聖女は軍服を纏う。
魔界の瘴気漂うなか、その人は誰よりも最前線で
胸を張って立っていた。
周りの屈強な男たちが膝をつき、心を折られるなか
その人は最後まで自分たちの勝利を信じていた。
顔や髪、服がどれだけ敵や自分の血で汚れようと
その人の魂は決して汚れる事はない。
血の赤、硝煙のせいで黒く見える視界、瘴気の禍々しい紫
暗い淀んだ色の中でさえもその人は
戦場では目立つ白い軍服を纏い、月の光を思わせる白銀の髪を靡かせ敵に向かっていく。
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全ては欲しいものを手に入れる自分のために。
全ては愛しい人を少しでも怪我をしないよう守るために。
私は剣をとる。
長い美しいとされてきた髪なんて風が吹けば邪魔なだけだ。
ヒラヒラしたローブなど走る事ができない。
怪我した貴方を癒すだけなんて、苦痛に滲む貴方をみているなんて出来ない。
私は貴方が傷つく前に助けたい。
この世界に急に飛ばされてきた貴方が凄く優しいから。
無視すればいいのに、無理して引き受けて。
しなくてもいい苦しみを味わうなんて。
私よりも心が美しく、優しい貴方。
みんなは貴方を勇者だからと当たり前だと見るでしょう。
でも私だけが知ってるから、崇拝される辛さを。
頑張っても褒めてもらえず。結果を出しても見てもらえず。
失敗したら失望され。少しでも休むと呆れられる。
貴方が私にだけは弱みを言ってくれたから。
私は。私だけは貴方の味方でいよう。
貴方はこの世界を守ると言った。
なら私はそんな貴方を守ると神に誓おう。
貴方のためなんて言ったら気にするでしょ?
だからこれは私のため。
貴方のいない世界なんていらないから。
私は貴方と花畑を見にいく約束を守りたいから。
私は軍服を纏いましょう。