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隣のお嬢様が前世での彼氏だった  作者: 雛宇いはみ
#6 ㅠそれからはねㅠ
31/31

31【蒼莉】 やっぱりあたしの彼(女)はお嬢様だ

 「やっぱり大きな家ね」


 やっと楽しみの土曜日になって、あたしはシヨカくんの家に訪れた。思った通りすごいお金持ちらしい家だ。


 「別にこれくらい前世のアオリの家とは比べ物にならないよね」

 「まあ、確かにそうね」


 シヨカくんの家は日本のお金持ちらしく大きくて豪華だけど、あくまでここでの話だ。現代の日本は貴族など存在しない。富豪と貧乏人の差はたとえ大きくても、中世や異世界と比べたらまだましだ。だから前世のワタクシの屋敷のほうがここよりずっと大きい。


 「いらっしゃいませ。お嬢様のお友達さんですね」


 家の中に入ったらメイド服のお姉さんはあたしにあいさつをした。やっぱりメイドがいるんだな。それに「お嬢様」って。うふふ。


 「何ニコニコしてるの?」


 なんか面白くて顔に出たみたいで、シヨカくんに恥ずかしそうな顔であたしに訊いてきた。


 「だって、やっぱりシヨカくんってマジ『お嬢様』だね」

 「まあ、一応」

 「あたしも『シヨカお嬢様』と呼ぼうかな」

 「自分のほうがもっとお嬢様のくせに何を言う!? もう……」


 そんな全否定って顔のシヨカお嬢様も可愛い。やっぱりからかいがいがあるね。




 そしてシヨカくんは自分の寝室に連れてきた。


 「すごい! さすがお嬢様。やっぱりお嬢様らしい部屋だ」


 前世のワタクシの部屋ほどではないが、それでも日本人のお金持ちのお嬢様としてそれらしい部屋ね。それにやっぱりすごく女の子らしい。中身が男の子だと考えるとそのギャップでつい笑っちゃう。


 「あんなに変なものを見るような目でじろじろ見て笑わないでよ」

 「だってお嬢様っぽすぎて」

 「どうせアフィユネお嬢様ほどではないよ」

 「そういえば、ヨスカくんが初めてワタクシの寝室に入ったときすごく緊張しましたわね?」

 「まあ、女の子の部屋に入るのはあのとき初めてだし。さらにあんなとんでもなくお嬢様の部屋」

 「ワタクシも緊張しましたわ。襲われるかなって」

 「いや、襲わないよ!」


 まあ、ヨスカくんは紳士で、しかもウブだから絶対あんなことはしないって信じているけどね。でもキミにならたとえ何をされたって……別にいいですわ……よ?


 「でも今回立場は逆ね。つまりあたしが襲うほうだ」


 そう言ってあたしはシヨカくんに接近する。


 「なんでこうなる!? てか顔近い!」

 「うふふ、油断したな。いまのシヨカくん、いただこうかな」

 「アオリ……!?」


 シヨカくんは少し怖がるような顔をして一歩後ずさりしたが、すぐ止まって、これ以上抵抗するような気配はない。


 もしかしてこれってオッケーってこと? あたしに何をされても構わないって言うの? だったら……。


 だがしかし……。


 「ごめん、ただ冗談よ」

 「え?」


 あたしはシヨカくんから離れた。そのときシヨカくんはなんか残念そうな顔になったように見えたけど、気のせいかな?


 「いまはただの友達で我慢するって言ったからね」

 「そう……だね」


 いますぐシヨカくんをいただきたいけど、やっぱりまだダメだと理性でわかっている。


 「ところで、妹さんもいま家にいるかな? ちょっとあいさつしたいね」


 気まずいと思って、とりあえず話題を変えよう。


 「そうだね。じゃ、あの子の部屋へ案内するね」

 「やった!」

 「そんなに会いたいのか?」

 「うん、だってシヨカくんとそっくりだと聞いたから。つまりあの子もシヨカくんみたいに可愛いってことね?」

 「それは……まあ。てか、まさか妹狙ってる!?」


 シヨカくんはいきなり警戒するような顔をした。


 「え? そのつもりじゃ……。あ、でも2人とも美味しくいただくという手もあるよね……」


 なんか自分が2人のシヨカくんに囲まれるというハーレムの妄想は頭の中に……。


 「そ、そんな……。やっぱり会わせない!」

 「いや、冗談よ。あたしはシヨカくん一筋だってば」

 「本当かな?」

 「なんで疑うような顔? あ、もしかしてシヨカくん嫉妬?」

 「そ、それは……」


 シヨカくん、わかりやすいね。


 「安心して。そもそもあたしが好きなのはシヨカくんの中身(・・)よ。たとえ同じ可愛い子が現れたってあたしの気持ちは変わらないよ」


 それに、元々あたしは女の子が好きってわけではないし。キミは前世の彼氏だから好きになっただけ。たとえどんな体になってもそれがキミだったらあたしはまた好きになるだろう。たまたま新しい体は美少女なだけ。


 「お姉ちゃん、友達が来たの?」


 女の子の声が聞こえて、あたしは寝室の扉のほうへ向ければそこには一人の美少女が立っている。


 「あ、喜夏(きか)。うん。ちょうどいいところに来たね」


 シヨカくんは女の子に返事した。やっぱりこの子はシヨカくんの妹さんね。うわさ通りすごく似ている。


 「はじめまして。雛美坂(ひなみさか)喜夏(きか)、お姉ちゃんの妹です」


 妹さん……喜夏ちゃんは自己紹介を始めた。


 「あたしは山葵野(わさびの)蒼莉(あおり)。シヨカく……シヨカさんの……トモダチだよ」


 あたしの自己紹介は少しぎこちない感じになっている。実は「恋人」だと自己紹介したいけど、いまはまだ我慢するしかない。


 「お姉ちゃんから聞きました。一緒に階段から落ちたんですね?」

 「あ、うん。ごめんね。あたしのせいでシヨカさんはケガをしちゃって」

 「いいえ、2人は無事で何よりです。こんなムチャなお姉ちゃんですが、これからもそばにいて守っていただければ嬉しいです」

 「いや、守られたのはあたしのほうだから。シヨカさんはすごくカッコよくて頼りになるトモダチだよ」


 本当に心優しくて可愛い妹だ。シヨカくんのことを心配してくれているんだな。でもこんな重い話題はもういいかな。では他の話題に。


 「そういえば、喜夏ちゃんはいつもシヨカさんと一緒にお風呂に入ってるの?」

 「え? は、はい。お姉ちゃんから聞いたんですか?」


 あたしの突然の話題転換に少し戸惑いを見せながらもちゃんと返事をした。


 「アオリ! なんでいきなりこんなことを!?」


 こんな会話を聞いてシヨカくんは困った顔で突っ込んできた。


 「あ、つい……」


 だってあのとき電話でつい一緒にお風呂に入った話を聞いちゃったせいで、『一緒にお風呂に入る妹』があたしにとって喜夏ちゃんの第一印象となったから、つい……。


 「余計な話をしないって言ったのに。まったく……」


 いや、別に余計なんて……。


 「とにかく、オレ……じゃなくわたしはお茶を淹れてくるから。2人で話していいわよ」

 「うん、わかった」


 いまの話を聞きたくないせいか、シヨカくんは慌てて寝室から出ていった。


 「あの、いまお姉ちゃん『オレ』って言いかけました?」

 「あ……それは……」


 さっきの言い間違い、やっぱり聞こえられたか。シヨカくん、油断したな。


 「やっぱり最近のお姉ちゃんはちょっと変です」

 「そ、そう?」

 「はい、階段の事故が起きた日に、一緒にお風呂に入ったときから。さっきも言った通り、私たちお風呂はいつも一緒ですが、あの日お姉ちゃんの反応はいつもと違いました。言葉遣いはときどき男っぽくなったし。私から目をそらそうとするようですし」


 やっぱりいっぱいボロを出したんじゃないか、シヨカくん……。


 「実はシヨカさん、あのとき頭もぶつかってちょっと混乱があったらしいよ」

 「お姉ちゃんからもそう聞きました。やっぱりそうですね」


 一応この言い訳が通じているらしくてよかった。


 「それでもなんか不安です。まるで私の知らない誰かの人格がお姉ちゃんの体に入ったみたいで怖いです」

 「そんな……」


 勘のいい妹だ。正体がバレていないものの、男だったシヨカくんの前世の人格は喜夏ちゃんにとって余計な存在なのね。不安させて本当にごめん。


 「大丈夫よ。別に記憶が失ったわけではないだろう」


 ただ前世の記憶が入っただけで、現世の記憶はそのままだから。


 「そうですね」

 「だからシヨカさんはいまでも喜夏ちゃんの優しいお姉ちゃんのままだよ。きっと」

 「……はい」


 喜夏ちゃんはまだ不安のような顔だけど、これは仕方ないことだよね。弟の青樹(あおき)だってあたしのことでずいぶんと不安になった。やっぱりあたしたちの前世のことのせいで家族の人に迷惑をかけてしまったね。


 いまこんな話はもう……。


 「ところで昔のシヨカさんはどうだったの? 例えばお風呂のときいつも一緒に何をしてた?」

 「え? またお風呂の話ですか?」


 ちょっとムリヤリの話題転換だけど、うまくいったみたい。こうやって暗い話はもう終了だ。あたしはそんな話をするためにここに来たわけではないし。


 「アオリ! なんでまだお風呂の話なの!?」


 お風呂の話の途中でシヨカくんが戻ってきて怒られちゃった。


 そして3人でしばらくいろんな話をしていたあと、台所に向かった。きょうのこの家の昼ご飯はあたしに任せろと言ったから。よし、ようやくあたしの実力を発揮するときが来たな。


 この家の台所って広くて必要な装置も食材も整っていてすごく便利だ。さすがお金持ちの家ね。


 あたしは自慢の中華料理を作ってシヨカくんと喜夏ちゃんに食べてもらった。2人ともずいぶん気に入って美味しく食べて褒めてくれた。その2人を見てあたしも嬉しい。きょう来てよかった。




 「きょうは楽しかった。もう行かないとね」


 楽しい時間はあっという間に経ってしまった。あたしは午後仕事があるから、昼ご飯が終わるまで付き合うのは精いっぱいだ。こうやってシヨカくんと一緒にいられる時間はもう終わったね。


 「忙しい中で来てくれてありがとうね。アオリ」


 シヨカくんは家の前まであたしを見送りに来た。


 「あたしのほうこそありがとう。また来るよ。今度泊まってもいいかな?」

 「もちろん、構わないけど」

 「やった! シヨカくんと一緒のベッドで」

 「それは却下!」

 「へぇ……」


 やっぱりダメか。ガード硬い。


 「なら喜夏ちゃんと一緒ならいいかな?」

 「喜夏が構わないのならいいよ」

 「本当? ではお風呂も。喜夏ちゃんとお風呂に入ってみたいね」

 「なんでまたお風呂の話!?」

 「シヨカくんも一緒に入りたい? もちろんよろしければシヨカくんとも一緒に3人でいいけど」

 「そんなのダメに決まってるでしょう! お風呂のことから離れろ。もう……」


 そこまで否定されるとね……。やっぱりこのネタはもうここまでにしよう。


 「それじゃ。また月曜日」

 「うん、またね」


 シヨカくんと一緒に過ごす時間は本当に幸せ。姿形や立場が変わったとしてもそれが変わらない。


 だからこれからも、どんな形であろうとあたしたちの時間はこのまま続けますように……。


久々の更新です。なかなか書けなくてこんな調子ですが、ようやくこれでこの物語はもう終盤に入りました。


この2人の恋を最後まで見守っていただけると嬉しいです。


いままで読んだ感想を書いていただけたらすごく励みになります。

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