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隣のお嬢様が前世での彼氏だった  作者: 雛宇いはみ
#5 ㅠしっちゃかめっちゃかㅠ
29/31

29【紫陽樺】まだ何も起きないように?

 また新しい朝が来た。わたしとアオリの前世の記憶が蘇ってきた日からもう3日目だ。


 きのうアオリの親友である芽結(めゆ)ちゃんと仲よくなろう……とがんばって行動してみたら結局夕食の時ぎくしゃくして、逆に関係し悪化したんだよね。その後何もできないまま一晩経ってしまった。


 妹と一緒にお風呂に入ったらなんか少し癒やされていろんな悩みを忘れた(もちろん変な意味ではないよ)けど、やっぱりまだ何も解決になっていない。


 ゆうべアオリが電話かけてきたときも全然芽結ちゃんとあの出来事について触れなかった。芽結ちゃんのことが話に出るとわたしは全然何も言えなくなったし。


 きょうどんな顔で芽結ちゃんと会えばいいの? 彼女はすでにアオリに教えたのかな? もしそうだとしたらどうする? でもいま考えてもどうしようもないからとりあえずいままでと同じような感じで学校に来て、普通にみんなとあいさつしよう。


 頭はまだモヤモヤだけど、元気を出そうとする。わたしは不安を抱えながら教室に入ってきた。


 「おはよう。シヨカく……じゃなく、シヨカさん」


 教室に入ったとたんすぐにアオリからのあいさつの声が響いてきた。相変わらず元気そうで可愛い声だ。それにいままた『シヨカくん』って言いかけたようだけどね……。


 「紫陽樺(しよか)、おはよう」


 次は汐寧(しおね)からのあいさつだ。2人は汐寧の席でお喋りしているようだ。もちろん、芽結ちゃんも一緒にいて3人グループになっている。でもやっぱり彼女からのあいさつの声はわたしに来るわけが……。


 「おはよう……。紫陽樺さん」


 いまのは聞き間違い……じゃない!? ちょっと遅かったけど、やっと芽結ちゃんもあいさつしてきた。なんか意外かも。でも顔は相変わらず全然笑っていないね。声もあまり元気ではないし。わたしと目が合うと彼女はすぐそっぽを向いていった。やっぱりきのうのことでまだ多少気まずく感じているに違いない。


 「みんなおはよう。いま何の話をしているの?」

 「汐寧さんと芽結ちゃんはちょうどシヨカさんのよくない話をしていたよ」

 「え? 何のこと?」


 まさか、芽結ちゃんはきのうのことを2人に言った? そんなことは……。


 「いや、違うでしょう。私たちはいま部活の話だよね」

 「あはは、まあね。ただ冗談よ。でも部活の話はもういいよ。あたしだけ帰宅部だからなんか寂しい」


 どうやらこれはただアオリの冗談みたい。2人はなんか普通に楽しく会話していた様子から見れば、わたしの悪口をしているようには見えないよね。ってことはやっぱり芽結ちゃんはきのうのことに関して全然何も言っていないようだ。それは助かったかも。


 「そういえば、シヨカさんは確かにボードゲーム部だよね? きょうも部活?」


 と、アオリに訊かれた。部活の話はもう嫌ではないの?


 「うん、実はきょう体験入部がある」

 「そうか。体験入部か……」


 そう答えたらアオリは苦笑いして、ちょっと寂しそうな顔をした。


 「え? 紫陽樺の部活はきょうから始まるの? 私の部はきょうまだ暇だよ。芽結ちゃんもそうだよね?」

 「まあ、そうね」


 芽結ちゃんは普通に汐寧の質問に答えた。


 「そうか。まさかきょう放課後忙しいのはわたしだけか?」

 「そうみたいね。きょう放課後も一緒にシヨカさんと一緒にいられないのか」


 アオリは残念そうな顔をした。やっぱりわたしと一緒にいたいよね。まだ話したいことがあるようだし。


 「ごめんね」

 「いや、あたしも仕事があるし。それに、どうせ土曜日は一緒にいられるのだから」

 「あ、そうだね」


 土曜日うちに来るってアオリと約束したから。


 「土曜日って? 何が?」


 と、汐寧はわたしとアオリに訊いた。どうやら土曜日の約束の話はやっぱりまだ汐寧に教えていないみたい。


 「あたしはシヨカさんの家に行くの。ね? シヨカさん」

 「え? まあ、そうね」


 実はそもそもアオリだけ誘うつもりだったから、汐寧と芽結ちゃんに言うべきかどうか最初は迷っていた。でもいまアオリからバラしたのだから別に問題ないかも。


 しかし、いまなんか芽結ちゃんから微妙に殺気を感じてきた。やっぱり気のせいじゃないよね? なんか気まずい。


 いまでも芽結ちゃんはわたしのことを警戒しているようだし。だからアオリがわたしの家に誘われることを知ってしまったらきっとイライラしちゃうよね。


 でも結局彼女はただ沈黙している。アオリを止めたりしないし、自分も一緒に行きたいとか言わなかったね。まあ、彼女がわたしの家に行きたいなんてそんなことあるわけがないよね?


 もしここでわたしは『汐寧と芽結ちゃんも一緒に行かない?』とか誘ってみたら、彼女を安心させるかもしれない。でもアオリはオレ(・・)と2人きりでいたいはずだろう。


 芽結ちゃんならわたしから誘っても断るかもしれないけど、そうじゃなければどうする? いま芽結ちゃんを家に連れていくのはやっぱりまだ気まずい。


 「ところで、汐寧さんはアニメを観る? いまあたしは『TS(てんせい)したら賢者の弟子を名乗るスライム勇者の成り上がりですが、なにか?』を観ているの。昨日も放送したよね」

 「このアニメ私も観ている。実は元々あまりアニメを観ていないけど、原作の小説を読んでいたから、アニメ化したらやっぱり観てみたいよね」

 「汐寧さん、原作のラノベを読んだの? あたしはアニメしか観ていない。ね、原作とはどれくらい違うの?」

 「そうね。まずはあのTS(てんせい)のシーンは……」


 アオリがアニメの話題を持ち出して、会話の方向が変わった。これはなんか助かったね。この4人みんなアニメを観ているようだからこの話題はうまくいける。


 その後もこの流れでいろいろお喋りは続けていく。でもやっぱりわたしと芽結ちゃんの間のことは話題に出てこなかったね。ならそれでいいかもだけど。


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