とりあえず、消えな。
「あ、そうだ聴きたいことがあったんだ」
実はさっきから気になることがある、と俺――メイが言う。
「どうしたの? 僕達がここにいる理由?」
陽向が理由をあげるが……それについては何となくだけどわかるぞ。
「お前らがいる理由は大方、『神託』を受けたアイリーンが勝手にやった、だと思うぞ」
「あ? ……じゃあ何だよ?」
今度は藍莉が聴いてくる。
「実はさ、そこの三人のこと全く覚えてないんだよね。同じクラスだっけ?」
そう、召喚された高校生は全部で八人。でも俺が知ってるのは五人だけ。残りの三人は記憶にない。あ、知らない女の目からハイライトが消えてる。
「……いえ、同じクラスの人くらい、覚えておきましょ
う?」
「悪いね、俺は苦手な人を覚えるのが大嫌いなんだ」
玲奈がツッコミを入れてくるが俺は胸を張って答える。
「いや覚えようよ!?」
「いや覚えましょうよ!?」
陽向と葵がダブルツッコミをしてくるが無視無視。
「で、結局誰?」
「ふむん、悠人から見て左から大輝、武、そして蓮華だ」
「…………」
うーん、武くらいしか記憶にないな。しかし蓮華はハイライトが消えてるし、ダークサイドに堕ちてそうだ。その
時、蓮華が口を開いた。
「ねぇ、悠人ぉ? 本当に私のことぉ、忘れちゃったぁ? 幼い頃に将来を誓い合った仲だよねぇ、私の悠人ぉ?」
「あ゛? 」
こいつは今、何て言った?
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「あ゛?」
僕――陽向はこの時、初めて悠人が怖いと思った。
悠人が怒ることは全くと言っていい程無く、怒ったとしても怒っている振りしかしなかったため、本気で怒った悠人を見るのは初めてだった。
なんかもう……感情という感情が削げ落ちたような顔で、ゴミでも見てるんじゃないかって視線を向けているし、威圧感が凄まじい……!
というか蓮華はへたり込んでるし、気絶してないのが不思議なレベル。
「ぇ……ぁ…………」
「ふぅん? 私の、悠人、ねぇ? 生憎、俺には愛しい妻がいるからね」
とりあえず、消えな。『拒絶』
ぼそりと付け加えられた言葉。そして指が鳴らされると……蓮華は、いなくなっていた。
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「あー、思わずやっちまった。フィーに譲るべきだったかな……」
あの女(名前は忘れた)の処分をついやっちまったけど……フィーに譲った方が良かったか? ……気にしてないっぽいからいいか。
「ちょっ、ちょっと悠人……!あんた、何して……!」
葵が怒ってる。友達だったのか? だからって気にしないけど。
「何をした、ねぇ。干渉を拒絶しただけだよ。別に殺しちゃいねぇ」
「…………そう」
そう、ただ干渉を拒絶しただけ。ありとあらゆるものに干渉する、されることを拒絶したから、あの女が何をしても無駄だけど。まあ、軽くやったから数年でもすれば解けるだろう。
葵は引き下がったけど、委員長は納得いかなそうな目で見ている。武と大……何とかは怒ってるけど、自分も同じ目に合うと思ってるのか何も言ってこない。陽向、大和、藍莉は俺が昔からこんな性格なのを知ってるから、何言っても無駄だとわかっているんだろう。