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天才JC兵長は異世界→異世界への転移を果たす。  作者: 吉川 由羅
第二章 独裁者
8/10

処刑

兵士たちに取り押さえられた私たちは、廊下を通り、階段を上がって、外に出た。

そこは一面コンクリートの床で、自然など1ミリも感じさせない、無造作なフロアだった。

兵隊が道を作るように並んでおり、その奥には巨大なギロチン台が。


「あれが…」


私は思わず声を上げる。

兄上は遠くを見つめて、ふうと一息。


もう、死は避けられないか。


「ほら、早く歩くんだ。」


兵士に急かされ、私たちは渋々と歩き始めた。

大勢の冷たい視線が、体中に刺さる。


そしてついに、ギロチンの前にやってきてしまった。

私と兄上は顔を見合わせ、覚悟を決めたように頷く。

すると、

「お前たちか。異世界から来たという戯言をぬかしている犯罪者というのは。」


驚いて声のする方を見る。

ギロチンの奥にある玉座に男が座っていた。太った体に、いかにも高そうな衣服。

こいつが、例の…。


「お前、どういうつもりなのだ!私と兄上は何もしていないと言っておるだろうが!」

「なにか言ったかね?愚民の言うておることはよく聞こえんのう。」

「く、くそおっ…。」


どうやら、話しても無駄なようだ。


「さあ、どちらから地獄に落ちるのだ?早く決めたまえ。お前らの苦しむ表情が、早うみたい。」


その男…独裁者はにやにやと笑って私たちに尋ねる。

私は唇を噛んで、独裁者を睨みつけた。

すると私の視界に、男の姿が映った。

独裁者のすぐ隣にいる男、アルフィー・ガルシアが。


「アルフィー!!」


私は大声で叫ぶ。顔はもうすでに、涙でぐちょぐちょに濡れていた。

しかしアルフィーはこちらをじっと見つめているだけ。冷酷な笑みを浮かべながら。


「いいのういいのう。その恐怖で今にも崩れ落ちてしまいそうな、絶望的な顔。ほら、首を入れるんだ。」


独裁者は、私に先に死ねと催促する。

私は、もう生きる気力を失った。

もう助けてくれる人もいなければ、帰れる場所もない。残っているのは、独裁者に対する「憎悪」だった。


私は、素直にギロチンに頭を突っ込む。それを確認すると、数人の兵士が駆けてきて刃を落とす準備を始めた。


「では、これより犯罪者、グレース・ミジャルカの死刑を執行する!」


兵士の一人が高らかに宣言する。

私は恐怖で、ぐっと目を瞑った。

その時だった。


「!?」

「な、なんだ!」


物凄い爆発音で思わず目を開けると、牢獄がそれは恐ろしい勢いで炎を上げていた。

よく見ると、みすぼらしい服を着た人々が次々に牢を飛び出し、一目散に逃げだしている。


「だ、脱獄だーッ!!」


兵士たちは四方八方に散らばり、パニック状態だ。

独裁者も何が起きたのかわからず、おどおどしている。

すると、

『走れ!』


最初は聞き間違いかと思った。

『今がチャンスだ!裏口まで、走るんだ!』


風と共に聞こえたその声は、間違いなくアルフィーのものだった。

それに気づいた途端、私たちは走り出していた。


「お、おい!」

「受刑者が逃げたぞーっ!」


何人か気づいた兵士はいたものの、パニックになっている兵士たちに押し返され、捕まえることなど叶うはずがない。


私たちは何とか裏口にたどり着き、大慌てで扉を閉める。

そこには、


「よかった、間に合って。さあ、急ぐぞ!」

アルフィーが待ってくれていた。

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