信じて送り出した友人から、カノジョと映っている動画が贈られてきた
「辛くなったらこれを飲ませろ。あいつを一瞬で熟睡にいざなえる薬品だ。因みに、アフリカゾウで試したら、10頭が昏倒しそのうちの2頭はもう目を覚まさなくなった」
「お前のカノジョさんは何者なんだよ」
俺の友人は確実にアホの類なのだろうとは思っている。
学生街特有の、それでも希少になりつつある喫煙が可能な喫茶店。個人経営だから、チェーン店に比べると飲み物の値段は割高ではあるが、場所代ということで利用者が非常に多い。
問題としては、俺も、謎の薬品を手渡そうとしてくる友人も、非喫煙者ということではあるが。
「絶対にこれが必要になるんだ。ほんとうに、これが必要になるから」
「俺としては、それが必要になる事態よりも、それを所持してることが法律に反してないかが気になるんだが」
「この世には、法律で裁けない事柄も多いんだよ」
「お前らほんまに好きあって付き合ってんのか???」
今晩、俺が所属しているサークルで飲み会が開かれる。
そのことを聞きつけた友人が、俺を呼び出したのである。
「もちろん。好き合ってるよ?」
「ああ、うん」
とてつもなく真っ直ぐな澄んだ瞳を俺に向けてくる。深くは追求しないに限るかもしれない。シラフでは聴きたくない。
「けどね、これはこれで、それはそれなんだ」
「じゃあ、聞くが…………お前が懸念してるのは、酒乱がうちのサークルを壊すことなんだよな?」
「違うよ」
氷がすっかり溶けて味が薄くなってきたオレンジジュース(この店で一番安い)で、友人は唇を湿らせてから。
「お前のサークルがぶっ潰れようがどうでもいいんだけどね」
「おい」
「人的被害が、とてつもなく怖いんだ。具体的には、新入生とか含めて、人体的な損傷をアルコールで与える可能性があるから」
「害悪じゃねえか。」
因みに新入生は全員成人している。なにももんだいはないのだ。
「スプリンクラーとか切っておいてもらうほうがいいと思うよ」
「待てや」
何をやらかす気なんだよお前のカノジョは。物理的に損壊させるつもりなのかよ。火とか吹くのか?
「だから、君を信じているよ。いざとなれば、これで一息に──」
◆
「いえーい、カレシ君みってるー!今から、お前のカノジョさんを…………
なんとかしたいです!もう最上回生は全員潰されました!もうサークル崩壊が時間の問題です!お前はよ迎えに来てくれ、もうすぐ俺も………………あ、ちょっとまて、そのスマホだけは…、スマホはああああああああああ……友よ…、ほんまにはよむかえにきて