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「うう〜む、重い……」


 連射性能が上がれば攻撃力は増す。

 汎用素材の上位版と言うことでそれなりの数を確保できていたので、早速ハミングバードの武装も強化しようとしたところ、普通の武器より重くなる事が発覚した。

 新星系に合わせて全般的に攻撃力・防御力の向上が狙える新素材だが、その分重量が増して、高出力のコアが必要になるようだ。


「新星系に入って全体的にレベルアップが必要だから、小型機から中・大型機への乗り換えを運営としては推奨してるんだろうなぁ」


 そういえばキーマさんもまだベア型の初期機体だったな。フウカと違って後付パーツはてんこ盛りでカスタマイズされてるけど。


「狙撃型の中型と言うと……グリズリー型、たっかいなぁ」


 高出力のコアを内蔵したグリズリー型は、かなりの武装を積むことができる分、お高く値段設定されていた。


「うう〜ん、工作機械で出費を強要しちゃった形だから乗り換えれなくなったのかな……」


 そう思うと心が痛む。とはいえ、キーマさんの性格だと無償提供は断られて、余計にストレスを与える事になりかねない。

 社会人はタダで貰えれば儲けものというよりは、タダより高いものはない精神の方が強くなるものだ。

 少しでも安い物を買おうとスーパーをはしごする時間で、他の作業をこなした方が、結果としてコストパフォーマンスに優れるとかだな。




「まあ、キーマさんの収支はわからんけど、強い武器があるというのは、レイドに向けていい情報だろう」


 出世払いでレイド後に代金請求でもいいし……って借金で縛るみたいで悪いか。まあ、どうするかの判断は任せよう。


「装甲類も軒並み重量アップで、ハミングバードにもハンマーヘッドにも向かないなぁ」


 ミサイル機を購入したら、耐久力アップを狙って載せ替えるくらいか……またもトラタヌな話だ。

 新星系解放でやれる事が増えるのはいいんだが、本当に可能な事は増えてない気がする。準備が色々と必要になるのだ。


「高出力で軽いコアもどっかにあるんだろうか……」


 未探査領域はまだまだあるし、全体的にバージョンアップされていくとすれば、そうしたコアがあっても不思議はないはず……希望的観測ともいう。


「やっぱりレイドに参加するより、自由に探索したい気分だな」


 レイドとなると、どうしても拘束時間は長くなって半日は費やし、体力も使ってしまう。それでこの週末を終えるというのはもったいない気がしてきたぞ。

 うむ、俺はレイドの時間で探索を行おう。

 デフシンに人が集まり、グラガンのフンコロガシは倒せそうにないから、自然と目標はダクロンに絞られる。

 視界がきかない星系は、レーダーの精度が明暗を分けるだろう。先のレイド戦でやったようにファルコン部隊を探査ポッド代わりに情報を集めて、三次元的に探索を進めれば、海賊への対処もしやすくなるはず。


「よし、その方向で進めよう」


 蜃気楼システムは、元々視界のないダクロンでは使えないだろうから、別の武装に置き換えておくか。やっぱり命中率を上げるためにはミサイルだろうな。


 ファルコンに標準搭載されているミサイルは、小型で弾数勝負な誘導性の少ないものだ。誘導性能が高いミサイルは軌道修正用のスラスターなども付くため、どうしてもサイズが大きくなってしまい、搭載量が減ってしまう。


「ファルコン2、マンタ1でマンタに弾薬を運んでもらうかな」


 マンタを混ぜると航行速度と戦闘力は落ちるが、継戦能力は上がってくる。広い宙域を探索するのに足が遅いのはネックだが、新星系は敵も強くなっているので、補給できるかは大きいだろう。


「あとは宙空補給できるユニットを用意して……」


 部隊運行がまだ考えられていないのか、補給船はまだ存在しない。外部から弾薬を補給するシステム自体を開発する必要があった。

 開発用工作機械でその辺を開発しながら準備を整えることにする。


「マスター、そろそろお時間が……」

「へっ、もう午前4時!?」


 やることに追われて時間管理ができてないとか学生かよ。いくら明日が休日とはいえ、睡眠時間が狂うと後々に響く。

 ここは大人しく寝ておくのが良いだろう。


「じゃあ、開発の管理を頼んだ。まあ、本格探索は日曜日のレイドに合わせる予定だから、そこまで急がなくてもいいけど」

「わかりました。おやすみなさい、マスター」

「ああ、おやすみ」


 シーナに見送られながらログアウトした。




 ログアウトしてすぐに寝てしまったが、起きたのは10時をまわっていた。それでもどこか眠気は残っているが。

 シャワーを浴びて頭をシャッキリさせてから、朝昼兼用のフレークプラスハムエッグでご飯を済ませる。

 洗濯などの家事を済ませて、ログインできたのは昼を過ぎてからになっていた。やはり夜ふかしすると、そのツケは大きく響くものだ。




「おそようございます、マスター」

「いやいや、そこまで寝坊したわけじゃないからね?」


 慇懃にお辞儀しながらイヤミを混ぜるシーナに言い訳しながら、昨夜からの作業の進捗を確認。ファルコンへのミサイル補給ユニットは2つとも完成し、マンタの供給用ユニットを開発中。

 誘導性能が高めの小型ミサイルは、パーツ作製用の工作機械で順調に生産中。これも上位の汎用素材で作れば、威力にプラスがあるみたいだったが、重たくなるので、今回は装弾数を優先して見送った。


 キーマさん用に上位汎用素材と上位赤色鉱石で強化したレールガンも完成している。威力と連射性能で攻撃力は3割から4割ほどのゲインがあるはず。

 これをレイドで試用してもらって、気に入れば購入という形に持っていこう。レイドで活躍できたら実入りもあるだろうしな。


「うむ、この作戦で完璧だ。まずはキーマさんに連絡をつけて〜」

「マスター、悪徳商人の顔になってるので交渉前には戻すようにしてください」

「どどど、どんな顔だよっ」

「ささっと」


 シーナが鏡代わりに取り出したタブレットに映る俺の顔は、時代劇の越後屋の様な顔に……って、越後屋の画像映してるだけじゃないか、騙されるところだったぜ。

 というかタブレットを差し出してニヤついているシーナの方がよっぽど悪どい顔をしているじゃないか……まあ、俺も気をつけよう。




 キーマさんにメッセージを飛ばしつつ、オークションの流れを確認。やはりレイド前ということか、武器のやり取りが活発になっているようだ。

 少しだが値段が上がっている。需要が供給を上回ったということだろう。といっても俺からみると完全に赤字のラインでの話なので、参戦する気にはならなかった。

 キーマさんはオフラインの様なので、宙域に出ることにする。連絡があったらすぐに戻れるようにステーションのあるグラガン内の探索を、合体機のみで飛んでいく。


 相変わらずアリジゴクが作る重力場が散在していて飛びにくい。


「というか倒せばいいのか」


 先のレイド戦でアリジゴクの倒し方は分かっている。重力場の中心付近まで接近し、頭を出したところに攻撃を当てればいい。

 俺の場合はハミングバードの高速振動剣を命中させれば、一発で討ち取れるので意外と倒しやすい部類に入るのだ。

 接近すると石つぶてを放ってくるので、それへの対処が必要だが、合体機になった事でハンマーヘッド側の粒子砲も使えるため、迎撃もやりやすくなっていた。


「ふんふふ〜ん」


 重力場の中心から動かないアリジゴクは、攻撃を当てるのも難しくないので、鼻歌交じりに撃破を重ねていった。

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