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「まあ君で遊ぶのはこのあたりにして、本題に入ろうか。ビアンカ、君に頼みがあって今日はこの時間を設けたんだ」


微笑む王太子に既に落ちたビアンカ。

内容を聞く前に頷いたのは言うまでもなかった。


「あの男爵令嬢が私や私の側近達に関わり始めてから、不可解なことが多く起きているんだ。中でも信じられないのがグリードだ。ここだけの話、彼は女性が苦手でね。その彼が、関わっても利益のない彼女に惚れ込んでいるような言動をとるんだ」


王太子の言葉に、ビアンカはここ1ヶ月のハインツや、周りの令嬢が溢していた噂を思い浮かべた。

メリーアンと関わったのは2回だが、強かな印象を抱いていたビアンカはハインツの趣味を疑っていた。


(もしかして、ハインツ様も私とお仲間なのかしら?)


「ビアンカ?きっと今君が考えていることは間違っているよ。僕が思うに、彼は何らかの強制力を受けている。例えば魔法のような、ね」


「それでは、メリーアン様がハインツ様に魔法で魅了をかけていると…?」


「まあ、それに近い何かではあるかと踏んでいるよ。それを確かめるためにビアンカの協力が欠かせないんだ。私は彼女を油断させる為にも、表向きは協力できない。君の高い能力がなくてはできないことだ。どうか頼む」


真剣な表情で頭を下げた王太子。

王太子の側近であるハインツばかりか、国の未来の権力者をも巻き込んでいる可能性があるとなれば、学生の遊びでは済まない。


王太子のその姿には王族としての貫禄が既にあり、ビアンカも背筋を正した。


「承知いたしました。ウォルシュタイン様」


恭しく頭を下げたビアンカに、王太子は小さく頷く。

そして、これから自分達が取る行動について大まかに話し合い、学園に到着してからは何事もなかったかのようにビアンカをエスコートしたのであった。




(とりあえず、メリーアン様の命令とは反対のことをしろとのことだけれど…細かいことは私の判断に任せると言われてしまったし、好きなようにしていいのかしら)


メリーアンの言葉に従わなければ、先日のような屈辱が待っているだろう。

期待を胸に、メリーアンが接触しやすいように、ビアンカは校内を1人で行動するようにしていた。


「ちょっと」


小さな声で呼び掛けられたと同時、ビアンカの腕が引かれ空き教室に連れ込まれた。

この状況にビアンカの胸は既に高鳴っていたが、メリーアンはそんなことを知る由もなく、ビアンカを後ろの壁に突き飛ばした。


鈍い音とともにビアンカの背中に衝撃が走る。

それと同時に足先に痛みを感じ、下を見るとビアンカの足の甲はメリーアンのヒールにギリギリと下敷きにされていた。


(ああっ!堪りませんわ!この方はわかっていらっしゃる…!できることなら僕に成り下がってしまいたい…っいけません、そんなことをしたらウォルシュタイン様が何とおっしゃるか…ああ、想像しただけでゾクゾクしますわ…)


メリーアンに強い眼差しを送ってしまうビアンカだが、メリーアンからは睨み付けられているようにしか見えなかった。

フン、と鼻を鳴らし一層強く足に力を入れるメリーアン。


その瞬間、ビアンカの体が震えたがメリーアンは気にかける様子もなく言葉を発した。


「ウォル様が私に靡かないのはあんたのせいよ!他の女達はシナリオ通り嫌がらせをしてくるのに、あんたは何もしてこないと思ったら、髪、髪の毛を…こんな風に…!」


言いながら怒りが抑えきれなくなったのか、メリーアンはビアンカの頬を叩き、髪の毛を鷲掴んだ。


「あんたのこのご自慢のブロンドも燃やしてやりたいわ!いい?!これからは私の言う通りに動くのよ!わかった?」


(はぁ…っメリーアン様…力加減も絶妙で、幸せ過ぎてどうにかなってしまいそう…)


にやけるビアンカは、メリーアンから見れば余裕の笑みを浮かべているように見え、火に油を注いだ。


「明日、昼休みに学校の中庭に1人で来なさいよ!」


ビアンカの返事も聞かず、乱暴に髪の毛を離し去っていった。

ビアンカの肩には千切れたり抜かれてしまったブロンドが、ハラハラと舞っていた。


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