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天才JC兵長は異世界→異世界への転移を果たす。  作者: 吉川 由羅
第二章 独裁者
5/10

転移?

「う、うう…」


私はフラフラと立ち上がり、周りを見回した。


ここは、森の中か。

そうだ。私、あの怪しいゲートに飛び込んで…。

しかし、自分たちの世界とさして雰囲気は変わらない。


…!そういえば。

「兄上!」


私は叫んで、辺りを見回す。

しかし、兄上の姿はいない。

すると、

「しっ、静かにしろ。」

「!!」


いきなり誰かに口を押さえられる。

驚いて後ろを向くと、

「兄上!」

「心配させて悪かった。」


兄上は体を密着させ、完全防衛の体勢になる。


「さっきの大声で、魔物たちが気づいてしまったかもしれない。」

「ご、ごめんなさい…」

「大丈夫だ。…!」


その刹那、兄上は私を強く押し倒した。

するとその上を、魔物の群れが通り過ぎて行った。


「やはり気づかれたか。」

その体勢のまま、兄上は呟く。


「た、戦いましょう!」

私は剣に手をかけて、立ち上がった。

「今回はやむを得ない、か。」

兄上も渋々といった感じで立ち上がる。


「あれ、兄上武器は?」

「これだよ。」


そう言って兄上は、自分の右腕を突き出した。

そこには、見覚えのある腕輪がはまっている。


「とうとうこれを使う時が来たか。」


そして兄上は右手で何かを引っ張るような仕草をして、左腕を前に突き出した。

そして右手を放す(ような仕草をする)と、空を飛んでいた魔物一匹が、うめき声をあげて落下していった。


「弓ですね。」

「あたり。グレースは、地上の魔物を頼んだ。」

「はい。」


私は剣を引き抜くと、勢いよく飛びかかっていった。




「はあっ、いったい、何匹いるの?」

私は地面にしゃがみ込み、荒く息をしていた。

あれから数百匹は倒したのだが、魔物は減らない。

なんなら、増えている気がする。

これらの魔物が王国に流れ込んだら…。想像しただけでぞっとする。

兄上も体力の限界がきているのだろう、さっきからずっと盾で防御を続けている。


「一体全体、どうなっているんでしょう…。」

「恐らく、これらの魔物を生み出す、いわゆる心臓部があるんだろう。」

「心臓部、ですか。」


そうだとすると、ここでいつまでも戦闘を続けている暇はない。


「兄上。一旦退きましょう。それで作戦を立てるほうが、得策かと。」

「そうだな。」


私は盾を構えながら、兄上とともに走り出す。

大量の魔物が、後に続く。


と、兄上がくるっと後ろを向いて、何かを投げつけた。

「おりゃあっ!!」


するとそれがもくもくと煙を吹いて、追っていた魔物の動きが止まった。


「さあ、急いで!」

兄上は私の手を引いて、また走り出した。





私たちはいつの間にか森を抜けており、魔物ももう追いかけてきていなかった。


「助かった…のでしょうか?」

「今のところは、そうかな?」


すると、

「動くな。」


私と兄上の間に、槍が現れた。

先端が鋭く尖っている。これで一突きされたら、ひとたまりもないだろう。


「あ、あなたは…」

「俺のことはいい。お前らは何者だ。身なりからして、この国の者ではないと見たが。…さては、何か悪事を働こうとしていたな。」

「そんな。誤解です!」

「口を慎め。異国人の言う事を聞くとでも思ったか。ほら、ついてくるんだ。」


そこで私は、初めてその男の顔を見た。

上品な顔立ちに、上品な身なり。この世界の騎士だろうか。


「何をじろじろと見つめている。ほら、さっさと歩け。」

男はぷいとそっぽを向くと、私たちに槍を突きつけた。

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