といまの状況に、ミラ嬢は「┄ほう~」と変に驚きもせずに、まじまじと俺を見つめて呟くなり
「┄何でしょうか? これは?」
と言われ、俺だって知りたいよと泣きたくなるが、変にこれから一緒に行動するべき、仕事のパートナーに妙な誤解はされたくないと、俺は慌てて、離れてから
「俺┄何もしてないから! 寝てたから、ミラ嬢を抱き寄せてたのかも、だけど┄何もしてないんで、変に誤解はしないで欲しい」
とあわあわしながら、赤面してるだろう顔など気にせずに弁解すれば、ミラ嬢はゆっくり起き上がるなりポツリと「┄なるほど」とか言って呟いたあと
「┄誤解はしていないので大丈夫ですよ、ですが、疲れもとれましたし、時間もいい頃合いかと思われますし、良かったですね」
普通に動揺など皆無の如く、冷静に言ってくるミラ嬢に、何だか面白くなかった。
俺一人だけ動揺してるだなんて
というか、一人の男として認識されてないのだろうか? 腹を立てる前に、そう思ったほうがいい気がした。心の平穏のためにも
だから俺も起き上がるなり、そうだなとだけ言ったあと、互いに時間を確認してみれば、一時ぐらいになっていた。
丁度良い時間になっていたことで、弁当を片付けたあと荷物を異空間に直して、ミラ嬢と俺は調査へと行動を移すことにした。
◇◆◇◆◇◆
午後からは一応は、警備関係で仕事はあったが、ローズ宰相がより効率的にと、行動出来るように促してくれていたおかげで、俺はミラ嬢と町中にて、最近の噂などを調べていた。
そんな中で一人、有力的な情報を持った男性から良い話を聞くことが出来た。
男性はスノウ、菓子職人の若旦那で、結構な支店などを持ち色々な国々に流通しており、情報などは詳しいらしく、俺の両親のことも知っていた。
「┄では、コード家による詐欺が勃発していると言うことなんですね」
「そうなるね、時に最近では何故か、人拐いとかの盗賊と手を組んでるらしい」
「┄人拐いで、盗賊とですか? それをよく知ることができたな?」
「まあ情報に関しては、機密事項となるため教えてやれないが、盗賊は悪どいと有名な輩であるのは確かだ、もし関わるならば気を付ける必要はあるがな」
「そうさせてもらう。┄ところで、えらく忙しそうだな?」
ここに入っていたときから、よくバタバタと店員が動き回る姿が視界に入り、少々気になり聞いてみると
スノウは説明してくれた。
なんでも、薬屋の娘がスノウにとても素晴らしい提案書を作り出したらしく、いつもボランティアで、持って行っている菓子をリメイクし、新しい工夫のあるものの加工の工程を模索しているとのことだった
そして今回の王国誕生祭にて、試作品の菓子を出したあと、国王や王子達に献上し認めて貰うことなどを教えてくれた。
なるほどと納得した俺は、話を聞かせて貰ったことの礼を述べたあと、ミラ嬢と共に店を後にした。
◆◇◆◇
少し歩きながら、ずっと黙っていたミラ嬢を見つめ聞いてみることにした。
「┄ミラ嬢、さっきの話を聞いたなら、どう思ったか教えてくれないか?」
「シリウス様の┄ご両親に対してですか?」
「ああ、別に遠慮する義理はないから、素直に思ったままを話してほしいんだ」
ミラ嬢ならば、嘘偽りなく意見をくれるだろうと聞いてみると、ミラ嬢は少し考えた表情を向けたまま
「┄そうですね、私の見解ですが┄盗賊と手を組んで、自分に不利なことをバレないと判断しての行動であるのかと、不可解さは感じます」
「やはり、そう思うよな。もう少し他の場所も調べていきたいんだが┄大丈夫だろうか?」
「私はシリウス様の命に従うように言われて護衛する身です、気にせずに思うがままに動いて下さい、意見があれば、答えますので」
「そっか、ならいいけど」
なんだろうな、俺的には、もう少しラフにして欲しいんだけどな
せっかく協力してくれてるなら、いっそのこと言葉と態度は変わらないものかね
でも見ているかぎりは仕事主義者みたいだし、もう少し親しくならないと無理かもな、何故なら、命令待ちしてる姿が俺の所のメイドに似てるし
俺は頬をポリポリと掻いてから、行き先を町の屯所にある近衛兵の所へと告げて歩きだした。
屯所は町の中央市場の近くにあり、町の住民の警備などをするために設置されていて、青い屋根に白い壁をしたシンプルな建物となっている
入り口あたりに着いた俺は、ミラ嬢を後衛に下がらせながら、ドアをノックする
すると扉が開き中から、何故かクライブ殿が出てきた。
「ほう、シリウスか、屯所に用とは珍しいな」
「少しばかり調べものがあり、屯所にて情報がないかを確認しにきたのです」
まさかクライブ殿が出てくるなど思っていなかったせいで、少々吃りそうになったが、気持ちを落ち着かせて応えると
「┄なるほどな、だが少々┄近衛隊長はいま不在だと、つい先程言われてな、会うのは無理だが?」
情報と聞いて、近衛隊長に用があると判断されたクライブ殿に俺は首を振る
「近衛隊長ではなく、副隊長格のブルム殿に用があるので┄ご心配には及びません」
「そうか、ならば入り口にて邪魔をしては失礼だな」
クライブ殿は扉の入り口から退いて、俺達を中に通してくれた。
建物に入ると、クライブ殿もまだいることに、少しばかり気になり、屯所にいる理由を聞いてみたら
どうにも最近になり、騎士科の生徒が行方知りれずらしく捜索中と説明されて、クライブ殿がいま騎士科の先生をしていることを思い出した
あまり先生と言うよりか、どちらかと言えば騎士団の取締役を担う上官の風情を醸し出しているため、つい緊張する
それに実際はドラゴンだし、上位種の方だから緊張してしまうのは、しょうがないと思う
だからこそ、事情を聞いたからには、出来るだけ俺も協力できたらと提案しておいた。
するとクライブ殿は、無理をするなよとだけ言ったあと、踵を返し壁際にて移動していた。
もしかすると近衛隊長を待つつもりなのだろうと思い、俺は目的の人物を受付カウンターに移動しようとしたとき
「┄シリウス様、少しばかり側を離れても宜しいですか?」
と急に声をかけられて、振り向いたら
ミラ嬢が妙に真剣さのある瞳で、俺を見つめていた。
「┄何かあったのか?」
「はい、少し知り合いの気配がしまして、ダメでしょうか?」
「重要な要件ならいいけどさ、もしかして暗部関係かい?」
「守秘義務のため答えられません」
「そっか┄┄わかった。少し離れる許可を出すよ、でも無理をしたら困るから、怪我はしないでくれよ」
「┄┄善処します、では┄」
それだけ言い残すと、スッと気配を消していなくなった。
急にいなくなったら、回りが驚きそうだが、辺りは気にしてないとはな
もしかすると屯所に入った当初から、気配を消してたのかね、まったく┄メイドらしくないなミラ嬢は┄┄┄でも頼もしく思えるから困るんだけどな
少々┄苦笑しつつ、俺は自身でやるべきことをしようとミラ嬢を信じて行動に移した
◆◇◆◇◆◇
受付にて副隊長のブルムを呼んで欲しいと告げれば、何用かと聞かれ、ローズ宰相より話が言っていると伝える
すると受付の人物は、パラパラと名簿書類だろう紙を捲り確認していたが、ローズ宰相から前持って話が通っていることが事実だとわかり
すぐに近衛兵の一人が、副隊長のいる場所に案内してくれたのだった。