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 翌朝、しっかりと休息をとって目覚めた上に、やりたいことが決まっているのですっきりとした気分だった。

 朝食を摂りながら掲示板を覗くと、レイドはもちろん、ガス惑星のタイムアタックについても活発なやりとりが行われていた。


「そうか、レア鉱石取れる人と専属契約して集めてもらうのもアリなのか」


 俺の思惑とか邪推しているコメントに、その手があったかと気付かされる。まあ、悪名高き成金王の手足となって働く物好きはなかなかいないだろうけど。

 どのみち自分でオークション販売を行った方が利益も高いので、俺に売るメリットもないしな。俺自身が資金に困ってるので、持ってくるのを安定して買うのも難しい。


「やっぱり人を使うのは性に合わないんだろうなぁ」


 仕事でも新人を使うのがうまくいかず自分でやった方が早いとか考えてしまう。もちろん、会社の事を考えたらちゃんと新人を教育して、使える人材を増やしていくのが大事なんだろうが……。

 ま、上司から言われるまでは今のままでいいかと思ってしまう。


「お、もう臨時ステーションは稼働してるのか……そして、第7はフウカが取ったとか」


 ガス惑星突破を契機に出現した納品任務、掲示板で協力を求めたおかげか、既に第6、7惑星には臨時ステーションが稼働しているらしい。

 衛星軌道上に作られたステーションは、機体の修理と取得した鉱石を収めるコンテナがあるらしく、ガンガンにタイムアタックできる仕様となっている。


 そして臨時ステーションのおかげで行ったり来たりしなくて良くなったフウカは、連続してトライを行い、徐々に俺との差を詰めて、抜き去っていた。

 初期型ファルコンでよくやるよ……。

 それは周囲のプレイヤーも感じたようで、掲示板が盛り上がっていた。


 元々Foxtrotでも無名なまま目立っていたこともあり、初期型ファルコンで果敢に攻める姿から関連付けるプレイヤーが現れている。ランキング成績から更に広く名が知られていく事になるだろう。

 成金王をやり込めたプレイヤーとして……。


「ちょっと複雑だけどなっ」




「おはようございます、マスター」

「ああ、おはよう」


 朝の挨拶にも気合がみなぎって感じられる。今日はシーナの操るファルコン部隊と新星系の探索に向かうのだ。

 デフシンは今日のレイドに向けて事前調査などで人がごった返しているだろう。グラガンはガス惑星のタイムアタックが盛んになっているので、こちらもそれなりの人手が見込まれる。


「となるとダクロンだよな」

「レーダー解析はお任せください」


 ダクロンは視界が閉ざされた星系。レーダーによる探査結果のみが情報となる。そのためにただの小惑星か、エンジンを切った宇宙船かが判別できない。

 小惑星に紛れて息を潜めている海賊船に襲われる可能性があった。


「基本的には探査ポッドを射出して、そのレーダー波から宙域を探索するぞ」

「了解です」


 レーダーを使用するには、電磁波を発射して跳ね返ってきた波を検知して行う。基本的には本体から電磁波を発射するのだが、それをしてしまうと暗闇の中で大声を上げて歩いているようなもの。

 身を潜めて伺っている海賊船やつらにとっては、格好の獲物になってしまう。

 それを回避するために、電磁波を発射する役目は探査ポッドに担ってもらうことにした。精度としてはやや劣化してしまうが、ハンマーヘッドの解析能力なら普通の宇宙船よりも精度は高い。

 それを元にファルコン部隊との距離も保ちつつ探索を行う予定だ。


 ひとまずは前回襲われたポイントを目指して行動を開始する。





「やっぱりこの辺はゴミが多いみたいだな」

「隠れるにはうってつけです」


 レーダーには多くの物が映り込んでいる。静止している物体が小惑星なのか、宇宙船なのかを判別するのは難しい。とはいえ無闇に攻撃したら、射線を元にこっちの居場所が判明してしまう。


「とはいえ熱源探査もできないみたいだしな」

「赤外線も光の一種扱いみたいですね」


 エンジンを切っていたとしても人が乗っているなら熱源はあるはずで、それを計測する事はできるかと思ったが、熱を伝える赤外線もダクロンにおいては遮断されてしまうようだ。

 こうなると頼れるのは電磁波のみ。しかし、相手はじっと受信を待っている状態で動かない。そもそも、ここに居るかも不明なままだ。


「しょうがないな、囮を使っていくか」

「プランBですね」


 相手が動かないなら動かすために策を打つ。3機のファルコンの1機にレーダー波を出しながら飛んでもらい、それを見て動いた物体をこちらから追い立てる作戦だ。

 少し離れた場所からこの宙域を目指し、かすめるように去っていくルートを選定。行動を開始する。




「海賊船、いました!」

「了解、追いかける」


 ファルコンを目掛けて動き出した海賊船に対して、合体機で追撃に入る。


「後方に感、挟み撃ちにされます!」

「そこまでは予想通り、ファルコン2機も起動」

「了解!」


 囮に釣られて動き出した1機の海賊船に対して俺が加速すると、更に後方から追いかける様に3機の海賊船が動き出した。

 ちょっと数は多かったが、単機で待ち伏せは不自然だったので、他にも敵がいるのは予測できた。そこで、新たに現れた後続機への牽制としてシーナの操るファルコン2機がレーダー波を浴びせながら追いかける形を用意しておいた。

 もう1部隊伏兵が居るとこちらの駒はなかったが、どうやら杞憂に終わった様だ。


 後ろに現れた3機は、更に後方に現れたファルコンから逃げる様に散開する。追撃の恐れがなくなった俺は、そのまま目の前の1機へと。


「合体機の加速を舐めるなっ」


 ハンマーヘッドを推進機として利用した合体機は、正面への加速ではハミングバードを上回る。見る見るうちに距離が詰まっていく。

 それを察知したのだろう海賊船は囮のファルコンを追うのを諦めて回避行動を取り始めた。


「二の轍は踏まん」


 アンコウ戦で分離したハンマーヘッドが明後日の方向へと飛び続けた失敗を教訓に、分離方法は考えてある。

 その場で180度回頭してハンマーヘッドのメインノズルを正面にしてから、ハミングバードを分離。ハンマーヘッドには減速命令を送りながら、俺はハミングバードで海賊船を追う。

 十分な加速の中、逃げようとする海賊船に軌道修正しながら接近。中口径粒子砲で攻撃していく。


「やっぱり、それなりに固いな」


 一門しかない粒子砲ではそれなりに命中させないと撃破には至らなかった。それでも一方的に殲滅できたので良し。




「シーナ、そっちはどうだ?」

「マスター、マスター、ヘルプミー」


 囮に使っていたファルコンも合流して3対3の状況ではあったが、蜃気楼システムを外してミサイルを載せ直したノーマルファルコンに初心者ニュービーレベルのシーナと新星系の海賊船では勝負にならなかった様だ。

 分離したハンマーヘッドを確認すると、しっかりと止まっているので合体し直すか考えたが、機動戦ではハミングバードのみの方が戦いやすい。このままシーナの所へと向かう。




「フォーメーション、クロスボーン……だっけ?」

「りょ、了解ーっ」


 海賊旗のドクロの下にある交差した骨の様に、逃げてくるシーナのファルコンと入れ違うように軌道をクロスさせる。そのクロスするポイントで海賊船に対して、高速振動剣を構えたまま体当たり。ちょいちょいと軌道を調整してこちらの船体にダメージが入らないように注意する。


「ガス惑星へのタイムアタックで動体視力が上がったかね」


 飛んでくる氷塊を避けたりしてきた成果か、海賊船の動きが良く見える。3回の交差でそれぞれの海賊船を撃破して戦闘を終了することができた。




「ワンサイドゲームになるけど、これはこれで楽しいか」

「こっちは必死なんですよ」

「蜃気楼システムが使えたらもう少し楽なんだろうが、ダクロンじゃ無理だからな」


 三次元投影でカモフラージュする蜃気楼システムは、ダクロンの闇の中では全く見えない。


「まあ、回避に専念して経験値を上げてくれ」

「そのうちマスターをギャフンと言わせますよ」


 何はともあれ最初の戦闘でこの宙域でも戦える手応えを掴んだので、探索を継続する事にした。

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