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1)遺産相続
「これから、貴女様には遺産争いに参加していただきます」
いつでも冷静沈着な顧問弁護士が、苦々しげな表情をして私にその悲報を伝えた。秀麗な顔は、どんな表情をしても美しい。これは神様を恨むしかあるまい・・・。
「これは花枝さまの決定です。どうか抗うことはなさらないでください」
そこで祖母の名前が出てくるとは思わなかった。祖母は体は弱いが、その分勝気な強い性格をしている人で、遺産の話をこんなに早く持ちだしてくるとは思わなかった。
「分かってます。しょうがないことですから」
随分前からその話は身内の間で持ちあがっていた。祖母である花枝は、まだ現役で会社の経営に携わっており、「遺産」という言葉の「い」の字も口に出したことは無かった。だから、どうなるんだろうと身内の間では話題になっていたのだった。
「他の方々にはもう伝えてあります。皆様、本家の方に集まっております」
私が遅れてしまっては話し始められないだろう。意地の悪い親戚どもは、口々に私の両親を責めるに違いない。
少しでも急ごうと、タクシーの運転手に「急いでください。」と口早に頼んだ。