第1話 運命の人
メリークリスマス!&お久しぶりでございます…!
_一度だけ、両親がまだ仲が良かった時に映画館に連れて行ってもらった。
綺麗な薔薇園で、見目麗しい隣国の王子様と、火傷痕があるのにそれすらも美しく見える女性が向かい合っている。
「君を世界で一番愛してる!結婚してくれ!」
男の人が膝を付いて、結婚指輪を取り出す。
「はい…!」
ポロポロと涙を流し、指輪を受け取る女性。
「アイリ!」
「ジョーン!」
感動のシーンの中、抱き合う2人。
_そして、エンドロールが流れた
母と父は、まるで自分たちみたいだね、とか自分たちとかけ離れている言葉を吐き散らしているが、僕はそれに気付いてなかった。
「きれいだ…」
キラキラしてて、自分もいつかこんな恋がしてみたいと思ったのだ。
_現在
「のだよ!!」
ダンッとカフェの机を叩いて、立ち上がる。さきほどの映画を最初から最後まで全部語り尽くした青年は興奮気味だ。
顔はいいのに、全てが残念。これぞ、残念系美青年。
ちなみに、このカフェは人がおらず、ガラガラだ。
「はぁ…」
面倒なのに捕まったなという感情を全て顔に出している無気力…ん゙ん゙!ダウナー系の美青年だ。
「『はぁ…』とはなんだ!?感動しただろう!?」
物真似を混じりつつ、もう一度机を叩く。
「恐怖の方が勝ってます」
これぞ即答。事の発端は数時間前に巻き戻る。
_数時間前
紺色でくせ毛風ショートの髪をした青年はポケットに手を突っ込む。金色の瞳も綺麗なのだが、何故か不良に見える。歩きかたのせいだろうか…?
(授業ダルー…今日はサボろっかな)
無論、今日【も】である。
この男、顔と頭だけは無駄にいいので、一応卒業は出来る(出席日数は足りるかどうか…と言うところだが)。む…ん゙ん゙!ダウナー系美青年こと、名を蒼陀 麟。女みたいな名前だとイジってきたやつは持ち前の顔と頭で泣かせた。さて、本題に戻ろう。
麟はなんとなく、本当になんとなくいつもは来ない道を歩く。
_後に、麟は語る。この時のオレを殴ってでも止めたい、と。
商店街らしく、店が並んでいて、目移りしてしまう。
きょろきょろしていたら、脇道を見つけたので、入ってみる。
気分は探検隊だ。
(ふっ、ガキみてぇだが…たまには悪くねぇな)
なんて考えて歩いていたら、ふと、アンティークな喫茶店が目についた。
木でできた立てかけ看板を見てみる。
「『喫茶店太郎』…?」
店の中を覗いてみるが、客はいない。ガラガラだ。
(てか、名前ダサッ…なんで太郎にしたんだよ…)
「〜〜♪」
黒曜石みたいな綺麗な黒い瞳に艶やかな黒髪を一本に括った美青年が店の中から出てきた。店員なのだろう。何故かフリルが着いたメイドのような白いエプロン、黒いハイネックのシャツに黒いズボン。そして、十字架のシルバーアクセサリーを身に着けていた。
_そう、彼こそがことの元凶でもある、あの残念系美青年。
残念系美青年はこの喫茶店のオススメが手書きで記されたスタンド看板をよいしょよいしょと運んできたのだ。
この時のオレは呑気に『コイツ…オレより顔がいいんじゃねぇの?』など考えていた。
「やぁやぁ。お客さんかね?」
看板を置いて、こちらに話しかけてきた。
だが、オレはそんな言葉、耳に入ってすらいない。
(コイツの髪と目の色…他のやつらと同じでなんも特徴がないのに…)
「綺麗だな、お前」
オレの本音がポロリと溢れてしまう。慌てて、片手で自分の口を塞ぐ。
そろりと彼の様子を見る。
何故かキラキラした目をこちらに向けている。
「君!時間はあるかね!?」
ずいっとこちらに近づいて来て、手を取られる。
「あ、あるけど…」
_そして、冒頭に至る。
「む〜…この感動が分からんとは…人生損してるぞ!」
真っ赤な林檎みたいな唇を尖らす残念系美青年。顔は良いのでなんか聞いてるこっちがおかしい様な気がしてきた。
(いやいやいや!おかしいのは相手だろっ!?どう考えても…!)
見ず知らずの相手に自分が感動した映画の話をするやつがこの世に何人もいてたまるか!と心の中で騒ぐ。
「あ!何か頼むかい?僕の奢りだ!好きなものを選ぶといいよ!」
サッとデッコデコのメニュー表を取り出してきた。
なにここ?メイド喫茶?っていう感じだ。
(…な…ん?な、ナポリタン、お…オムライスって書いてあんのか?これ…お、これは読める。プリンアラモード。ホットケーキ…クッキー、メロンソーダ♡…?ミルクセーキ。ミルクセーキってなんだ…?こ、ココア。珈琲、紅茶…)
「なぁ、この文字…」
丸文字で可愛らしいが、とてつもなく読みにくいメニュー表から顔を上げて、残念系美青年を見る。
「店長直筆だ!」
ドヤ顔も綺麗だな、残念系美青年。じゃなくて!
「読みにくい!!!」
今度は麟が机を拳でドンッと叩く。
「すまん!次からはフリガナをふる!」
「そーするなら書き直せや!!このッ!顔だけマンが!!」
特大ブーメランが麟に刺さっているが、気が付かない。
「ありがとう!」
「褒めてねぇよ!!!」
ゼェハァと肩で息をする。残念系美青年を相手すると…疲れる。
「まぁまぁ、これで落ち着き給え」
カタリといつの間にか淹れてきた珈琲が目の前に置かれる。
「あ?頼んでねぇが??」
「先ほど言っただろう。僕の奢りだ」
じぃっとそれを見る。たしかに…喉が渇いてる。
すっとそれに手を伸ばす。
(不味かったらいじってやる…!)
ごくっと一口。
「!?」
雑味も渋みもない。クリアな口当たりに香ばしい珈琲の匂い。
すっげぇ悔しいが、美味しい。
それを口にしたくなかったので、無言で飲み干す。
「たまに…来てやる。ここ」
美味しかったよとプライドが邪魔して言えないので、ボソリと呟く。
「…!あぁ!」
ぱぁっと明るくなる残念系美青年の顔に自分の顔に熱が集まる。
「フンッ…」
なんとなくそれを認めたくなくて、高圧的に鼻を鳴らす。
「あ!自己紹介がまだだったね!僕は橙坂 朱雀!ここで店員をしている!」
キラキラと星が瞬くような明るい声で弾けるように言われる。
「麟…蒼陀麟」
オレの名前を聞いて目を細めて笑う朱雀。
「よろしく!麟!」
そのキラキラした瞳をオレに向けてきた。
「っ…」
朱雀から顔を隠すように両手で覆う。
(なんでそんなにキラキラした目でオレを見るんだよ…)
_ギャグラブストーリー?の始まり始まり




