9話 四人は誓う
自衛隊の小隊が門の中を調査し、諏訪部総理と西野副総理、野良官房長官、鎌田陸上幕僚長はその報告を受け、とある場所の一室に集まり会議を行っていた。
「鎌田君……銃が効かなかったのは事実なのかね」
「ああ、信じたくねぇが事実だ……現にそれで一人やられちまってる」
諏訪部は「信じられん……」とこめかみにしわを寄せながら言う。
「一応ライフル弾を何百発も撃ち込めば倒せるようですが……あの化け物がどれくらいあの中にいるのか見当がつきません……」
「そんな……対処の仕様がないじゃないですか……」
野良の言葉を聞き狼狽える西野副総理。しかし野良は「可能性はあります」と切り返す。
「可能性……あぁ、ステータスやらスキルやらゲームみたいなやつか?」
「ええそうです鎌田将官殿、それらはダンジョンに入った小隊の全員が得たそうじゃないですか」
「そう報告を聞いてる。身体能力も少し上がっていた。それに火の玉を出した奴もいたな」
「それは……」
「総理殿、信じられないかも知れませんが、事実です。そしてそれらを駆使すれば、あの化け物も銃よりも容易く倒せるのではないでしょうか」
野良の言葉を受け三人が考えをめぐらせながら話の先を聞く。
「先行隊は焦りでその事を忘れてしまっていたようですが、事前にステータスやスキルといったものを得られると言うことは、それらを利用して先に進めるようになっているのではないでしょうか」
「……そう考えるのが自然か」
「かも知れねぇな、如何にもって感じだな」
「そうですね、その通りだと思います」
諏訪部、鎌田、西野が野良の考えを肯定する。
そして、その考えは正しい。だが、実際はスキルなど使わずに殴り倒す事も一応は出来る。それを彼らはまだ知らない。
「銃が効かなかった。それは確かに驚愕するような事でしょう」
しかし、と野良は言葉を続ける。
「オオカミもどきの動きは冷静であれば、隊員達は躱せたことでしょう。今回の調査で一人死亡と言う結果になりましたが、それは銃が効かなかった事に驚いて、その隙に取り付かれたことだと聞いています」
「そうだ。驚いた隙に組み付かれ振り解けずやられた。確かに力はあり得んくらい強いが、動きは大したことがなかったそうだ」
「れいせいなじょうきょうならば、自衛隊の皆さんは安全に立ち回れますね?」
「あぁ、確約する。そんなヤワな鍛え方をさせてなぇからな」
鎌田は野良達三人の顔を正面に見つめ言う。
「その言葉を信じるぞ鎌田君。犠牲は出さないのが一番いい」
「あぁ! 任せとけ旦那! 次までにギッチリと仕込んでやらぁ」
「調査の前に死なないか心配ですが……一先ずはこの件は終わりにします。そして次の件なのですが……」
「この大小の青い石かねのことですね?」
そう言う西野のて手は、青い拳大の玉と親指の爪サイズの石が写っている二枚の写真がある。
「そうです。どちらも未知の元素から成っていたそうです」
「なんと……」
「そして、拳大の方は淡い光を放っている事以外何も分かっていません」
「方は、と言うことは小さい方は何か分かったのかね?」
「はい。この石を機器が破損した部分に近づけると直ったそうです。と言っても一度直った以降何度近づけても効果を示さなかったそうですが」
小さい石を調べていた研究室で一人の研究員が顕微鏡で観察していた時、ちょうど側にはレンズが壊れていた顕微鏡があり、偶然それに石を近づけてたことによってそれが分かったのだ。
ただ何でもかんでも近づけるだけで直ると言うものでなく、石を持っているものが『直したい』
と思いながら近づけないと効果を発揮しない。
こんかいはそれを知ることは出来なかったが、いつかは分かることなのだろう。
「それは……地味だが凄いな……」
「そ、総理、凄いなんてもんじゃないですよ!」
「きゅ、急にどうしたのだね西野君」
「石を近づけるだけで物が直るんですよ⁉︎ 顕微鏡のレンズなんて繊細なものを簡単に直すなんて……他の精密機器にも使えるのなら本当に凄いことなんですよ⁉︎」
「そ、そうかね。君は時々そうなるな」
西野副総理は普段は物静かなのだが、時々熱く語りたくなるオタク気質な男だった。
「副総理殿の言う通り、地味ですが程度によっては物凄い利益を生み出すでしょう」
「俺にはそんなことは良く分からねぇけどよ。……それは命を張る理由になんのか?」
「鎌田将官殿、命を賭けてもらうのは第一に国民のためにです。……しかし体制を維持するのにもお金は必要なのですよ。お金がないから守れませんでした、なんて言い訳は出来ませんからね」
「すまねぇ……修。当たり前だよな。昔のお前は守銭奴だったもんでついな」
「わ、私も怒るのですよ……? 真面目な空気を台無しにして……久し振りに喧嘩でもしてみますか?」
そんな二人を諏訪部がとりなして落ち着かせる。
そして、何としても国民を危機に晒さないようにと心の中で誰もが誓った。




