2話 ダンジョン作成チュートリアル
「はっ! き、気を失ってたのか?」
空が意を決して宝石に触れた時、あまりに膨大な量の情報が決壊したダムの様に空の頭に流れ込んできて、痛みを感じる間も無く地面に倒れ込み気を失なっていた。
「や、やばいなアレは……気を失わなかったら絶対狂っていた自信がある」
だが、その成果はキチンとあった。
それは空の頭の中に浮かぶ、このダンジョンについてのあらゆる知識だ。
あまりに情報が多いので、空は把握しきれていないのだが、重要なことは分かった。
「ダンジョンコアが破壊されればダンジョンは崩壊する」
ダンジョンコアとは赤い宝石のことだ。
そしてもっと重要な事は、ダンジョンコアが破壊されてもダンジョンマスターは死なないという事だろう。
よく小説とかでは、コアが破壊されるとマスターも死ぬような設定があるが、どうやら違うらしい。
いざとなればダンジョンは見捨てて、空は外に逃げるなんてことが出来る。
生存率の確保が何よりだと空は考えているのだ。
「さて、ダンジョンか……」
ダンジョン作成にはいくつかの規約がある。
1.階層にあったレベルにすること。
2.下の階層へ続く階段は必ず設置すること。
3.必ず下の階層に行ける道を製作すること。
4.モンスターは最大で5種類までしか同じ層には配置できない。
5.ボス部屋は同じ階層に2つ以上作ってはいけない。
大まかな事はこのくらいだ。備考として『ダンジョンの入り口は塞いではいけない』というのもある。
そして、ダンジョンを作ったり、モンスターや宝箱などを配置するのに、DPというのが必要になる。
DPは日をまたぐと100DPもらえ、ダンジョン内にいる人間のレベルに応じて五分毎にDPがもらえる。また、人間が死んだ場合もレベルに応じてもらえることになる。
なんと初期ポイントが10000DPだったりするのだ。
しかし、階層1つ増やそうとすれば、10000DP必要なので、初めからある5階層分のみ今はいじることになるのだろう。
「えっと、第1階層だしトラップとかは無しで、モンスターもウルフだけで良いなかな?」
ウルフは召喚できる中で最弱の魔物だ。
最初の敵と言ったら、ゴブリンやスライムだとかを空は考えてしまうのだが、それらは意外と強いらしい。
それに、ウルフは一体あたり10DPとお安い。
そして、自動でモンスターをその階層限定で発生させるように出来る『オートスポーン装置』なるものがあるり、ウルフの場合お値段は1000DP。
ウルフ100体分だが、先のことを考えると絶対にお得になるだろう。
そして、ダンジョンといえば宝箱だ。
宝箱も1つずつ設置できるが、宝箱の方にも『オートスポーン装置』がある。ランクによって消費DPは大きく変わるが、低ランクの物だと2000DP辺りだ。
いざダンジョン作りとなったが、階層は5つ初めからあり、下手に内部を変えようとすればDPがかかってしまう。
そして、モンスターやら宝箱を設置していると、それだけで初めにもらった10000DPがほとんど無くなってしまい、空はダンジョン作りらいしダンジョン作りは出来なかった。
「ま、まあしょうがないよな……初めから何でもかんでもできるなんて思っちゃいないよ」
本当は1階層くらい自分で作って好き勝手にしてみたいと言う欲望が空にはあったのだが、DPの消費が思ったより大きかったのであえなく断念した。
「あと500DPか……何か出来ることってあったかな?」
空は記憶の海を彷徨い、出来ることがあるのを思い出した。
「ああ、そういやガチャなんてもんがあったな、しかも1回500DP。ちょうどだな……ロマンだよな?」
DPを使って自身のレベルやスキルなんかを覚えたりも出来たりするのだが、目先のことに空は走ってしまうのであった。
「よし! レッツゴー!」
DPを使いウィンドウを操作してガチャをする。
すると、なんの演出もなく目の前に光の玉が現れ、ピキピキと殻を破るように何かが出てきた。
そして、その姿を改めて確認すると、
「猫じゃん……」
猫であった。ただ、白くて太った猫であった。
正しくはケットシー、妖精種でランクはF〜SSS、その他とある中でCに位置していて序盤においてはそこそこ強いだろう。それこそ浅い階層ならボスを任せられるくらい。
「ただ、これは……どうなんだ?」
だらしない肉体に、眠たそうな顔。今も歩いてはいるのだが、その動きは亀より早いかな? 程度である。少し歩いては休み歩いては休みを繰り返している。
「はぁ、確率的にCってハズレじゃ無いんだけどな、こいつはハズレか……?」
記憶の中では、ガチャを回しても大抵がFやEランクで、Dが出れば良い方Cは滅多に出ない。
ゲームなどでいう超激レアクラスなのだCランクというのは。ちなみにB以上は滅多以上に出ない、普通に召喚した方がいいレベルだ。しかしS以上はどっこいどっこいといったところだが……
「まあ、こいつは置いておこうか、切り札として使え『ブー! ブー! 侵入者が現れました!』な、なんだっ!」
空は忘れていたのか驚いているが、ダンジョンに侵入者が現れると、このようにアラームがなる設定に今はなっているのだ。
「はっ! 驚いてる場合じゃなくて、なんとかしないと」
そして、空はダンジョン内ならばどこでも映すことのできる画面を空中にだし、侵入者を映し出す。