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「チョウチンアンコウかっ」


 頭の上でヒコヒコとチンアナゴに似た触腕を動かしながら、大口を開けて迫ってくる。まんまとつられクマーっ。

 突然の奇襲に、ハンマーヘッドとの合体状態。機動力ではハミングバードよりかなり劣る。それでも寸前で気づけた分、初撃は回避することができた。

 後部ノズルを吹かして加速、距離を確保しながら振り返ると、既にアンコウはこちらに向かって追いかけてきていた。


「ぬおっ」


 チンアナゴ部分の先端が光ったかと思うと、何かが高速で飛んできた。あれは囮であると同時に、砲台でもあるようだ。

 こちらも反撃を試みる。ハンマーヘッドに搭載されていた粒子砲は、レールガンへと置き換えてあったので、それで射撃していく。

 するとチンアナゴが光って、レールガンの弾を迎撃してきたではないか。やるなチンアナゴ。


 レールガンは実弾なので弾数が有限。無効化されるのなら無駄撃ちはできない。至近距離での撃ち合いに持ち込めば、こちらの弾は当たるかもしれないが、相手の弾も当たって来るだろう。

 そして俺は射撃の腕がイマイチ。レールガンの弾を迎撃できるチンアナゴに負けてしまう気がする。

 となると絡め手が必要だ。


「蜃気楼システム作動」


 ハンマーヘッドは中型機で搭載容量がハミングバードよりもかなり多い。更にはデフォルトで付いていた中型ミサイルは外してあり、装甲も軽いカニ装甲になっているので、そこに蜃気楼システムを載せていた。

 機体の映像を投影して標的を増やす事で相手の視覚を混乱させる作戦。自分の周囲に5機の幻影を浮かべる。これで狙われる率は1/6だ。


 チンアナゴが光り、幻影の1つが撃ち抜かれる。といって映像を投射してるだけなので、幻影は消える事なく弾が素通りしただけだ。


「これはいけるな」


 そう思いながらレールガンで狙い撃つべく距離を詰めていく。が、相手はチンアナゴではなくチョウチンアンコウだった。

 大きな口を一度閉じ、何やらモゴモゴさせた後、再び口を開くと同時にチンアナゴが撃ってきた弾を広範囲にばらまいてきた。


「おごごごごっ」


 一発一発はそこまでの威力はないものの、実体弾なのでエネルギーシールドでは受け止められない。ガンガンと船体に当てる音が響く。


「装甲にダメージ30%。航行に支障はありません」

「1回の攻撃で3割ってヤバいじゃんっ」


 4回くらったら内部にまでダメージを受けてしまうのだろう。敵に近づけば攻撃の密度も上がるわけで、そうなるともっと少ない回数で撃破される。

 接近を試みていたのをやめて、再び距離を取った。


 蜃気楼システムによる分身は、本体の周辺にしか出せないので、アンコウの散弾の範囲だと当たってしまう。

 探査用ポッドがあれば、離れた位置にも出現させられるが、ハンマーヘッドのレーダーがあれば探査用ポッドはいらないので積んで来ていない。


 ファルコンにも蜃気楼システムは積んであるが、ファルコンを囮にして破壊されたら、結局出費が痛い。

 速度的には合体機の方が速いので、単機なら逃げ切ることもできる。ただファルコンは逃げ切れるか怪しい。

 ファルコンを先に帰らせて、その間に俺がアイツを引き受けるしかないか。


「ひとまずファルコン達は安全圏に退避。避難航路に進めてくれ」

「わかりました、マスター」

「俺はコイツの相手をするわけだが……」


 一定距離を保っていると、アンコウの散弾は発射されないが、チンアナゴの単発弾は飛んでくる。分身へと均等に割り振っているらしく、たまに至近弾が飛んでくるので回避行動をとらされた。

 接近してレールガンを撃つなり、高速振動剣を撃つなりしないと倒せそうにないが、近づくと散弾が飛んでくるだろう。

 ハミングバードを分離したところで散弾を避けきる技術は俺にはなかった。


「困った……」


 たまにレールガンを撃ってみるが、チンアナゴは正確に迎撃してくる。遠くから狙撃ではあのディフェンスを突破できない。

 アンコウの拡散弾は放つまでに時間があるから、無駄撃ちさせてその隙に接近するのがセオリーか……?


 分身をできるだけ離れた右前方に表示して、やや先行させる。チンアナゴの攻撃を回避したように上下に動かし、接近していくとアンコウの口が動き始めた。


「一気に距離を詰めるぞ」


 スロットル全開でアンコウへと接近、レールガンを撃ち込みたいところだが、それをすると分身よりヘイトを稼いでこっちが狙われる危険があるのでこらえる。

 少し右へと舵を切ると、アンコウも向きを変えて来たので、少し動きを誘導することにした。蜃気楼システムで投影された分身は、本体が回転ロールすると大きく位置を変える。それを利用して前後左右に激しく動くように目立たせてやると、アンコウの意識はそちらに集中した……ように思う。


 そして口が開いた瞬間に、一気に左へと舵を切る。分身の方を中心に、アンコウの口から散弾が放たれた。左に舵を切ったことで、分身も同じように動く。それに合わせるようにアンコウも向きを変えてくるので、追われるように加速。


「ガンガン言ってるっ」

「船体損傷、装甲ダメージが50%。航行に支障はありません」


 最初の被弾に比べるとダメージは減っているものの、元々の損傷分が回復した訳でもないので蓄積していく一方。早く決着をつけなくてはならない。

 散弾による攻撃が終わったところで、アンコウへと向きを変えて加速を続ける。


 再びモグモグし始めたので、更に左へと避けていく。距離が近づいたことで、散弾の密度が上がるはずなので、横方向の移動を速くしないと被弾は増えてしまう。

 接近するより角度を稼ぐべく円を描くように加速する。合体機の加速力をもってすれば、相手の回転より早く回り込めるはず。


 アンコウを中心に螺旋を描くように距離を詰めていく。チンアナゴもカッと弾を吐いてくるが、今のところ当たってはいない。

 そうやって3回ほど散弾を回避して、ようやく攻撃圏内に入ってきた。


「勝負を賭けるっ」


 加速したままハンマーヘッドを分離、ハミングバード単体で鋭角に角度を変えて、アンコウへと急接近。チンアナゴの死角になる下方向へ潜り込みながら、高速振動剣を撃ち込む。


「!!!!」


 やはり新星系の敵は耐久力が高いのか、剣が刺さったままでも暴れまわり、撃破にはしばらく時間が掛かった。振り回される機体の中、何とか姿勢制御を試みるうちに耐久力を削りきって勝利。




「ふぅ……ふぅ……何とか〜」

「マスター、マスター」

「ん、どうした?」

「ハンマーヘッドがどっか行っちゃいますよ?」

「え、遠隔制御は!?」

「ハンマーヘッドには付いてませんよ」

「おおおーっ」


 ハンマーヘッドはコックピットを外して、ハミングバードがドッキングするスペースを確保している。他のマンタやファルコンと違って遠隔制御ユニットはなく、外部からの操作は考えてなかった。

 分離する際に減速コマンドは入力してあったが、最大限に加速していたので減速しながらもどんどん離れていっている。


 アンコウを撃破したのも束の間、再び加速してハンマーヘッドを必死に追う羽目になった。 

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