4話+5話 圧倒、尋問
1日おきまたは奇数日おきに投稿はするようにしています。
それと私事ですが、両耳中耳炎になり、鼓膜を切開しました。
意外に痛かったです。
短かったので4話と5話を繋げさせて頂きました。
視界が開けると言われていた通り森の中だった。
「日本じゃなかなか無いだろうな。」
しみじみと思いながら森の外に出るために歩き始めた。
歩いていると、体が思った以上に動く事で自分の体の性能の良さに気がついた。
「これはいいな。」
歩いているこの先で、はりつめた空気を感じとった。
「この先で誰か襲われてるぞ?」
鋭敏になった感覚からもたらされた情報から推測すると、1人を動きの悪い奴1人が守っていて、それを8人が襲っているということか。
「見捨てるほど急いでないしな。」
助けに行こうとしたが、俺に武器が無い事に気がついた。
「補正受けたし、地球では武術習ってたから、どうにかはなるだろう。」
そう言って戦闘が行われてる所まで全速力で走って行った。
「思っていたより酷い状況だな。」
いざ、着いてみると襲われてる人はかなりの怪我を負っていた。体中から血を流し、着ていた服はボロボロで、意味を成していなかった。
「大勢で女性を襲うのはどうかと思うけど?」
「あぁ?誰だテメェ!」
「ただの冒険者だけど?」
知識の中にあった、一番無難な仕事を選んだ。
「ただの冒険者がでしゃばってくんじゃねぇよ!
痛い目に会いたくなかったらさっさと失せろ。」
ボスみたいな奴が怒鳴りつけながら切りかかってきた。
失せる前に切りかかってるじゃないか。
そう思ったが、戦闘の体勢に切り替わった体は、ボスみたいな奴の斬撃をゆっくりと捉えていた。
ゆっくりとした斬撃を冷静にかわし、こめかみに回し蹴りを入れてやった。
多分一瞬の事だっただろう。地面に崩れ落ちた、ボスの配下達がざわめいたのが分かった。
「相手は1人だぞ、これだけの人数でかかればどうってことは無い!」
サブボスみたいな奴がわめいた。
それに踊らされた配下達が間隔をあけて襲いかかってきた。
いくら波状攻撃でも、1人ずつ倒していけば意味無いんだけどな。
そう思いながら、1人目の奴を避けて、首筋に手刀を当てて気絶させ、大きく振りかぶっていた2人目の顎に掌底を打ち込み撃破、3人目は、鳩尾に拳を突きだした。後ろからき切りかかってきた4人目には後ろ回し蹴りで対応、5人目には気づかれる前に後ろに回り首に手刀を当てる、6人目は金的を蹴り上げたら気絶した、最後にサブボスの顔面を殴り飛ばして終了。
「大丈夫?」
俺が声をかけた女性は呆然としていて声をかけられた事に気がついて無かった。今度はもう少し声を大きくして話しかけてみた。
「おーい、大丈夫ですかー?」
一瞬ビクッと震えこっちをみた。どうやら気がついたみたいだ。
「あっ。手助け感謝します。」
そう言い頭を下げてきた。
何か言葉を返そうと思ったら、女性が守りながら戦っていた、馬車の中から声が聞こえてきた。
「どうなったのですか?」
その声を聞いた瞬間女性が直ぐに振り返った。
「姫様、賊はこの方が倒して下さいました。」
「そうですか。
まぁ!貴方もかなりの傷を負っているではないですか!早く帰って治療を…」
「あー、治療なら俺も出来るぞ?」
貰った補正の知識の中に治療も出来るとあったので、とっさに声を出してしまった。
「本当ですか?
なら早速お願いします。」
そう言われ俺は傷ついた女性に手のひらを向けて、治療の魔法を使った。
すると手のひらの前に手のひらと同じサイズぐらいの魔法陣が現れ、女性の傷がみるみる回復していった。
「凄いですね。私の国の宮廷魔導師でも数人がかりでする魔法を1人であっさりと…」
「凄いのか?」
「はい、今のを出来る人はこの世界に5人も居ないと思いますが。
えと、自己紹介が遅れました。私はこの国の王女、セシリアといいます。そしてこちらが私の専属騎士のモニカです。」
ヤベェ、しょっぱなから女王助けちゃったよ。
「それで貴方は?」
名のられて、名のり返さないのも失礼だしなぁ
「俺はコウ カンザキ。」
「カンザキ様はどちらかに行かれる途中だったので は?」
「俺の事はコウでいいよ、お姫様。 王都に用があってね。」
そう言うとお姫様は顔をうっすら赤く染めた。
「それでは、私の事もセシリアとお呼び下さい。 それと、護衛を兼ねて王城まで来ていただけません か?」
「王都までの道順が分からないし、そうしようかな 。 でも、セシリアの護衛がモニカだけって事は無いだ ろう?」
「他の者は全員この賊に殺されました。」
「それは…すまない。 今気づいたんだが、こいつら気絶してるだけだがほ っといて良いのか?」
「忘れていました。多分、この馬車の後ろに縄があ った筈なのでモニカと一緒に縛っていただけますか ?」
「分かった。 セシリアは馬車の中に居てくれ、」
「意外に優しい所があるのだな?」
「何がだ?」
セシリアが馬車の中に入るとモニカが話かけてきた 。
「姫様に馬車の中に居るように言ったのも縛るとこ ろを見せないためだろう?」
「さぁな。 そんなことより縛るぞ。 武器を隠し持て無いように全裸にして尋問してから ここに置いておくか?」
「そうだな、出来るだけ早く王城に帰った方が良い からな。」
そう言って作業に取りかかった。
男を脱がすのは良い気がしなかったが、男の俺でも 気持ちが悪かったのに、モニカは手慣れた様子で着 々と賊を脱がして縛っていっていた。
「脱がして縛るのも終わったし、このボスみたいな 奴から尋問するか。」
めんどくさいので魔法で水を生成し、ボスみたいな 奴の顔に何回かかけてやった。 すると気がついたみたいで、自分の姿を見て怒気を あらわにした。
「早く縄ほどけやぁ!」
かなりの大声だったのでセシリアに聞こえたら不味 いと思い、防音の障壁を展開した。 防音の障壁と言っても空気を固めて音の振動を伝わ りにくくしただけだが。
「大声出さないでくれるか? 静かに名前と、狙いは誰か、誰に雇われたか、その あとどうするつもりだったのかを言え。」
「ハッ、バカが!誰がそんな簡単に言うかよ!」
そう言って俺に唾を飛ばしてきた。 しっかりと魔法障壁で防いでから、もう一度聞いて みた。 因みにこの魔法障壁は純粋な魔力を前方で固めただ けだが。
「最後だ。名前と、狙いは誰か、誰に雇われたか、 そのあとどうするつもりだったのかを言え。」
「だから、言うわけねぇって。 何だ?拷問でもしてみるか?生半可な拷問じゃ喋ら ねぇぜ?どうせ殺されるんだからな!」
「そうか。」
そう言って躊躇いもなく魔法でペンチを取りだし、 左手の中指を切り落とした。
「ぎゃぁー」
「叫び声をあげるなら、最初から言っておけ。 どうする?まだ1本切り落としただけだぞ?他にも1 9本と1本が残ってるが?」
「…」
まだ喋らないようなのでもう1本切り落とそうとした 。 こんな事が出来るのは魔法で治癒出来る事を知って いるからなんだよな。 テヘペロ。 んんっ(恥ずかしかったので咳払い)
「まっ、待ってくれ! 言う、言うからせめて楽に死なせてくれ。」
手を止めてやった。
「俺の名前はギルバートだ。雇い主は高齢の貴族み たいな奴だった。今日第一王女が辺境の村に視察に 来るところを襲って殺すか捕らえて娼館にでも売り 払えと命令された。」
「顔は?」
「フードを被っていてよくみえなかった。」
「そんな奴からの依頼を受けたのか?」
「俺らのような所に来る奴はそういう奴が多いんだ よ。それに大金を前払いで払ってくれると言ったか らだ。」
「そうか。」
とりあえず嘘は言っていないようだったので魔法で 指を治してやった。
「なっ、お前!騙したな!」
また騒ぎだしたので首に手刀を当てて気絶させた。
「こんな感じでいいか?」
「あぁ、でも最初何をしているのかと驚いたぞ。」
「悪いな。 だが結果オーライだ、さっさと王城に行こうか。」
防音障壁を解除し、賊を転がしたまま馬車に乗った 。
「どうでしたか?」
「自分から進んで言ってくれたよ。 高齢の貴族にセシリアを狙えって依頼されたらしい 。」
「高齢の貴族ですか…」
「思い当たるのか?」
「いえ、今の貴族は高齢の方も多いですから。」
「なら今考えても仕方がないな。 まずは、無事に王城へ帰ることだ。」
それからどれくらい経っただろうか、1時間弱ぐらい で誰にも襲われることなく進んできた。まだ遠いが 、王都が見えてきた。すると王都の門から数人の兵 士がこっちに向かってくるのが見えた。
これで一安心か。
読んでいただきありがとうございます。