殴って蹴って罵って
メインの連載の気分転換兼ギャグのセンスの養成を目的に走り書きしました。拙い出来ですが読んで頂ければ幸いにございます。
「たっくぅ〜〜んっ!!」
背後からドタドタと騒がしい足音。
俺は素早く後ろを振り返り、走って来るそいつの腹に渾身のグーパンチを喰らわせる。
「ぐはっ」
「朝から騒がしいっ!!あとたっくんじゃなくて拓海!!本堂拓海!!」
楠 若葉。俺の幼馴染だ。
肩にかかるくらいの黒いポニーテールという髪型に、快活そうな印象を受ける顔立ち。
正直、若葉は美少女だと思う。
…あくまで、外見は。
ただし、こいつには重大な欠点がある。
「…相変わらず強烈な一撃…気持ち良かったぁ…」
恍惚とした表情でこんなことを呟いているところからも推察できる通り、
こいつは超がつくほどのドMなのだ。
…正直、体の中がどうなっているのか甚だ疑問である。
「ほら、早く立てよ。学校に遅刻するぞ。…あと、周囲の目が色々と痛い」
地面で悶絶している若葉を無理矢理立たせる。
「ついでにもう一発殴ってよ」
「何が『ついでに』だ。…ホント、お前の体はどうなってんだ」
「え、たっくんは私の体が目当てなの…?」
「何の話だよ何の!!」
「私…たっくんなら…いいよ…」
あぁ、ムカつく…殴りてぇ…
しかし、殴ると面倒臭いし周囲の目も痛いので自重する。ホント、面倒な奴だ。
…ちなみに、若葉は結構発育がいい方だ。色々と。
「…っと、もう遅刻ギリギリだわ。走るぞ」
「かしこかしこまりましたかしこ〜」
「古いわっ!!」
あぁもう、朝から疲れる…
何だかんだで、ギリギリ間に合った。疲れた。
朝から俺を疲れさせるバカは、不幸なことに目の前の席にいる。
…ていうか、寝ている。
「…ムニャムニャ…たっくん…もっとぉ…もっと罵ってぇ…」
「どんな寝言だよっ!!」
思わず椅子からガタンと立ち上がる俺。
「あっ!!あうっ!!痛いぃっ!!…気持ちいい…」
…あ〜、キレた。俺もうキレた。
「三回死ねぇぇぇ!!」
『く』の字になって寝ている若葉の腰に膝蹴りを入れる。
「はうっ!!ま、正夢!?」
「夢の中でも蹴られてたのかよ」
「ううん、ハンマーで殴られてた」
「若葉、精神科医行け。悪いことは言わないから」
「え〜。やだよ〜。だって精神科医に行っても先生何も言わないもん」
「あ、行ったんだ精神科医」
「うん。でも先生は穏やかな笑みを浮かべて頷いただけだったよ」
「(諦められてる!?)」
「何か『やれるだけのことはやった』とか呟いてたけど、何だったんだろ」
「…ドンマイ。ほんとドンマイ」……あぁ、泣けてきた。もはや、若葉のMは医者のお墨付き不治の病なのか。
感傷に浸っているうちに授業が始まった。
放課後。
「たっくん、悪いんだけど掃除当番だから待っててくれない?」
「ん、わかった」
そういや今日は水曜か。
「あと、たっくんって呼ぶのやめろよ。周囲の目が痛いから」
…掃除に集中するフリしてシカトしやがった。あのヤロー…
しかし、なんで若葉は俺を昔のあだ名で呼ぶんだろう。
「お前、なんでいつまでも俺のことを古臭いあだ名で呼ぶんだ?」
帰路。俺はさっき何となく気になったことを若葉に聞いてみた。
「たっくんだから」
「理由になってねぇよ」
お前は小学生か。あ、それともあれか、修○理論か。
「私にとっては、今も昔も貴方はたっくんだから」
いつもよりも穏やかな声。
「…え?」
思わず振り返ると、若葉は微笑んでいた。
頬が少し赤いのは夕焼けを反射しているからだろうか。
「ううん、何でもない」
…そして、可愛いとか思った俺は風邪気味なのだろうか。
「あ、それとも『ご主人様』とかにしようか?」
「はぁ?」
「ご主人様…あぁ…呼ぶだけで気持ちいい…たっくんに服従してる感じがする…」
「アホかお前はぁぁ!!」
ツッコミを入れつつチョップ!!
「…あぁ、ご主人様、もっと殴って蹴って罵ってくださいぃ!!」
「やっぱり3回くらい死ねぇぇ!!」
弁慶の泣き所に思いっきり蹴りを入れると、前傾姿勢になる若葉。
その腹に、今度は膝蹴り!!
「ぐっ…けほっ、けほっ」
…コンボ成功。
若葉は無言で腹を押さえて立ち上がると、ふらふらとこちらへ来る。
「む?」
そして、俺に寄っ掛かってくる。
…ドMとはいえ、女の子相手にちょっとやりすぎただろうか。
「…たっくん」
「ゴメン、若葉…ちょっとやりすぎた…」
「…今の、もう一発やってくれない?」
「……(ブチッ)」
ええ、それはもう、これでもかという程に望み通りにしてやりましたよ。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
今回の短編はギャグの練習のつもりでしたが、やはりぱっとしませんね…
まだまだ練習が必要なようです。
感想・意見・アドバイスなどあれば是非、お願いします。