プロローグ
吉川です(^▽^)/
今回も楽しんでくれたら嬉しいです!
私は、いつかは忘れたが、学校に殴り込みにきた男に殺された。
運悪く廊下に出ていた私は、そいつにターゲッティングされてしまったわけだ。
彼は、足が速かった。私は力を振り絞って逃げたが、あっという間に追いつかれた。
そして心臓をナイフで貫かれて、即死。
・・・そう思っていたのだが。
私はいつの間にか生き返っていた。転生、という言い方の方が正しいだろう。
しかも驚きなのは、それだけではない。
私はベルーニャという国で暮らす、同年代の天才女性兵長に転生してしまったのだ。
その名も、グレース・ミジャルカ。
最初は流石に驚いた。外を出歩くだけで、
「兵長殿!お疲れ様です!」 「兵長殿!応援しております!」
とチヤホヤされたのだから。
しかし、前世にこういう異世界転生ものを読んでいて助かった。
それのおかげで今ではすっかりこの世界に慣れ、楽しい生活を送っている。
しかしただひとつ、小説とは違う部分がある。
この世界には魔王もいなければ勇者もいない、平和すぎる世界なのだ。
そのため、私率いるベルーニャ軍は、仕事がほとんどない。
だから私は、不謹慎だがなにかが攻めてきてほしいと思うことがある。
だって、暇だもの。
「ん?」
ある晴れた日の朝。
家のポストを覗き込んだ私は、思わず声を発した。
「兄上からだ!」
私の二つ上の兄、ノアル・ミジャルカは、遠くの山に暮らしている発明家だ。
穏やかで、優しくて、面白い。そしておまけに頭もいい。ノアルは、私の自慢の兄だ。
そんな兄から手紙なんて、珍しい。何の用だろう。
私はうきうきと家に戻り、手紙を開封した。
『拝啓 グレース・ミジャルカ様
元気にしていますか。私は相変わらず元気です。
そろそろ夏ですね。ベルーニャも、かなり暑くなってきたとおもいます。
そこで提案なのですが、私の家にしばらく滞在してはどうでしょう。
ここは夏でも涼しく、快適に過ごせます。
グレースの顔も、久々に見たいです。
気が向いた時に来てください。待ってます。
あなたの兄 ノアル・ミジャルカ』
「夢みたい!」
気がついたら叫んでいた。
あの兄に会えるなんて。本当に、夢のようだ。
しかし、あの方が許してくれるだろうか。
あの方というのは、ここの国王、ベルーニャ王のこと。
実を言うと、兄はこの国から追放された身なのだ。
研究中に試作品を爆発させてしまったのが、その原因。
爆発も小さく、怪我人はゼロだったのにも関わらず、兄は追放された。
国王によると、国の土地を傷つけたからだそう。
どうやらこの世界では、平和すぎてそういう些細なことでもかなりの罪に問われてしまうようだ。
泥棒とかしたらどうなるのだろう。想像しただけで恐ろしい。
そういうわけで私は一瞬戸惑ったが、せっかくの誘いだ。乗らせてもらうとしよう。
「まず、許可を取らなければ…」
私はソファーから立ち上がった。
「…ということでございます、国王様。」
玉座の前で私は手紙のことを説明し、その場にひざまずいた。
顔を上げると、そこには険しい表情をした国王。
「そなたの兄とはいえ、彼は罪人だ。本当に、会いに行くのか?」
「はい。罪人とはいえ、私の兄です。どうか。」
「うーむ。」
国王は少し迷うような素振りを見せたが、やがてこっくりと頷いた。
「よし、分かった。外出を許可する。ここは常に平和だからな。気にせず行って来るのだぞ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
私は深くお辞儀をした。