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天才JC兵長は異世界→異世界への転移を果たす。  作者: 吉川 由羅
第二章 独裁者
6/10

取り調べ

「ちょ、やめっ」

「うわっ」


男に突き飛ばされ、私と兄上は地面に倒れこんだ。

背後から鉄格子の音が響く。


「どうしてなんだ?私たち、何もしていないんだぞ?」

「言っただろう。異国人の言葉は信用ならないと。」

「し、しかし…」

「グレース、やめなさい。」

「兄上?」

「この後の取り調べで、身の潔白を証明しよう。」

「…そうですね。」


私はそう言って、男を見る。

   どこか、悲しそうな顔をしていた。


「?」

「な、なっ」


私の視線に気づいたのか、男は慌てて表情を変える。

「と、ともかく、2時間後に取り調べを開始する。脱獄など馬鹿なことを考えるんじゃないぞ。」


そういって、さっさと行ってしまった。


「…ねえ兄上。」

「ん?」

「あの男の人、悪い人じゃないかもしれないです。」

「どうして?」

「さっき私たちが話している間、ずっと悲しそうな顔をしていたんです。本当は、こういうことはしたくないんじゃないですか?」

「そうなのか。僕は全く気が付かなかったが…。そうだ。この後の取り調べで、少し探りを入れてみる、というのはどうかな?」

「名案ですね、兄上!」

私たちはいたずらを考える子供のように、顔を合わせて笑った。






「おい。」


男の声がして、私は目を覚ました。どうやら疲れて眠ってしまっていたらしい。


「取り調べの時間だ。グズグズせずに、さっさと来るんだ。」


そう言って、男は牢の扉を開ける。

私たちは逃げず、素直に取調室へ向かった。


「では、今から取り調べを開始する。」

「はい。」

「まずは名を述べよ。」

「あなたは?」

「なんだと?」

「だから、あなたの名前を教えてくださいと言ってるんです。それまでは私たちも名乗りません。」

「…チッ。アルフィーだ。アルフィー・ガルシア。」


渋々だが名乗ってくれた。私は感謝の代わりにニコッと微笑むと、

「私はグレース・ミジャルカ。こちらは、兄のノアル・ミジャルカです。」


自分たちも名乗った。


アルフィーは私たちをじっと見つめると、言った。

「では、お前たちに聞く。この国になぜやって来たのだ。」


そこで、私たちは全てを説明した。自分たちの国が魔物に襲われ危険な状況だということ。魔物の暴走を止めるために異世界からやってきたこと。嘘一つつかず、丁寧に。


アルフィーは相槌を打ちながら私たちの話を聞いていたが、やがて呆れたようにため息を溢した。


「よくできた夢物語だな。」

「夢物語って…。」

「違う!今言ったことは、全て現実だ。」

「はっ。それで俺が信じるとでも思ったか。」


アルフィーはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

私はここぞとばかりに、

「あなただって、こんな事したくないんでしょう?」

「はあ?何を言っているんだ。俺はこの仕事に誇りを持っている。」


あっさりかわされてしまった。


すると、

「もう有罪は決定だな。」

「処刑の準備だ。」


外で様子を見ていた兵士が、笑いながら取調室を去っていった。


「そんな…」

「くそっ、ここまでか…」


私と兄上は、もう諦めムードだ。

兵士が上の人間…、つまりここの兵長に伝えたら、もうおしまいだ。

私の第二の人生も、こんなに早く終わってしまうのか…。

考えると、自然に涙が出てくる。


すると急に、

「今の話…、本当なんだな?」

「「え」」


私たちは同時に声のした方を向く。

アルフィーが、真面目な表情で私たちを見つめていた。


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