「いらっしゃい。万屋――名も無き店にようこそ」
「……ふう、美味しかった。ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでした!」」
【ごちそーさまー】
「お粗末さまでした」
さて、シチューを半分くらい食べたところで食事が終わる。
「じゃ、片しとくからティア、頼んだぞ」
「……ん、任せて。リリ、ルル、やるよ」
「「はぁーい」」
【わたしもー手伝うー】
一応リリとルルの両親から依頼を受けているのでスキルの制御の修行をさせる。まあスキルを使わせて慣れさせればそのうち制御も出来るだろうし、緩くやっている。厳しすぎても子供にゃ辛いだろうしな。
カランカラン
玄関に掛けてあるベルが鳴ってるってこたぁお客さんか。ティアとフィーは出れそうにないし片付けはのんびりしたいんだが……しょうがない、ちょっと本気を出して全て終わらせ、玄関に向かう。
「いらっしゃい。万屋――名も無き店にようこそ」
そう……実はこの店、看板なんて物は無く店の名前も無い。だからご近所さんからは「名も無き店」と呼ばれている。店の名前が無い理由? 別に面倒くさがったりした訳ジャナイヨ? ホントダヨ?
「あなたが――メイさんでしょうか?」
「ああ――いかにも、俺がそうだが?」
はて、俺の名前を聞いているってことは、店というより俺個人に用事があるのか? でもこの人たち会ったことない気がする。
一人は人族で朱色のツリ目に黄蘗色の髪を背中まで伸ばして一つに纏めてある。ツンデレお嬢様の匂いがそこはかとなくするのは気のせいじゃないはず。
もう一人は猫の獣人で、朱色の瞳に白菫色の髪のボブカット、そして青を基調としたメイド服を着ているので、もしかしたら専属メイドかもしれない。
「……ま、とりあえず入んな。お茶くらいは出してやるよ」
「はい、ありがとうございますわ」
「ありがとうございます」
まあ、こっちに敵対する意思も無さそうだし細かいことはいいか。
このメイドは鼻から忠誠心は出ませんよ?