03 ローズ宰相の提案
頷きの話にきりがよくなった頃合いに、ローズ宰相との会話へと戻ることになり、詳しい計画上の立案や調べるべき考案などを、話し終えたあと
それを実行のもと、動くことになると同時に、ミラ嬢とも話しをしないといけないんではと判断したが、ミラ嬢からは明日にやるべきことがあると言われ断られた
そして時間を見れば、結構な時間が過ぎていて、ああ、どうしようかと思っていたが
いつまでもここにいるのも失礼だし、ローズ宰相といつまでも話して過ごすなど、もっと嫌なため、早々に退出するべく腰を上げれば
「帰るならば、送るがどうする?」
と俺のことを気遣うローズ宰相に、何を企んでるのかと訝しげに見てしまう
「別に、何かする事はないさ、いまは協定を結んでる仲だ、協力者には危害を加えんさ」
「ふーん、危害は加えないねえ、俺はまだ信頼できないんで、帰りは送らなくていい。それに男の俺を襲うなど、死をもって罰してやるがな」
「┄そうか、ならば┄さっさと帰れ、連絡は貴殿の使い魔か、ミラに頼め、そうすれば情報ぐらいは交換できるからな」
「了解した。今後の調べたあとは、報告させて頂くさ、互いによい理解と協定のもとにな」
そう誓いの宣言したあと、客間をあとにしたあと、玄関に向かって歩きだしていた
◆◇◆◇◆◇
シリウスが部屋を後にした頃、ローズはミラを見て、呆れた表情を向けていた
「┄何ですか、その顔は」
ミラはローズの視線に、瞳をいつもの光を取り戻した感じで睨みつける
「いや┄ミラが、シリウスに対しての態度に、違和感を感じたものでな、てっきり、猫を被らずに、素で嫌味ぐらい言いそうだと、思っていたんだが」
「ああも、冷たく感情を殺して見てるから、変だと思ってしまってな」
「┄別に、あの方は私などの表情になど、気にしたりしませんから、思い出さない方に表情を出しても、意味がないのです」
少しイライラしている口調のミラにローズは苦笑したあと思う
このシリウスへの協力は、ミラからの頼みだから引き受けたのが一概にあり、理由を聞けば、どうにもシリウスの両親が帰郷し、下手をすると、心が傷つくんではとか、悪意に飲み込まれてしまうんでは
そんなことを素直じゃない口調で言っていた。
実際は心配なのに、ミラは口から憎まれ口しか出さないため、育てたクウガを呼び寄せて説教したのは記憶に新しい
ふうーっとローズは溜め息がてら思い出していたら、部屋をノックする音がし
「┄入って下さい」
と入室の許可を出せば、扉を開き、ルーヴェンス殿下が現れ、すぐ近くには、メリアとクロードもいた
「┄話しは、どうにか上手くいったんだな」
殿下が、中に入るなり、ソファーに座りながら言われ頷くとクロードにメリアも安堵していた
「┄シリウス様は、あまり一人で考えすぎますから、少しぐらい姑息なやり方のほうがいいのです」
「メリアの言う通りだな。でも、宰相殿もよく、シリウスに協力できましたね」
「ふっ、シリウスやクロードとルーヴェンス殿下は私にとっては、弟子になります」
「それに、ミラの母君にも、遺言で言われてますしね」
ローズがぽつりと呟いた言葉に、ミラは苦笑する、遺言はミラにとっては辛い現実を感じるものだが、それもまた運命であると知っている
「ならば、シリウスはミラ嬢に頼み、我等は余計な処理を済ませておくことにしよう」
「┄ああ、そうだな」
ルーヴェンスとクロードが、互いに話し
「お父様のこれからはどうするんです?」
メリアがローズの近くに行き、問われてローズは、自分にやれることをしていく内容を話して、今後に調べることを提案していく
それを聞いていたクロード、メリア、ルーヴェンスは頷き、それぞれに必要な条件のもと話し合っていた。
ミラはその話し合いには参加せず、客間を出て行くと、シリウスの後をつけていった。
◇◆◇◆
玄関ホールにたどり着いた俺は、少しばかりメリア嬢の屋敷を見ていた。
何となくだが、婚約式に見て以来、何だか妙に変な夢を見るようになり、いつも知らない筈の少女と遊んでいて、屋敷に一度来て、何処かに行ったんだよなー
とか思っていると、ミラ嬢が急に目の前に現れて、一歩後退したが、変に驚いた声をあげなかった自分を褒めたくなる
「ミラ嬢、何で┄ここに? 見送りなら大丈夫ですので、結構で┄┄」
「別に見送りではありません、今日から貴方の護衛をするので、帰りも一緒のほうがよいかと思いまして」
「┄はい⁉┄いや、いやいや、護衛とかは、いいよ、明日から調べるんだしさあ、女性に夜を歩かせるなんて、困るし」
「困るとは?」
「変な奴とかいるからだよ、女性は危険なんだ、襲われたら狼に食われるって聞いてますかい、ミラ嬢」
俺がミラ嬢が夜に歩くのは危険だと説明している間に、何故かジロジロと顔が接近してきて、赤い瞳に俺が写り、動揺している姿があった
当たり前だ、女性にこんなに接近されているんだから生まれて初めて、ジワジワと頬が赤くなっていく熱に、必死に顔をそらしていたら
「┄狼と言っていたので、獣耳か尻尾は生えないんですね、モフモフしたかったのですが」
狼って、獣人と同じにして観察されていたのかと、妙に残念な気持ちになるけど、変に可愛いとか思ってしまう俺がいた
「えっと、狼ってのは、獣人とは違うんだが」
「┄そうなのですか? お嬢様は意外に狼族なため、獣化すると可愛いんですが」
無表情を健在な表情での可愛いは、心がこもっているのか怪しくなるものの、人らしい言い方に微笑ましく思えた
「だから獣人ではなく、ああ、もう説明すると話しがそれるな、しょうがない┄┄えっとごめんね」
俺はミラ嬢の天然発言に、説明が続かないと思い、実践で教えることにした。
一応謝りを入れてから、ミラ嬢を抱きついて、口許を首にあてて、軽くキスを落とすとミラ嬢がピクッと動き反応され固まっていた。
俺はミラ嬢の反応に、すぐに離れて
「えっと、これが狼って奴かな。っていうか、抵抗していいんだけど┄┄えっと、わかってもらえたかい?」
何となくミラ嬢の顔を窺いながら、聞いてみたら、真っ直ぐに俺を見つめ赤い瞳が揺らめいてる感じに、怒ってるのかな~っと思っていたとき
「一応は理解しました、ですが抵抗する必要はありませんから、別に」
「┄え? は? なななんで⁉」
「まあ、一応の収穫ありと判断し、今日は見送らせて頂きます、また明日、シリウス様」
俺の動揺など気にせずに、淡々とした表情をされながら言われ、何だかやり損な気分になるが、夜に女性が歩くのは危険だと理解してくれたなら、いいかな
そう判断して、俺はミラ嬢に見送られ屋敷を後にした
しかし深夜になった雪が、変に気持ち良いと思えるほどに、熱く
寮に帰ったあとは、その熱はミラ嬢にしたキスのせいだと、気づいた頃には、一人で悶絶してしまった
◆◇◆◇◆◇
昨日の出来事から俺は、ミラ嬢の言われた言葉が頭をグルグルに繰り返していた。
抵抗する必要はないって、嫌じゃないのか?
普通は好感がなければ、気持ち悪いとか言われるとおもうんだけど
俺はそんなことを考えながら、つい透視のスキルで、ミラ嬢の動向を調べ、何処にいるかをスキルを使い観察して人柄を見ていた
どうもミラ嬢は俺とだけではなく、誰に対しても冷たい対応をし、冷淡に意見を述べ叱咤したりしていた。
あとあまり顔の表情筋は動かず無表情な感じの印象がつよかった
「┄あまり表情が表に出ないタイプかね?」
ポツリと呟くように独り言を言っていると部下から突っ込みをいれられた
「┄隊長、何か言いましたか?」
「いや、何でもない┄業務に専念しておいてくれ」
「┄┄あ、はい」
妙に歯切れが悪い俺の対応に、素直に業務へと戻る部下に安堵していた
まあ、クロードに見つかれば、呆れるか、最終段階には妙な事を言われるだろうけど
『シリウス様、欲求不満ですか』
とか言うんだろうな
え?
声に対して驚いていたら、背後にローズ宰相の暗部部隊隊長のクウガが気配を消して現れていた
『ミラを無断で覗くのは、あまり感心しませんよ』
『はは、確かに、でも、何でだい⁉』
『プライバシーと言う言葉がありますから、知りたければ、ミラから聞いてくださいね』
クウガは呆れながらの言葉に、そうかもなとも思えた
『ところで、クウガは何の用で来たんだ?』
『┄緊急の用件を報告しに来たんです』
『国王より、シリウス様への通達の書面になります。では、他の皆様にも渡さねばならぬゆえ、これで』
クウガは書面を俺の手に渡すと姿を消した
俺は何の書面かと目を通して見れば
王国誕生祭の時にパートナーを見つけ参加すると言う内容が綴られていた
前にはなかった、パーティーに俺は嫌な顔が出たのは、しょうがないと思う
俺はパーティーとか、社交界が嫌いなのだ
変に群がる女性にも、キツイ香水を身体に接触してくるし、キーキーと甲高い声で騒ぐ姿は母上に似ていると思ったら、吐きそうになるからだ
くそっ! なんでよりにもよって、今回はこんな催しがあるんだ、絶対に嫌がらせだ俺に対して
よし! 忘れよう、いまは
この案件は、落ち着いたら考え、どうにか欠席すればいいか考えてやる⁉
そう決意を固めて、頭を切り換え、仕事を片付けたあとは、聞き込みから始めようと決心した
◇◆◇◆◇◆
仕事に区切りがついた聞き込みをはじめていると、ミラ嬢が前方より、資料を山積みにして歩いていた
クウガには付け足すようにメモも張り付けられていて、ミラ嬢は昼時には王城でローズ宰相の補佐をしていると書き記されていたからだ
宰相はどうでもいいが、何なんだあの山積みにある資料は?
そんなことを考えていると、ミラ嬢とすれ違うが、俺のことを視界に入っていないらしく
スタスタと歩いていくため
何だか昨日のやりとりで、悶々としていた俺が馬鹿みたいだと思えた。
だからこそ、恥ずかしさはなく、落ちそうな資料を俺が半分持ってあげると、ようやく俺の存在に気づき
「ありがとうございます」
「いや、いいよ。それより運ぶの手伝ってあげるよ」
「ほう、優しいですね、ではお願いします」
素直に淡々だが、礼を言われ、何だかちょっと嬉しくなった。
◇◆◇◆
俺は宰相のいる執務室にノックをすれば、入室の許可を得て、中に入ると
宰相がうなだれるように机にて、死んでるかのように、資料の山積みに埋もれていた。
「何かあったのか、宰相殿?」
不可解な状況に声をかけてみると、宰相は俺に気づくなり険しい顔になるが、机に手を組み口元当たりに顔を預け深い溜め息を漏らした
「ああ、少しばかりな┄」
「それよりも何か用でも、あったのか?」
「いやミラ嬢の資料に、何となく手助けしたくなってね」
と言うなり、資料を机に置けば、まるで振動に弱い山が崩れるが如く、横にある書類が崩れて、新たにローズ宰相へと直撃する
ザザザザと崩れさる書類に、グオっと唸り
「お前は邪魔しに来たんなら帰れ!」