ポールダンサーの星座
その国には、聖女と同じく、民衆の心を掴む存在があった。
熱い!
焼かれるような熱さで目覚めたら、足元に火が点けられていた。
此処はどこ?
夜空が見えるわ。
でも、なんで私は薪の上で、木の棒に縛られているのかしら。
スケスケ生地のドレスは、見覚えがないし。
いつものパンプスも履いてない。
私は踊る予定だった。
クリスマスのイベントとして、確かクルーズ船の中で。
そうだ。
クルーズ船で火柱が上がり、煙に巻かれ……。
死んだのかしら? 私。
「……聖女毒殺未遂の罪により、悪女サラを火刑に処す!」
少し離れたところから、王子様みたいな恰好した男性が何か言ってる。
悪女……サラ?
確かに私は沙羅。
でも、聖女って……。
毒殺?……。
まさか、ここって……。
異世界!?
足元の火はどんどん大きくなる。
煙が目に沁みるので、私は上を向く。
きらりと、星が光る。
あれは……北極星かな。
私に星を教えてくれた男性がいたっけ。
『ポール・スタア?』
『そう、北極星。それを中心にして廻るのが北斗七星』
極点を廻る星座ね。
それはポールダンサーと同じ。
『なら私、北斗七星みたいに、極点を回り続けるわ』
あなたの周りをと言いたかった。
もう、逢えないね……。
その時。
ブツリと音がして、手の縄が切れた。
「逃げろ! サラ。君は無実だ」
側にいた騎士が言う。
懐かしい声だった。
「いいえ。私は逃げない」
私はダンサー。
だから。
すくっと立った私に、石が飛んでくる。
集まった民衆からわき上がる、罵倒と罵声。
「私、踊るわ!」
高い木の棒は、夜空に直立している。
私は棒を掴み、横向きになったままくるくる回る。
どよめく観衆。
ここからよ。ポールダンサーの見せ場は。
思いきり開脚する。
観衆も、王族たちも息を呑む。
着ていたドレスの裾は焼け、ミニ丈になっているからね。
そのまま両足を棒にからませ、両手を離す。
星よりも輝く笑顔を見せるの。
私は手放しで回りながら、声を上げる。
「私はダンサー! ただの踊り子!」
罵声はいつしか口笛に変わり、石の代わりに小銭が飛ぶ。
刑を言い放った王子も、口を半開きに私を見つめる。
棒の天辺に登り、私は北極星に祈る。
ここが何処かは知らないけれど、私の踊りを見ていてね。
船上で最後まで踊れなかった未練が、戦場へ連れてきたのかも。
片足だけ棒に絡ませ、観衆にも王子にも投げキッス。
するする棒から降りた私を、騎士は抱きしめる。
「今度こそ、離さない!」
騎士さん、あなたは!!
兜をはずした騎士は、まさかの男性。
抱き合った二人は、星の祝福に包まれた。
炎から生まれる女神。豊穣の女神でもある。
刑場でポールダンスを披露した沙羅は、豊穣の女神として、多くの人々の支持を得た、らしい。
お読みくださいまして、ありがとうございました!!
☆が★に変わるのも、ステキですね!!