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「母は強し、だの」

「さてと、質問タイムを始めようか、始めようぜ。何が聴きたい?」


聴きたいことがあるだろうから、と俺――メイが質問を促す。すると大和が質問してきた。


「ふむん、実は気になっていることがあってだな。アイリーンの『神託オラクル』は神の声が聴こえ、悠人の『拒絶リジェクション』は拒絶することができる……これは何なのだ? 魔法とは別物と思っているのだが……」

「お、いい質問だ。それはスキルっつってな、魔法とは別物だ。基本的にスキルは一人一個、スキルが発現しない人もいる」

「ぬう、全員ではないのか……」

「そーさねー、まあ発現すればラッキー程度に考えとけばいいよ。次は誰だい?」


今度は委員長が聴いてくる。


「……基本的に、ということは二個持っている人もいるのですか?」

「ん、俺くらいだよ、そんなの。一個が普通。本当は二個持ってるのは勇者と魔王なんだけど……俺は人外だからね」

「では、それを使えば私達を元の世界に返すことができるのですか?」

「出来ねぇに決まってるだろ。運良く出来たとしても、地中に出るかもしれないし、海に出るかもしれない。はたまた、宇宙に出るかもしれない。危険だぜ?」


まあ本当は出来なくもない。でもやらない。理由? 面倒だから。


「ツッコミマスターヒナタンは?」

「ヒナタン言うなてめーこんにゃろう。……王族ってこんなフランクでいいのか? あと結局召喚された理由は?」

「おっ、これはブライアンとアイリーンが答えないとな。てわけで、どぞー」

「はは、まさかこんな質問が来るとはな……実は初代が遺した格言があっての、それに従っているまでじゃ。曰く、『民がいなければ国は成り立たない』……例え王族であろうとも、民を見下すことは許されない。王族じゃからといって民と同じ人間だからの。とはいえ、種族差別をするつもりもないがの」

「こいつは公私ははっきり区別してから大丈夫さね。アイリーンは?」

「…………」


あれ、返事がない。アイリーンを見てみると……さっき舟をこいでいたのがバレたのか、バートに説教をくらっていた。将来が心配(楽しみ)で仕方がない。


「……なあ、悠人」

「どーしたヒナタン」

「アイリーンって……本当に王族か?」

「あれでも一応王族だぞ? それに危険察知能力だけなら凄いからな」

「ふむん、それはどういうものなのだ?」


ヒナタンと話していると大和が参加してきた。


「……昔、王城でパーティーをやったことがあってな、その時の話だ。パーティーが中盤になったとき、アイリーンに話しかけた侯爵がいてな。でもアイリーンは妙に距離をとったんだ。バートが聴いてみると『このひと、どえむでろりこんのへんたいってママが言ってるの』って答えたんだ」

「……あれ、でもこの場に王妃いないけど……?」

「実は王妃はアイリーンを産むと同時に死んじまってな、パーティーの時はいるはずがないんだが、アイリーンの『神託オラクル』が亡き母親の声(?)を届けたんだ」

「母は強し、だの」


一旦説教を中断してもらって、召喚理由を聴いてみる。


「女神様が『魔王が現れようとしている。対抗するには勇者の力が必要だ』って言ってました。でもバートに『いや、メイさんなら軽く倒せるでしょ』って言われて、それもそうだと思い、召喚を止めようと思ったんですけど……」

「間違えて召喚してしまった、と」

「その通りです、はい……」


なんも言えねー。あれ、そう言えば……。


「なあ……そんな魔力、どっから持ってきたんだ? アイリーンの魔力量でも勇者の召喚は無理、でも『生命イグジステンス』で視るとアイリーンの生命力は削られていない。なら足りない分は他で補うしかないけど、まさか?」

「…………」

「おお、ナンテコッタイ。ブライアン、どうするよ?」

「ふむ……今の所は問題ないのだし、お咎めなしじゃな」

「……親バカも程々にな」

「メイ殿も娘が出来ればわかるわい」

「娘、ねぇ……」


気が付けばブライアンと話し込んでしまった。周りが置いてけぼりだし説明しとくか。


「結論、召喚された理由は魔王が現れるから、だな。先に言っとくと勇者は一人な」

「……全員ではないのだな」

「まあ、勇者だけが持つと言われているスキルを持ってるやつが勇者だからね」

「……なあ、悠人」

「おん? どした藍莉?」

「……悠人は魔王倒せるんだよな。勇者って必要あるのか?」


魔王、か……。不意に魔王の目を思い出す。……あんな目をした子供を、放って置くのは、流石になぁ……。


「……まあ、魔王くらい余裕だけど……俺は魔王を殺すつもりはない」


俺が言った瞬間、その場にいた全員が息を呑んだ。そして大……何とかが喚きそうなので声を出すことを『拒絶リジェクション』しておく。


「それはまた……何でよ?」

「じゃあ逆に聴くぞ、葵。……魔王とはいえ、八歳の子供を殺すのか? どんな存在であれ俺は絶対に御免だね」

「っ! 子供……?」

「ほう、そうであったか……ではメイ殿はどうするのだ?」

「……なあ、ブライアン。お前言ったよな。『娘が出来ればわかる』……って」

「そうは言ったが……まさか、メイ殿?」

「ま、あくまで未定ってことで……あと、質問ある人ー?」


武がゆっくりと手をあげて、聴いてきた。


「俺らはちゃんと帰れる……んだよな?」

「うーん、帰れるとは思うが……数年はかかるかもな。アイリーンが魔力結晶使っちまったし」

「……何だそりゃ」

「簡単に言えば、魔力を溜め込める結晶、だな。役割は地球でいう、電力会社とでも思っておけばいいよ。家庭に最低限の魔力を送ってるし、似たようなもんだろ」

「ふむん? しかしさっき、魔力結晶を使ったと言っておったが大丈夫か?」

「大丈夫だ、使ったのは予備だから。本体は俺が好奇心の赴くまま改造したから」


ヒナタンが顔を顰めながら言う。


「……それ聴くと不安になるんだけど?」

「ハハハ何処に不安要素があると言うのかね?」

「……悠人って割と娯楽主義な部分あるよな。碌でもない装置とか着けてそう」

「失礼だな。あると便利な装置しか着けてないぜ」

「……ならいいけど」


ふう、後ちょっとでバレるところだった。そっと胸を撫でおろしていると、武がおそるおそる聴いてきた。


「あと、皆スルーしてるからずっと聴けずにいたんだが……。愛しい妻がいるっつってたよな?」

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