7 【蒼莉】 二人きりの時間を作りたいので、まずはトイレで?
稲畑さんの誘いによって、あたしたち4人は一緒に学食に来て、いまは昼ご飯を食べている。
雛美坂さんはなんか緊張しているみたい。やっぱり、自分が男だったことを意識しているから気まずいと思っているのかな?
さっきあたしもついちょっとからかってしまった。雛美坂さんの反応もなんか面白かったし。
あたしだって、いまは緊張しているのよ。普段のあたしならもっと喋れるはずなのにね。
「ね、蒼莉、なんか緊張している?」
「は? まあ、雛美坂さんと一緒だからちょっと……」
あたしの態度がいつもと違うっていう事実は、芽結ちゃんには気づかれたみたい。
「何それ? わけわかんねぇ。蒼莉、さっきから何度もちらっと雛美坂さんを見てたし」
「そ、そう……」
確かにずっと雛美坂さんのこと考えているから、つい無意識に視線が……。
「二人とも栗色の髪は綺麗ね」
と、稲畑さんに訊かれた。
「あー、蒼莉はいきなり髪を染めたいと言ったから、ウチも一緒に付き合ってあげた。お揃いがいいよね」
まあ、確かにこの栗色の髪のことはあたしがさきに言い出したね。
「あたし、ただちょっとイメージチェンジしてみたいだけだよね」
「なんでこの色なの?」
「えーと、そうね。なんとなく」
そういえばなんで栗色だろうね? あのときなんかこの色がいいような気がした。これはあたしの前世の髪色と似ているからかな? でもあのときはまだ前世の記憶がなかったのに、これはただの偶然かな? それとも最初から前世の記憶は無意識にあたしを導いてきた?
「ごめん、わたしはちょっとトイレに行く」
まだ食事中なのに、いきなり雛美坂さんはトイレに行くと告げた。
まさか、トイレなら二人きりで話すことができるかも。なら……。
「あたしも、ちょっとトイレね」
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そして女子トイレに入ってきたら、鏡に映っている自分の姿を眺めていながら自分の胸を触ろうとしている雛美坂さんを目撃した。
前世は男だからね。女の子の胸のことくらい興味あるのは当然だよね。でもこれは自分の体だよね。まさか自分で触って興奮とかする!? でもあんな幼児体型で満足したらロリコンじゃん?
「うふふ」
その様子を見てなんか滑稽って感じであたしがつい笑い出してしまった。
「わっ!」
雛美坂さんを驚かせてしまった。でもそんな態度を見るとなんか可愛くて、ついもっとからかいたくなってしまう。
「キミはそれをどんなつもり……?」
「いや、その……」
案の定、雛美坂さんの顔は真っ赤になった。やっぱりいけないこととか考えているの!? やだな……。
「何でもない……」
恥ずかしいせいか、彼女(彼? )はすぐ逃げて個室に入ってしまった。
困ったな。せっかくいまは二人きりで話す機会になるはずなのに、ついからかいすぎて逃げられてしまった。
あれ? ここ女子トイレで、彼女(彼? )は中身が男……、これって大丈夫かな? 覗き放題だよね?
いや、でもいまは女の子だから変なこと考えないよね? でもさっきも自分の胸を触ろうとしたし、まさか……。
なんかあたしは勝手に変な妄想ばっかり、もうやめよう。後で本人に訊くといいよ。
あたしはついトイレの中で佇んで雛美坂さんを待ってしまった。ところで、雛美坂さんは遅いね。まさかトラブルとかある? いや、まさかこっそりと自分の体を……。いやいや、また変な考えが……。
「山葵野さん、まだいるの?」
やっと出てきた。あたしを見たらずいぶん驚いたみたい。ずっと待っているとは思わなかったよね?
「中で何をしたの?」
「べ、別に何もない。それより何か話したいことがあるよね?」
こんな反応だとやっぱり個室の中で何かありそう。怪しいよね。
でもそれよりいまはあの話。
「うん、あのね、2人で話したいことがあるの」
「実はオレも」
いまのはヨスカくんの喋り方ね。でもこんなロリ美少女の姿でこんな喋り方はなんか……。まあいいか。
「よかったですわ。ワタクシは……」
ワタクシも前世の口調に切り替えた。しかしそのとき……。
「蒼莉、遅い」
「わっ……! 芽結ちゃん?」
いきなり芽結ちゃんがトイレに入ってきた。
「何してんの? まさか二人きりで何かを……」
「いや、全然違う。何でもないよ。あはは」
確かに二人きりの時間が目的だけど、別に変なことをするつもりはないよ。ただ話し合いをしたいだけよ。まあ、恋人同士だからこれ以上する気がなくもないかもだけど?
芽結ちゃんはあたしと雛美坂さんのことを疑っているから付いて来たかな? なら怪しい行動はやめたほうがいいよね。
結局雛御坂さんと二人で話す機会を見失ってしまった。
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昼休みが終わって、あたしたちは教室に戻ってきた。
席は隣だから教室でなら話し合いしやすいとは思っていたけど、やっぱり周りには人いっぱいだからよくないみたいね。こうなっなら放課後まで待つしかないよね。
「放課後ワタクシと一緒にね」
他の人に聞こえられないように、小さな声で雛美坂に伝えた。
「うん、わかった」
こうやって結局放課後まで待つことになる。そのときまでは相変わらずあたしがずっと考え事をして、その間の授業はまったく頭に入っていきていない。幸い、まだ初日だからあまり本格的な内容に入っていないから助かったけど。
初日から全然ダメダメだね、あたしって。
とりあえず放課後まで待つよ。放課後は楽しみ!