2)いとこはライバル!?
「皆様、お集まりいただけましたね」
広いリビングには親戚一同集まっていた。一番遅くに駆け付けた私のことを、きつい目つきで見てくる。
「誰かさんは一番遅くに来たけどね~」
私と一番年齢の近い従姉が嫌みな言葉を私に放つ。彼女の名前は菫。菫の花言葉「慎み深さ」とは全く異なった性質を持つ女だ。
見た目は清楚な美女なのに、全く中身は違う。
「そう責めるなよ。椿だって、大学があって忙しかったんだから」
私を庇ってくれたのは従兄の柊。彼は昔から私に優しかった。幼心に、柊は私のことを好いてるのではないかと思ったほどだ。
「そんなことを言ったら私だって仕事があったのよ。それでも一番最初に来たわ」
仕事と言っても、彼女の父親の会社で受付嬢をしているだけだ。そう難しい仕事ではない。いつでも抜けて出て来れるような楽な仕事場。
「すみませんでした。少し、道が混んでいたので」
「気をつけなさいよね。椿さん?」
ニヤニヤと真っ赤な唇を三日月に歪ませた菫は、ただのそこらへんの娼婦にしか見えなかった。
「では花枝様、お願いします」
陰険な雰囲気を切り裂くように、小野が横から割って入ってきた。
70代には見えない若々しい祖母。これで女で一つで子どもたちを育ててきたというのだからすごい。それに加えて一代で会社を大きくしたのだ。
「私も最近、病状が酷くなってきた。だから私の遺産を相続する者を決めたいと思う」
その言葉に嬉しそうな表情をする親戚一同。特に、祖母の子供である、菫の母親、柊の父親、私の父親は勝ち誇ったような顔をしている。相続するのは自分だとでも言いたいのだろうか。
「菫、柊」
呼ばれたのはいとこの名前。
「それに、椿。前へ出なさい」
辺りがシンと静まりかえった中で呼ばれた自分の名前。それは、ずいぶん不気味に聞こえた。
周りが一番後ろに座っていた自分のことを振り返って見つめる。隣に座る父親に、「前へ出なさい」と言われ、バクバクと鼓動する自分の胸を押さえ、一歩ずつ足を前に進める。
「この子達が私の遺産を相続する可能性のある三人だ」
その言葉を聞いた一人が立ち上がり、異議を唱える。
「いくらなんでもそんなに若い子なんて・・・・!!椿なんて、まだ20歳にもなっていやしないですか!」
「私は一族の中でも血の濃い三人を選んだ。私の直系の孫だ、相応しいだろう?これから和泉の家を背負っていくんだ。若い子の方がいいだろう」
凛として答える祖母。その言葉にはよどみなど無く、異議を唱えた方も言葉に詰まり、引き下がった。
「可能性があるとは、どういうことですかお婆様?」
猫なで声で訊ねる菫。彼女の中では自分が遺産を相続することが決定しているのだろう。
「この三人で遺産相続を賭けて競ってもらう。勝利した者が【和泉】の家の全てを継ぐんだ」
周りがざわつく中、私の頭の中はおかしいくらいに冷静だった。