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後編

4


気が付くと喫茶店の元のボックス席に突っ伏していた。

「ん?・・・あれ?」

途絶えた記憶を探る。たしか喫茶店でいつもの様に図書委員を見つけて、一大決起して告白して、

「結果が思い出せない。」

「そりゃ都合の良い記憶喪失だな。だが悲しいかな事実は変えられない。」

「甘く切ないこの恋心は一体何処へ?」

「ほろ苦いコーヒーと共に捨て去られました。」

「なるほど。だからこんなに心が痛いのか。」

「まあ、コーヒーカップは硬いしな。ついでに彼女のガードも固いという事だ。」

「ふられたのか?」

「あれを見て、OKが貰えたと思える奴が居たらそれは異常だ。」

「私は見ていない。」

「そりゃそうだ。一発で落ちてたからな。」

「故に結果は保留だな。」

「どんな俺様解釈だよ。少しは自重しろ。て言うか諦めろ。」

「やだやだやだー。」

「黙れ駄々っ子。」

「今日はきっと彼女と神様の虫の居所が悪かっただけだよ。あしたもう一度告白すればきっと振り向いてくれる。」

「少しは引く事を知れ。」

「かの有名なボナパルドだって戦場に於いて常に前へ前へと突き進み続けた。」

「それ、敗因な。」

「少しは勇気付けてくれよ。こう見えても傷心中だよ?青樹ヶ原樹海経由足摺岬行き片道切符だよ。」

「勝手に行ってこい。だけどそんなツアーやったって自殺できる体は一つだけだ。」

「・・・家に着くまでが遠足です。」

「片道切符だから帰りは歩きだな。」

「えーんえーん。ちーちゃんがいぢめるぅ。」

「ったくこんな時幼馴染なんていう立ち位置が酷くうざく感じる。とりあえず黙れティーンエイジャー。」

「昔はあんな可愛かったちーちゃんがこんな極悪非道の鬼畜に成り果てるなんて、時の流れはなんて過酷なんだ。時よ止まれ、お前は美しい。」

「悪魔に魂取られてしまえ。いい加減落ち着け。」

「・・・落ち着いた。」

「先ずはうちのを貸してやるからシャワーでも浴びてスッキリしろ。服も貸してやる。」

「ありがとう。」

持てる空元気を使い切ると無性に泣けてきた。そこら辺の扱いに慣れている辺り本当にこいつが幼馴染で良かったと思う。

喫茶店から程近いこいつの家にお邪魔する。

家族ぐるみのお付き合いがある家だけに気軽に迎えられた。バスルームを借りてシャワーを浴びた。

「此処に着替え置いておく。」

「サンキュー。」

優しさに感謝する。しかしそれもつかの間だった。

バスルームから出て、体を拭き用意された服を見て動きが止まる。

確かに今まで着ていた制服にはコーヒーのシミと匂いが付いていて少々着る気に成らない。

確かに親友はその事情を知って私に服を貸してくれた。

そこで気が付くべきだったのだろうか?

親友で幼馴染のあいつの服の趣味は知っていたはずなのに。

どうやら既に制服は洗濯に回されているらしくそこに姿はない。

「くっ、策士め。」

裸で出ていくか用意された服を着るか、答えの出ている二者択一。

・・・

「アハハハ。うんすごく似合う。」

思い切り爆笑しやがった。てか本当に腹抱えて笑い転げる奴初めて見た。

バスルームに置かれていた服は物の見事に女性物の服だった。

縁に控えめにフリルの付いたピンクのスカート。

それにあわせたパステルのブラウス。服の形で胸元は若干開けている。本来は胸を強調するであろう

その形も胸の無い私には意味が無い。

「これじゃあまるで女装だ。」

姿見に映る自分の哀れな姿を見ながら率直な感想を述べた。

横も前や後ろにも出ていないスリムなボディラインは服装に合っているのだが、

身長の高さだけはどうしようもない。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。あと10cm身長を縮めて下さい。」

「残念。鏡に願いを託しても、映し出すのは真実のみです。」

人を笑い者にする親友改め知人が現実逃避をさせてくれない。

そういう親友も既に私服に着替えている。

元々整った顔立ちに小柄な親友が見事に女性物の服を着こなしていると、それはもう女性にしか見えない。

流石に同じ人間の持ち物だけあって二人の着ている服の感じは近い。

簡単に言えば比較対照がそこに在る訳で、

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。あと20cm身長を縮めて下さい。」

「さっきより願いが欲深くなってる。」

手厳しい突っ込みが返って来た。

「ところでさ、ちょっと小腹減ってこない?」

そういわれるとそんな気もする。自分の欲求に素直に肯く。

「じゃあ行こうか。」

満面の笑みで言いやがった。

「ちょっと待て、この格好でか?」

「うん。この格好で。」

其処には一点の曇りも無い笑顔。きっとアリジゴクとか蜘蛛とかがこんな笑顔をするのだろう。

「拒否権を行使します。」

「却下します。」

「異議を上申します。」

「異議を棄却します。」

即答しか返ってこない。この辺の掛け合いは流石に幼馴染と言った所。

「大丈夫だって。それに上手く行けばタダで食べられるよ。」

「意味が判んない。」

「ん?街の雑踏に出て自称イケテルお兄さん達に貢がせる。」

「・・・。」

「判んないかな?ナ・ン・パ。」

誰かコイツを止めてくれ。

突っ込みの甲斐空しく私たちはその格好のまま外に出ることにした。

「いきなり街に出て突飛な行動に出られても困るから、先ずはコンビニで小手調べという事で。」

それが何とか引き出した譲歩だった。てか最終目標は変わらないらしい。

コンビニに入り雑誌を軽く物色してペットボトルのコールドケースを見る。

其処に並ぶ王道から奇天烈な物までを眺めて買う物を選ぶ。

因みに親友は手堅い所を無難に選んでいく。それに追従するかそれとも間逆を攻めるか?

そんな事をしているとまた来客が来た。

帽子を目深にかぶった少年。此方をちらりと見た後、本を物色し始めた。選んだのは少女コミック。かすかに見えるタイトルはど直球の恋愛モノだったはず。

「少年、君が読んでも面白くないと思うぞ。」

届かない様に小声で突っ込む。その声に親友が不振がるので少年の方を顎で差す。若干の間。

「ま、良いんじゃない。それぞれの趣味だし。タデ食う虫も好きずき。」

それが親友の感想。若干の違和感を覚えながらも特に興味が続く訳でもなく直に思考から追いやる。

それから無難なドリンクを選んで会計を済ませる。あともう少し選ぶのに時間をかけていたらカクテルを買わされる所だった。学生証を提示してカクテルを購入。その構図が親友の中でツボだったらしい。

そんな親友をたしなめながら出入り口に向かう。

その時扉の向こうは全然意識をしていなかった。

出ようとして何かにぶつかる。咄嗟にそれを確認して人である事を認識して素直に謝罪する。

「あ、すみません。」

「っ痛えな、くそアマ!!」

頭が悪そうな阿呆が立っていた。

対処をまずった。謝るだけ謝ってさっさと逃げれば良かった。

「おい手前ぇ、謝るだけで済めば警察はいらねぇんだよ。」

テンプレートしか喋れないのだろうか?そんな事を考えていると横から裾を引っ張られた。向くと親友が一言、

「鴨。」

この場に友軍は居ないようだ。居るのは敵と高みの見物気分が一人。

「んだと、コラァ!!喧嘩売ってんか!!」

額に青筋を浮かべながらガンとばしてくる。先生、火に油を注がないで下さい。

「君に釘付けっ。」

親友の悪乗りはエスカレート。留まる所を知らないらしい。感情直結の阿呆が握り拳を振りかぶる。

「静かにしてください。迷惑です。」

あらぬ方向から飛んできた言葉に虚を突かれ、振りあがった拳が止まる。

先ほどまで少女コミックを読んでいたはずの少年は、すたすたとこちらに近づいてくる。

「良い年した男性が、女性に向かって暴力で言う事を聞かせようなんて。本当にダサい。」

悪態を吐きながら阿呆の正面で止まる。丁度私たちと阿呆の間に割り込む形となり、自然と私たちを庇う様な位置取りとなる。

「何んだと、コラァ!!」

阿呆にとって私達よりもこの少年の方が気にくわなかったらしく標的を変更する。少年を威圧し始める。私達は完全に蚊帳の外。

勝敗を決めるのは一瞬。懐に入り込んで鳩尾に強打を一撃、以上。

あっけない幕切れ。

ぐぅの音も出ないとは正にこの事。阿呆はその場で意識を失う。倒れ掛かって来る阿呆を抱きとめながらゆっくり下ろす少年。その手の中には確実に少年の物ではない財布が握られている。

「すみませんでした。店員さん。弁償の方は此方からお願い致します。」

チェーンや髑髏のアクセサリーが付けられたゴテゴテの黒い財布が宙を舞い、事の顛末を只呆然と見ていた店員の前に落ちる。驚きで生返事を返しながらも財布を拾う店員。どうやらこの伸びている阿呆は面子を潰された上に文無しになるようだ。自業自得とはいえ少々かわいそうでは在る。

それ以上に気になる事が在った。この少年の声どこかで聞いた事が在る様な。

・・・まさか、ね。

第一性別が違うし髪型も違う。

きっと、兄弟か何かだろう。

そう思い思考は次に移る。

「少年、少年。」

少年を呼び寄せる。

一瞬視線を此方に向けた後、少年は下を俯いてしまったので、表情は見えない。ただ唯一見える耳が幾分赤くなっている気がするのは気のせいだろうか?

「・・・ではない。」

少年があの人に似た声で何かを呟く。しかし聞き取れない。その為勝手に話を進める。

「本当に助かった。ありがとう。」

にこやかスマイルと共に右手を差し出す。しかし少年は帽子を更に深く被り直し再度いう、

「少年・・・では、ない。」

今回は何とか聞き取れた。そして自分の失言に気がついた。

「申し訳ない。そんな背格好だから少年かと思った。では何と呼べば良い?青年?名前を教えてくれればそう呼ぶけど。」

この一言がどうやら地雷だったらしい。後ろでは親友が声を抑えて爆笑している。よほどつぼだったらしい。対して少年もとい青年は更に耳を赤くしている。

「だから・・・私は・・・。」

何かを必死に訴えているようだが全く聞き取れない。しょうがないので助け舟を出してみる。状況を変えるのは如何でも良いような雑談が最適。

「なあ少年・・・じゃなかった青年、相沢茜って女性知ってる?兄弟とか親戚に居ないかな?」

「・・・」

「知らないかな?私の愛しの人。長年の片思いの末、今日この日に心の総てを込めて告白したんだが、物の見事にふられてしまってね。傷心中という訳だ。」

「・・・」

「そんな傷心中の私を知ってか知らずかこんなこっぱずかしい格好させて連れ回してくれているのがこの親友という訳。」

その声に釣られて青年がふと頭を上げた瞬間を逃さない。

百人一首の大会で絵札を取るように、と言ってもやった事は無いけど、素早く右手を動かし青年の目深に被っている帽子を弾き飛ばす。

「お。」「あ!」「え!?」

三者三様の反応を示す。

私の強引な一手に関心の様な感嘆が親友。

予想外の行動に単純に驚いている青年。

そして、一番予想外にぶち当たり当惑する私。

次に最初に行動できたのは青年もとい彼女だった。

「・・・!」

バチンッ。

本日2度目のビンタで意識を失わなかったのは只単純に彼女が冷静でなく的確にヒットさせさせられなかっただけだろう。

それでも彼女に逃走をさせる時間を稼ぐには十分すぎる時間だった。彼女は私が飛ばした帽子には眼もくれず私達の脇を通り抜けて外に走り逃げて行った。走る間に頭の後ろで軽くまとめていた髪が解けその長さを露にする。

「・・・なあ。」

「・・・なんだよ?」

「馬鹿だろお前。」

「穴が有ったら入りたい。そしてこの愚かな私に土を掛けて埋めて欲しい、墓石には「今世紀最大の馬鹿此処に眠る」と刻んで欲しい。」

「勝手にやれ。・・・それよりどうすんだ?」

「どうするも何もどうしようもないだろう?」

「欲しい情報は待っているだけでは手に入らない。行動の先に手に入る。」

「・・・例えば?」

「彼女の住所とか。」

「ちょっと待て、知ってるのか?」

「このご時世住所番号は調べればすぐに手に入る。相手は学生、つまりは学校というコミュニティに接続している訳だし。番号さえ調べ上げれば後は地図さえ読めれば解るだろ?」

「彼女に合って何を言おう?」

「そんな事は知らんよ。まあ、先ずは謝るだな。」

「おお神よ、救い給え。」

「そんな時だけ頼るなよ。さあ思い立ったら即行動。もう少しこの私を楽しませておくれ。」

状況を上から楽しむ親友の笑み。其れは蜜の味を堪能するに近い笑み。

どうやら私の願いは神ではなく悪魔に届いたようだ。


5


いつもの相沢家の一家団欒の食事風景。

ただし私は夕刻にコンビニに行って来てからずっとうわの空だった。

「どうした茜、何かあったのか?」

父親が聞いてくる。それに頭を振って答える。

「い、いや別に。」

言える訳が無い。好きな人がいますと、更にはそんな好きな人を一日で2回も引っ叩いてしまったなんて。

「そういえば、帰って来たら此れが玄関先に置いてあったぞ。」

小包。ピンクの包装紙でラッピングされ、黄色と赤のリボンが付いている。リボンには「茜さんへ」とそれだけ書かれたカードがささっている。

「あら?茜にまた贈り物?」

母親が怪訝そうな顔をして話に入る。

「そう、みたいね。」

そんな珍しい事ではない。なぜか本人のあずかり知らぬ所で勝手に伝説になっている85戦85KOの伝説通り、言い寄ってくる男どもは数知れない。中にはこのようにいきなり自宅にプレゼントを送り付けてくる間違った方向に積極的な輩も居る。

「茜、心当たりが有るの?今五月蝿く告白してくる男は?」

「男なんて居ないよ。毎回投げ飛ばしてるもん。」

「そうすると今回のは過去の男かしら?どうする此れも捨てておこうか?」

母親が心配げに聞いてくる。それに笑顔で答える。

「いいよ。その物事態には罪は無い訳だし、使えそうだったら使うよ。」

要らなかったら本人に丁重にお返しすれば良いわけだし。本人の目の前で贈り物を壊すというのも結構快感だったりする。


夕食を済ませて小包を持って自室に戻る。

改めて小包みを吟味してみる。

「・・・珍しい、かな。」

この手の事をする輩は大抵は配送業者を使い届けさせる。つまりこのラッピングとリボンのままで玄関先に置いてあったという事は本人が直接来た事を意味している。

私に直接渡そうとしたけど、結局勇気が足りずにその場に置いて去ったという可能性。

若しくは最初から私に会う気が無く玄関に置く事を考えていた可能性。

此れに関しては後者で在ると思われる。

その場で突如置いていく事にしたとしたら綺麗に書かれたカードがネックになる。本人に直接渡すのであれば名前だけが書かれたカードを挿して置く必要が無い。有ったとしてもそれは急遽書いた走り書きでなくてはおかしい。

そのような奥手の男が居ただろうか?少し考えてみても告白を断った傍から忘れていっている為、そもそも覚えていない。

「でも、ラッピングは合格点。」

まるで女性からのプレゼントのようにピンクのラッピングを選んだ事は評価に値する。大抵は送る本人つまり男側の好きな柄のラッピングにしてしまいがちの所を送る先の私に合わせてピンクでラッピングされている。

・・・まさか、そんなはずは無いよね。

思い浮かんだ一つの可能性を頭から強引に消し去る。

「さてと、中身は・・・。」

リボンを解き、ラッピングを取り中から現れた紙箱を開ける。

中に入っていたのは使い古された帽子。

「私の持っている帽子にそっく・・・!!」

細部まで細かく確かめてみる。何処からどう見ても自分の所有している帽子、正確には所有していた帽子。

「だって、あの帽子は・・・あそこで・・・」

耳まで赤くなっていくのが解る。心臓がバクバク鳴っている。

精神を落ち着けようと帽子から視線をそらし、まだ紙箱の中に物が入っている事に気が付いた。其処には手紙が入っていた。

緊張で何回も失敗しながらカサカサと音を立てて開く。


 いきなりですみません。

 今日は色々済みませんでした。その事を言いたくてこの手紙を書きました。

 図らずも一日に2回も本心からの告白をしてしまったので私の想いは解って頂けたでしょうか?

 あえて此処でもう一度書かせてもらいます。

 

 私は貴女の事が好きです


 答えを直ぐに欲しいとは言いません。もしこんな私と話しても良いかなと思ってくれましたらお電話頂きたいと思います。


そして最後に携帯電話の物と思しき電話番号とあの人の名前が記載されていた。

自分の携帯電話でその番号を一つずつゆっくり打ち込む。間違えてないことを3回ほど確認して、大きく息を吸い込んで、発信ボタンを押す。

呼び出しの電子音がひどく長く感じた。


エピローグ


準備万端。一切の抜かり無しな事を姿見の前で確認する。

そして時間も予定どうり。

待ち合わせの時間は10時丁度。そして今の時刻は10:00。

デジタル表示が00から01に変わった瞬間、携帯電話が着信を知らせる。

「本当に律儀だな。」

感想をもらしながらゆっくり着信音を聞き入ってから通話ボタンを押す。

「・・・!・・・、・・・!!!」

「悪い、悪い。今起きた所。」

あたかも眠そうな声を出して嘘を付く。

「!?・・・!」

携帯電話のスピーカーが壊れるんじゃないかと思うほどの大音量で怒鳴られた。向こうは公衆の面前のはず、その事を思い少し笑えた。

「大丈夫、忘れてたわけじゃない。そのさ、今日の事を考えて昨日の夜寝れなかっただけ。」

「・・・、・・・。」

どうやら向こうもそうだったらしい。まあ此方はそのまま夜更かしでは済まなかった訳だが。

「うん、直ぐに行く。・・・悪かったって、解った代わりに何でもいう事一つ聞くよ。」

「・・・、!・・・。」

「え、マジで?。」

予想を遥かに上回る返答。予想では「○○に行きたい」とか「○○を奢れ」とかだと高を括っていたので完全にテンパった。

「・・・。」

「あ、えーと、あ、そうだあいつ、ちーちゃんも連れてって良いか?」

限界の妥協案を出したつもりだが

「・・・!!・・・!!!」

当然に却下。その上思いっきり怒られた。さらに追い討ちを掛ける彼女を宥めて、完全降服を認める。

「解った。悪かった、行くよ。・・・ああ、その格好で。」

「・・・。」

彼女が上機嫌のまま電話は終了。

「・・・さてと。」

姿見に映るかっこいい私、さようなら。今回はこれでは駄目という事になった。

携帯電話を操り、ちーちゃんに電話を掛ける。

「・・・。」

「あ、悪ぃ。すまないけど例の服また貸してくれ。」

私自身は似合う気がしないが、あの服が彼女のお気に入りらしい。あれをちーちゃんから貰う事に成る日も近そうだ。


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