表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/200

84

 シールド機は、相手の攻撃を防ぐのが役割で、そのために高出力のエネルギーシールドを展開できる。

 先のレイド戦でポチョムキムキンが使っていた様な機体だ。船体も大きく、装甲が分厚くできていて、基本的には機動性がない。


 しかし中には機動性が高いものも存在する。フレイアちゃんの相棒であるフレイが乗っているアクティブシールドと呼ばれる機体だ。

 多くのシールド機は、広範囲にシールドを展開し、その内側に護衛対象を含める事で守るのだが、アクティブシールドは相手の攻撃に割り込むことで護衛対象を防御する。

 そのために機動力は高めで、防御性能は自機の周囲だけだが、その分耐久性があった。ガス惑星で使うならこっちの方が向いてそうだ。


「だからあえて普通のシールド機を選ぶぜ」

「なぜあえて茨の道を……」


 アクティブシールド機は機動力がある分、軽量でコア出力もハミングバードほどではないが小さめ。第5惑星で詰まった重力と風に負けないパワフルさには足りない。

 ジェリーフィッシュとは違ったアプローチをするには鈍重な機体を試したいところだ。


「シールドを小型化、自機の周囲のみにして……」


 普通なら自機を中心に一定範囲をカバーするシールドを、アクティブシールドの様に自機の周囲のみに限定することで、出力に余裕を持たせる。

 その上でブースターを追加して出力を確保。超重力圏から脱出できる推力を出せる様に改造する。


「中型のシールド機は……ライナサラス型か」


 サイだな。しかし、やっぱり高い。元々金策のためにガス惑星を攻略するはずだったのに、思った以上に出費が必要になってきた。まあ、先に進まずクリアした惑星を周回してればいいんだろうが……。


「そういえば、第6から採ってきたレア鉱石があったな」


 青色鉱石は精度アップの効果がある鉱石だったはず。ということは、遠隔制御ユニットが使いやすくなるだろう。


「先にこっちを充実させるか」


 第6惑星はジェリーフィッシュ向きの惑星だったし、サクッと周回して制御ユニットを向上させる事にした。




 第6惑星のタイムを縮めていきながら、鉱石を採取。制御ユニットを作って、ファルコンへと搭載していく。その間にランキングを確認すると、フウカ以外のプレイヤーの名前も掲載されはじめていた。


「まだ俺に迫る奴は……フウカくらいか」


 どうやらムキになってフウカは第7惑星にトライしているらしく、あと1秒のところまで迫っていた。他のプレイヤーとは10秒ほどの差ができている。

 第6惑星にもちらほらと登録が増えていて、こちらの方が差が少ない。マカロニ突破は難易度低めなのだろう。


「第5惑星はまだ突破してる人はいないな……が、4はクリア済みになってる」


 しまった、5がクリアできてないからその先を見てなかった。別に順番にクリアしないといけないシステムじゃなかったなぁ。

 1から3に関してはまだクリア者が出ていないが、果敢に挑むプレイヤーがいればいずれはクリアされるだろう。


「最初の一人になれないのは残念だが、タイムで上回れば逆転は可能……」

「負け犬の遠吠えですね」

「うっさい、うっさい」


 俺自身を騙す為に言ってるだけで、やっぱり一番にクリアはしたかったさ。でもまあ掲示板で情報を公開した時点で、先を越されるのも想定のうち。

 独り占めは優越感があるものの寂しさも伴う。やはりネトゲである以上、切磋琢磨するのが本筋だろう。


「問題はどうやってクリアしていくかだが……」


 第4がクリアされた事で多少の情報が増えている。第4惑星は、第5惑星よりも小さく、その分大気圏突破はしやすいものの、障害物が出てくるので左右の動きが必要になるらしい。

 第5惑星用に重量級の突入機を作っても、回避できずにぶつかりそうだ。逆にいうとジェリーフィッシュでも突破はできそうということか。


 1から3に関しては、生物が発生するかもしれないハビタブルゾーンより内側に公転軌道があるため、昼と夜の温度差が激しく、風の強さが半端ないらしい。

 ランキングに挑戦者の人数が出ているが1に挑んだ人が圧倒的に多いようだ。


「赤色鉱石が採れるというのもあるだろうが、1からクリアしていきたいという心理の方が大きそう。その辺、ちゃんと忠告してる?」

「サポートシステム回覧板に回しておきます」

「そんなのあるのか……」


 難易度から考えると最も太陽に近い第1惑星は気流が激しく、石ころがレールガンの弾の様に襲ってくるらしいので最も高い。エネルギーシールドでは防げない石ころの散弾は、一瞬で機体を全損させるという。


「こいつもまた違うアプローチが必要そうだ」


 第5惑星用に構想している重量級でも散弾を受け続ければ厳しいはず。しかも気流が激しい中となると、運営はクリアさせる気ないんじゃないかと思えてくる。


「第1惑星は餌なんだろうけど、それにしても酷い」


 現時点で突破口は見つからなかった。




「ああ、もうこんな時間か」


 ガス惑星へのタイムアタックを中心に時間を使っていると、既に明日のレイドに向けた会議が始まる時間を越えていた。

 元々参加する意欲がなかったのもあって、レイドはすっぱり諦めることにする。デフシンは粒子砲が拡散する中での戦い。レールガンやミサイルが主役となるだろう。それに対応できる機体は今手持ちにないしな。


「というか色々手を出しすぎて、機体がとっちらかってるな」


 蜃気楼ミラージュシステムを搭載したファルコン部隊も、デフシン探索用にミサイル中心の装備に換装してあるが、粒子砲装備時に比べると戦力は落ちている。

 遠隔制御ユニットによる操縦は、射撃精度がおちるため、誘導性の高いミサイルを積んでいるため装弾数が少ないのだ。自分で出入りできる自由出撃なら問題ないが、レイド戦の様に長丁場になると役立たずになるだろう。


 ハミングバードとハンマーヘッドの合体機もメインウェポンは粒子砲。高速振動剣は使えるが、射程は短い。

 ミサイル型の高速回転弾ドリルを持っていくことはできるが、装弾数が少ないのでやっぱり長丁場には向かない。


 輸送船のマンタは言わずもがな。


「デフシンの星系探索に向けても、戦力は整えないといけないけどな」

「まあ、一般のプレイヤーは中型、大型戦闘機に乗り換えることである程度対応してますけどね」

「先立つものがないのでなぁ」

「マスターほど稼いでいる人はいないんですけどね」


 俺の場合は自機を乗り換えるだけじゃ済まずに、ファルコン部隊をまるっと入れ替える必要が出てくるからな。

 他のプレイヤーみたいに腕でカバーとかできないし。

 更には手を広げすぎたがゆえに、多方面で出費がかさんでどれも中途半端な状況に陥っている。


「ガス惑星ランキングトップで報酬でもあれば」

「ありますよ?」

「何!?」

「確定するのは月末ですが」


 タイムアタックで1位をキープできたプレイヤーには、賞金が出るシステムがあるらしい。その集計が月末になるので、賞金がもらえるのは月末。あと10日ほど時間が必要だった。


「その間に塗り替えられそうだな」


 第7惑星はフウカに肉薄されてるし、第6惑星もライバルとの差はさほどでもない。俺みたいに機体を用意してって人は少ないはずだが、そもそもの腕が違うんだろう。


「このままタイムアタックを続けるか、他を探索するか悩みどころだな」


 専用の機体を持っている優位はあるものの、得られる物は各種レア鉱石と月末の賞金。新たな星系、ダクロン辺りを探索するのに比べると魅力は乏しい気がする。


「そういえば、遠隔制御ユニットの精度が上がったよな?」

「はい、以前よりは言うことを聞いてくれるようになりました」


 第6惑星で手に入れたレア鉱石で、遠隔制御ユニットの射撃精度が上がっていれば、ファルコン部隊の戦力は上がったと言える。


「問題はどこまで戦えるかだが」

「せいぜい初心者ニュービーってところですね」


 修正直後はわざと外してるレベルで当たらなかったから、まともに狙ってくれるならそれでも格段の進歩と言えるが、新星系であてにできるほどかは不明だな。


「Foxtrotで戦ってみるか」


 新しい事を試すのに夢中で、レイドの事は頭からすっぱり抜け落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ