「よっこらせ」
迷い人? 何だそれ? 異世界に来た人の事か?
ブライアン様は蓮華が向いているところと同じ場所を見て言った。
「大方、そこらへんにいるのであろう?――のう、メイ殿」
――流石だね、ブライアン。俺の性格をよく分かっているじゃないか。
何もいないはずの場所から声が聞こえてくる。……もう驚き疲れたよ。他の人も何も反応しなくなっている。蓮華は顔を輝かせているが。
「よっこらせ」
「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁ!」」」」」」」
「かか、メイ殿は本当に面白いのう」
「ふっ、当然だろう? 俺は子供心を忘れない男だからな!」
やっ、ちょっ、おま……何もない場所から出るのはいいけど、頭と体が離れているし、首から血が滴り落ちてるし!? どうなってるんだよ!?
「はうー……」
愛莉が気絶して倒れた……あれ、やばくね?
「驚き過ぎじゃね?」
指を鳴らすと頭と体がくっつき、血も無くなっていた。その時何故か懐かしさを感じた。初対面の筈なのに……。他の人も同じらしく、眉をひそめてい
る。
「てめぇか!」
あっやべ、愛莉が気絶したしたせいでもう一人の藍莉が出てきた。愛莉は俗に言う二重人格で普段はおどおどしてる愛莉、もう一人は姉御肌な藍莉だ。因みに愛莉は瞳が赤みがかった黒、藍莉は瞳が青みがかった黒だったりする。あと、藍莉はやたら強い。
藍莉がメイさん? に殴り掛かる。まあ僕らを驚かせたんだし、自業自得と思っておこう。
「あっはは、昔から愛莉の事になると喧嘩っ早いね藍莉?」
「っ……何でてめぇが知ってる」
メイさんはゆらりと笑いながら藍莉の攻撃を紙一重で躱し続ける。
「何でだと思う?」
質問を質問で返してきた。でも藍莉だけでなく、誰もメイさんの質問の答えを持っていない。答えに詰まっているとメイさんが僕を見て笑みを深めた。
……え、初対面なんですけど。疑問に思ってるとメイさんは攻撃を躱しつつニヤニヤと笑いながら口を開いた。
「どうした? ツッコミマスター陽向。お前が分からないのか?」
「誰がツッコミマスターだ、確信ボケの悠人には言われたくないよ!」
あっ、つい口癖が……てか何で僕がツッコミマスターって呼ばれてるの知ってるんだろ?
メイさんは玲奈と葵に視線を向けた。二人は呆れたようにしている。二人はもう分かったのかな?
「委員長と葵はもう気付いたろ? 久しぶりだねー」
「……ええ、そうですね。久しぶりですね、悠人」
「あんたが異世界にいるとはね、悠人」
えっ……悠人って……交通事故で亡くなって……。転生、か?
「……本当に、悠人、か?」
「そう言ってるだろー、陽向。大和も久しぶりだ
な、小説談義でもするか?」
本当に……悠人、なのか。そう思った途端、僕は悠人に向かって駆け出していた。
「悠人ー! 生きてて良かっ、ぐはっ」
「抱き付こうとするな、男に抱き付かれて誰が喜ぶか」
確かにそうだけどさ……再会の場面でも悠人はブレないな……。大和と藍莉は叩かれたくないのか握手してる。
「ふむ、久しいな友よ。某は再会を嬉しく思うぞ」
「全く、あんたは……いつでも変わらないねぇ?」
それを聴いた途端、悠人はゆらりと笑った。
「いつでも変わらない? ありがとう、褒め言葉だ
よ」