追われてます!
ヤンキーものを書き始めるなんて、誰が思ったでしょう。
いや、書いてるの自分だけど。
短めにいくんで、夜露死苦ぅ!!!
「うっせぇ、このカスが。死ね」
絡んできた不良共を、ボッコボコに殴り倒して吐き捨てる。
このあたしを裏路地に引っ張り込んだのは、コイツらだ。
こんなきったない地面に転がるなんて絶対嫌だが、自業自得。
「…うぅ、ちく、しょう…レイ、か…」
6人もいた不良共の最後の一人が地面に伏した。
別に死んじゃいないから、3時間もすれば勝手に起き上がるだろう。
でも、一応はスマホで電話しとく。
「あ、あのー、○○の路地裏で、不良がケンカしてましたー。お巡りさん、お願いしまーす」
路地裏から出て、高めの声で通報して切る。
一応、病院行った方がいいだろ。
「あー、肩凝ったー。ラーメンでも食いに行くか」
ちょっとスッキリして、歩き出す。
普通に歩くだけなのに、あたしが歩くと、周りの奴らが避けていく。
モーゼみたい。
「ヒィ!こわっ」
「なにあれ、ヤンキー?ヤバくない?」
「ほら、あれでしょ?最凶ヤンキー、レイカとかいう…」
なんてコソコソ言われるけど、ひと睨みすれば全員黙る。
みんな影で言うだけで、あたしに話しかけて来る奴なんて、絡んで来る不良共くらいだ。
「あー、イライラする。誰か殴りてぇー」
独りつぶやくと、みんなが蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
いや、別に自分からケンカ吹っ掛けることも、誰かれ構わず殴るとかも、しないよ?
降りかかる火の粉を振り払ってるうちに、最凶ヤンキーなんて呼ばれるようになっただけだし。
「なんだよ、ちくしょう」
商店街のガラスに映る自分が目に入る。
金髪ロングに長ーいセーラー服。
別にメイクはしてないけど、元々がきつめの顔立ちだから、怖く見えるんだろう。
「はぁ、今日は家に帰らねぇと…金無いからな」
ため息ばっかりだな、あたしの人生。
高校1年の夏、学校をサボってるあたしには、1日が長すぎた。
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小学生の時は、あたしは普通の子供だった。
友達もいたし、学校にも毎日通ってた。
両親は共働きで、3つ下に弟がいる。
ごく普通の家庭に育ったどこにでもいる女のコ。
でも、中学に入学して1ヶ月程経った頃。
「ちょっと、顔かしな」
中学の女子不良グループに呼び出された。
何の覚えもないあたしは、ただただ、震えながら学校裏に連れられて行った。
友達は、誰も助けてくれなかった。
「お前、うちらに、ガンつけて来ただろ」
全く見に覚えが無かった。
「い、いえ…そんな…」
「その目が気に食わねえんだよ!!」
急に殴られた。
多分、生まれて始めて顔を殴られたと思う。
両親の顔が浮かんだ。
助けて、と心で叫んだ。
「おい、なんとか言えよ、ブス」
髪を掴まれ、引きずられる。
「いたいっ!たす、たすけ…」
気付けば泣いていた。
「うわー、泣き顔、きもっ」
「さわんな、ばーか!」
腹を蹴られた。
胃液がせり上がって、口の中に嫌な酸味が広がる。
「ごめ、ごめんな、さい、あの」
「ごめんで済めば、警察いらねぇんだよ!!」
頭を押さえつけられ、地面に顔がぶつかる。
あまりの痛さに視界が揺れる。
赤黒い鼻血が地面に垂れる。
お父さん、お母さん、みんな、先生、誰か、誰か助けて…
願いも虚しく、誰も助けには来てくれなかった。
「これで分かったか。二度とうちらにガン付けて来んじゃねえぞ?」
頭を踏みつけられ、グリグリと地面に顔を擦付けられながら、上からツバを吐かれた。
その時、何かが切れる音がした。
あたしは、頭の上の足を掴み、振り払った
「あ?なんだてめぇ、やんのか?」
むくりと起き上がったあたしに近付いて来たリーダー格の女の顔面を、思い切り殴り飛ばした。
「ーーぐあっ!!」
「さゆり?!大丈夫?」
「お前っ!さゆりに何すんだっ!」
あー、コイツ、さゆりって言うんだ。
こんな不良やってるくせに、庇ってくれる友達いるんだ。
なんだ、あたしよりもいいじゃん。
あたしなんて、誰も助けに来てくれなかったのに。
ーーーーーー
気付けば、全員ぶちのめしていた。
「なーんだ、不良って案外弱いんだ」
護身術として去年まで習っていた空手が、こんな形で役に立つなんて思わなかった。
そして次の日、あたしは呼び出された。
先生に。
「お前が佐々木達を殴ったというのは本当か」
あたしだって怪我してるのに、目に入らないらしい。
「絡まれて、殴られたので、やり返しました」
素直に認めると、先生達に囲まれた。
「暴力に暴力で返すのは、人として最低だ」
「なぜ、先生を呼ばなかったんだ」
「両親にも来てもらうからな。こんな事をしたのに謝りにも来ない親なんて、たかが知れてるが」
次々と責め立てられた。
もう涙も出ない。
そのあたしの状態に、不貞腐れてると思ったらしい生徒指導の先生が言った。
「お前も、あいつらと同じ穴のムジナだ」
両親は、あたしの怪我についても学校に言ったらしいが、それより相手の怪我の方が酷く、入院した奴もいて、あたしは一週間の謹慎になった。
それから二度と学校に行かなかった。
髪を自分で金髪に染めた。
母親は、仕事を休んで家に居ることが増えた。
あたしの顔色を伺って、ビクビクとしている。
父親は怒りっぱなしで、仕事から帰るなり、母親に
「お前が甘やかすから、こんなことになったんだ!!」
と叫ぶようになった。よく物が壁にぶつかる音がする。
「なによ!あなただって!!」
母親は、よく泣いていた。
弟は、やたらに塾に行かされている。
姉のようにならない為だろう。
あたしは家に居場所も無いから、よくプラプラと街を歩いていた。
当然のように不良に絡まれる。
その度に、返り討ちにしてやった。
ほんの少しのストレス解消と、イライラが募るばかり。
母親から必要な金は与えられたが、虚しかった。
父親とは、ずっと目さえ合わせていない。
ゴミを見るような目で見られるから。
どういう仕組みか分からないが、中学は卒業した。
そして、最底辺の高校に入学した。
時代遅れのセーラー服、スカートは長く自分で改造した。
入学式当日、両親は来なかった。
「なんだ?1年か?てめぇ、ムカつくな」
早速絡んで来たクソ共を、さっさと殴り飛ばして帰った。
みんなモーゼよろしく避けて行くから。
「あー、つまんねぇわ、高校も」
それから夏までサボり続けた。
ちょい胸糞展開でした。
これから、ちょっとずつハッピー方向予定ですんで、夜露死苦ぅ!!