蛍光魔王様
この世は人界と魔界が存在し、勇者と魔王がいる。
かくいう俺も勇者の一人だ。この言葉からわかるだろうが、勇者は複数いる。
この世界には魔法とも呼ぶべき力が存在し、様々な使われ方をしている。基本となる五行魔法、そこから発達した色魔法、各分野に特化して数魔法、花魔法、様々だ。ここでは詳しい説明は省くが。
各分野の魔法使いのトップが勇者と呼ばれ、年に一度魔界と人界が繋がる日に魔王討伐に向かう。
俺も今回で記念すべき50回目の魔王討伐の日だ。
勇者は力が衰えたとき、自らの力を越えた者が現れたときに勇者としての役割が外される。それまで死ぬことはない。不死というのとは少し異なる。魔王に殺されても、人に殺されても自ら命を絶っても甦るのだ。自分の家の寝床で。
と、勇者について長々と説明したが、魔王についても少し説明する。
魔王は勇者とは異なり、一人だけだ。そして、死ぬと新たな魔王が誕生する。
そして使う魔法はランダムだ。俺が前回の魔王討伐までに遭遇した魔王は闇魔法、星魔法、花魔法、強化魔法など様々だが、皆強大な力を有していた。そして姿形も婆さんであったりじいさんであったり、犬であったり、あぁ可愛らしい幼女が強化魔法の使い手で筋肉隆々になった29回目の魔王討伐の時には気付いたら家のベッドの上であった。30回目の魔王討伐ではおっさんになっていたので誰かが討伐したのだろう。
思い返してみると残念な魔王が多い。
だが、前回の魔王は正統派であった。色魔法の使い手で、特に黒魔法に秀でていた。姿形も漆黒の長い髪をうしろ後ろで一つにまとめ、切れ長の涼しげな目元、石榴のように赤い唇が白磁の顏に素晴らしいバランスで配置されていた。着ている服も闇を閉じ込めたようなローブにその下は貴族のような出で立ち。男でなければ駆け寄って慈悲を乞うていただろう。
戦闘も恐ろしく強く、俺はまたしても気付いたら自宅のベッドであった。
こいつを倒すために、これまでしてこなかった修行をし、満を持して今日と言う日を迎えた。すべてはあの圧倒的な存在感を放つ魔王に会うためだ。
なのに…なのに…!
「なんだよその蛍光オレンジのパーカーは?!」
「やっと動いたと思ったら言うことはそれか?何を着ようが余の自由である。」
ゆったりと前回と同じ玉座の間で座っていた魔王は、なぜかオレンジパーカーを来ていた。しかもおそらくあのパーカーはビニール製の安いやつだ。
「いや、自由だよ?!確かに自由だけどさ?!一年あんたに会うために修行した俺の立場とかどーなんの?つか、なんでスタッフとか書かれてそうなパーカー持ってんのぉ?!」
前回正統派魔王と出会えてテンションマックスになってた俺。
正統派魔王に合わせるために修行とかした俺。良い年したおっさんがめっちゃ恥ずかしい。
「?!そのほうなぜ余の背中に書かれた文字が判るのだ??フム。修行したと言っていたな。透視の術でも身に付けたか?」
あほだ。こいつはあほだ。見かけだけが芸術的なあほだ。今はその見かけもスタッフパーカーで7割減だ。
「なるほど。だか、1年余も遊んでいた訳ではない。新たな魔法を受けてみるがよい!」
魔王が椅子から立ち上がりゆっくりと手を此方に翳す。
あほでも魔法の技術は確かだ。俺も急いで臨界体制をとるが、
「おそいわ!」
足元に魔方陣が光り、避けようと足元へ視線を落とし、そこで意識が逸れたことが敗因となった。
気付いたら家のベッドの上であった。また、あの魔王に負けたのだ。
が、それも仕方ないことだ。
「なんで、普通の魔方陣から蛍光ピンクの手が出てくるんだよォォォォ?!」
意識が切れる前に
「我は蛍光魔法を造り出した蛍光魔王だ!!」
と言う魔王の言葉が聞こえた気がする。
新しい魔法に対処するのは難しい。
そして、キャラがブレまくっている魔王はもっと対処しにくい事に気づいた50回目の魔王討伐となった。
あとがき
初投稿となります。頭のなかではギャグとして面白いと思っていたのですが、実際に文章にすると何だか何が面白いのかわからない自己満足のものになってしまいました。
この設定は色々妄想が膨らむので、練習を兼ねて頑張って見ることにします。
お目汚し失礼しました。