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悲しみを乗り越えて ~マルカの親の物語~  作者: 眼鏡ぐま


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7

今回ちょっと短めです。

 

 あの後の話し合いで、マシュハットは1ヶ月の間この街に留まることが決まった。

 これにはきちんと理由がある。

 まず、マシュハットの現状を王都にある魔法省本部に知らせること。

 そしてその現状を考慮し、王立学園に通わなくても良いという特例の書類を作成し、署名しなければならないこと。

 最後に、マシュハットの魔法訓練のために。

 魔法を使わないと決めたマシュハットであったが、何も知らないことほど危険なことは無いとブルームは言った。


「魔法を使わないことが大前提だが、使い方を知らなければ逆に危険だからね。使い方をきちんと知った上で使わない、その方が絶対良い。ついでにどこまでだったら大丈夫なのかを知っておくと良いよ。私が教えるから」

「良いんですか?」

「ここまで知った上で君が魔力暴走なんかで命を落としたら後味が悪いだろう?それに私だったら、君が行き過ぎないように止めることも出来るだろうからね」

「ありがとうございます」


 こうしてマシュハットはこの街に留まることとなった。

 この街にいる間の衣食住に関しても面倒を見てもらえるという事でとてもありがたい。

 国の機関ともなると色々すごいんだなとマシュハットは感心した。

 マシュハットは担当者とブルームに再度礼を言い、今後の簡単な日程を確認すると、すぐ戻ることを約束して一旦ジムロと別れた広場へと戻った。




「おーい!マシュハット!こっちだ、こっち!」


 広場に戻るとマシュハットを先に見つけたジムロが手を大きく振りながらマシュハットを呼んだ。


「ジムロさん。お待たせしてすみません」

「いや、俺もさっき戻ってきたところだ。んで?どうだった?黄色か?まさか薄紅だったか?」

「いえ、白でした」

「し、しろぉっ?!」


 モニカとマシュハットの事情を知っているジムロは、もちろん彼らが隣国の貴族であったことは聞いていたし、それを本当のことだと信じている。

 だからマシュハットはきっと高い魔力を持っているだろうとも思っていた。

 それがまさか白だとは。

 驚きすぎて思わず出すつもりの無かった大声が出た。


「ジ、ジムロさん、声が大きいっ」

「もがっ……」


 マシュハットは慌ててジムロの口を手で塞いだ。


「わりい、わりい。しかし、まさか白とは……すげえなあ」

「魔法は使えませんけどね」

「そうだった。なんだか勿体ねえなあ、せっかく良いもん持ってるのにな」

「まあでも命の方が大事ですから、こればっかりは仕方ありません」


 それもそうだとジムロは頷いた。


「でも白ってことは王立学園に本来なら行かなきゃなんねえんだろ?どうなった?免除してくれるって?」

「それなんですけど――」


 マシュハットは先ほど簡単に決まったことをジムロに伝えた。


「っはー、魔法省本部……こりゃまたずいぶん大事、いや白だしなあ。あ、じゃあこれから1ヶ月の間住む所はどうするんだ?どんなに安宿でも1ヶ月となるとそれなりに掛かっちまうよな」

「それも含めて面倒を見てもらえるようです」

「そうか!そいつはありがてえな」


 ジムロはほっとしたように笑った。

 実際1ヶ月の宿泊費となると、どんなに安宿だとしてもそれなりの出費になる。

 ジムロの現在の手持ちでは足りないだろう。

 それに、いくらマシュハットがしっかりしているとしても、まだ15歳の子供を見知らぬ土地に一人残していくのは心配だった。


「あちらさんが面倒見てくれるってんなら俺も安心だ。っあ、だが1ヶ月も帰れねえとなると……モニカが寂しがるなあ」


 モニカとマシュハットはカタタナ村に来てからはいつも一緒だった。

 一日だって離れて暮らしたことは無い。


「……仕方ありません。あの、ジムロさんが村に戻るのは明後日の予定でしたよね?」

「ああ、そのつもりだ」

「僕、モニカに手紙を書くので渡してもらっても良いですか?」

「おお、もちろんだ!」

「ありがとうございます」

「それくらいお安い御用さ。俺はこの通りの一番端にある宿に泊まってるから書けたら持ってきな。あとは……マシュハットはこの後魔法省の支部に戻るんだろ?」

「はい。なので持って来ていた着替えを引き取ろうと思って」

「ああ、そうだな。一旦宿に預けてあるんだ」


 マシュハットはジムロが泊まる宿に一緒に行き、自身の着替えを受け取った。


「念のためにってモニカが多めに入れてくれておいて良かったなあ」

「そうですね。まさか1ヶ月も滞在することになるとは思っていませんでしたけど」


 ジムロの言葉にマシュハットは苦笑を浮かべる。


「本当になあ。また1か月後には迎えに来るから連絡しな」

「ありがとうございます。ジムロさん、僕がいない間、モニカとキルシュさんのことよろしくお願いします」

「なんだなんだ、改まって。お前は村の息子みてえなもんだし、モニカとキルシュのやつもみんな家族みたいなもんだ。村のことは任せとけ。お前はちゃちゃっと魔法の使い方を覚えてなるべく早く帰れるように頑張んな」

「はい」


 マシュハットは胸が温かくなった。

 自分たちの本当の両親はもういないけれど、家族と呼べる人たちがいることを幸せに思う。


(ああ、早く帰りたいな)


 まだ村を離れて一日目だというのに、もう帰りたくなってしまった。

 自分の帰る場所はもうカタタナ村なのだと実感する。

 予定では約1ヶ月という事だったが、魔法の使い方さえ覚えてしまえばもっと早く帰れるかもしれない。


「では、また。まずは手紙が書けたら持ってきますね」

「おう。あちらさんに迷惑かけないように頑張れよ」

「はい!」


 マシュハットは元気に返事をすると、荷物を受け取り宿を出て支部へと戻って行った。

 少しでも早くモニカたちの元へ帰ることを目標に。



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