3)決意
競い合い発表から一夜明けて、ある者はそれを考え出した和泉の家の現当主、花枝にどういうことかと怒りをあらわにし、ある者は勝利する可能性の高い23歳組(柊・菫)に媚を売ることにいそしむことにしたようだ。
「私が勝つ可能性は無いって、思ってんの?」
まあ、分からなくもない。19歳の小娘と23歳の大人だったら、どちらが勝つかなんて一目瞭然。
「でも、勝つのは私」
そろそろ飽き飽きしていた頃だ。この人生には。
この【和泉】の家は、私にとって甘くはなかった。いつでもどろどろしていて、誰が祖母の遺産を相続するだとか、そういう話ばかり。
その魔の手は私にも忍び寄ってきて、しかも絡みついたら離そうとはしなかった。
私の父親は、祖母花枝の次男である。幼い頃はさほど生活が豊かでは無かったため、甘えたお坊ちゃん気質に育たなかったのが幸いだ。
祖母から譲り受けた子会社を自分の力で軌道に乗せた。そこを祖母は大きく評価していたようで、長男よりは遺産を相続する可能性は高いと周囲からは言われていた。
だからこそ、柊の父親、菫の母親からは敬遠されていた。それは私にも同じようで、特に菫の母親は私のことを毛嫌いしていた。娘の菫も同じように。
でも、柊は違っていた。もっとも忌むべき存在の私に幼い頃から異様に優しかった。いつでも私の傍にいて、いつでも助けてくれた。それはもう、世に言う「アッシー君」と言ってもいいほど。
「終わりにしよう」
この19歳の小娘にも優しくない世界を。
私が勝利して遺産を相続することとなったら、もう何も言わせない。
周囲からの圧力や、酷い言葉。
幼心に傷ついた、その復讐も兼ねられる。
「ありがとう、花枝おばあちゃん」
絶好のチャンスをくれた祖母に感謝を。