処刑
兵士たちに取り押さえられた私たちは、廊下を通り、階段を上がって、外に出た。
そこは一面コンクリートの床で、自然など1ミリも感じさせない、無造作なフロアだった。
兵隊が道を作るように並んでおり、その奥には巨大なギロチン台が。
「あれが…」
私は思わず声を上げる。
兄上は遠くを見つめて、ふうと一息。
もう、死は避けられないか。
「ほら、早く歩くんだ。」
兵士に急かされ、私たちは渋々と歩き始めた。
大勢の冷たい視線が、体中に刺さる。
そしてついに、ギロチンの前にやってきてしまった。
私と兄上は顔を見合わせ、覚悟を決めたように頷く。
すると、
「お前たちか。異世界から来たという戯言をぬかしている犯罪者というのは。」
驚いて声のする方を見る。
ギロチンの奥にある玉座に男が座っていた。太った体に、いかにも高そうな衣服。
こいつが、例の…。
「お前、どういうつもりなのだ!私と兄上は何もしていないと言っておるだろうが!」
「なにか言ったかね?愚民の言うておることはよく聞こえんのう。」
「く、くそおっ…。」
どうやら、話しても無駄なようだ。
「さあ、どちらから地獄に落ちるのだ?早く決めたまえ。お前らの苦しむ表情が、早うみたい。」
その男…独裁者はにやにやと笑って私たちに尋ねる。
私は唇を噛んで、独裁者を睨みつけた。
すると私の視界に、男の姿が映った。
独裁者のすぐ隣にいる男、アルフィー・ガルシアが。
「アルフィー!!」
私は大声で叫ぶ。顔はもうすでに、涙でぐちょぐちょに濡れていた。
しかしアルフィーはこちらをじっと見つめているだけ。冷酷な笑みを浮かべながら。
「いいのういいのう。その恐怖で今にも崩れ落ちてしまいそうな、絶望的な顔。ほら、首を入れるんだ。」
独裁者は、私に先に死ねと催促する。
私は、もう生きる気力を失った。
もう助けてくれる人もいなければ、帰れる場所もない。残っているのは、独裁者に対する「憎悪」だった。
私は、素直にギロチンに頭を突っ込む。それを確認すると、数人の兵士が駆けてきて刃を落とす準備を始めた。
「では、これより犯罪者、グレース・ミジャルカの死刑を執行する!」
兵士の一人が高らかに宣言する。
私は恐怖で、ぐっと目を瞑った。
その時だった。
「!?」
「な、なんだ!」
物凄い爆発音で思わず目を開けると、牢獄がそれは恐ろしい勢いで炎を上げていた。
よく見ると、みすぼらしい服を着た人々が次々に牢を飛び出し、一目散に逃げだしている。
「だ、脱獄だーッ!!」
兵士たちは四方八方に散らばり、パニック状態だ。
独裁者も何が起きたのかわからず、おどおどしている。
すると、
『走れ!』
最初は聞き間違いかと思った。
『今がチャンスだ!裏口まで、走るんだ!』
風と共に聞こえたその声は、間違いなくアルフィーのものだった。
それに気づいた途端、私たちは走り出していた。
「お、おい!」
「受刑者が逃げたぞーっ!」
何人か気づいた兵士はいたものの、パニックになっている兵士たちに押し返され、捕まえることなど叶うはずがない。
私たちは何とか裏口にたどり着き、大慌てで扉を閉める。
そこには、
「よかった、間に合って。さあ、急ぐぞ!」
アルフィーが待ってくれていた。