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「お、もう売れてたか」


 Foods連合から帰ってきてオークションを確認すると、出品していた粒子砲がしっかりと売れていた。2人のプレイヤーがまとめて買ってくれたようだ。このペースだとまだまだ売れそうだな。

 出来上がっていた分をまとめて出品して、次の分を作製予約していく。鉱石が足りない分は、オークションで補填しながらだが、他の素材が安いのでそれなりに利益率は高い。


「う〜む、もっと生産ラインを増やしていくかな」


 グラガンのステーションが出来たことで、格納庫の2段階目の拡張も行った。そのため、工作機械を並べるスペースもそれなりに確保できている。

 工作機械自体は、自分で作っていけるので余分なコストはかからない。生産ペースが販売を下回って稼ぎが遅れるのは良くないだろう。

 部品作製用工作機械を増産していくことにした。

 取り急ぎやれることをこなして、ログアウト。平日の夜ということで、時間的な余裕がなかったわけだが、キーマさんが言っていたことがすっぽりと頭から抜け落ちていた。




 翌日も仕事を定時で片付け家路につく。

 夕飯を含めた用事を済ませてログインした。


「おかえりなさいませ、マスター」

「ただいま〜」


 いつもの無表情なシーナに迎えられながら、すっかり落ち着いてしまう心地。ずっとログインできればいいのに……などと考えるようになると社壊人まっしぐらだな。


「さて売上は……おお、売れてる、売れてる」


 昨夜出品した物はしっかり売れていたので、作製していた武器を出品していく。そして次の作製に入るべく、鉱石を購入しようとして……。


「あれ……値上がりしてる……しかも出品数が激減してる!?」


 使い道が分からず在庫がダブつき底値になっていた赤色鉱石が、一気に10倍ほどの値段までつり上がっていた。


「どうなって……あ」


 考えられるのはライバルの出現。そう思って武器を検索してみると、ずらずらっと攻撃力アップ武器がラインナップされていた。

 しかも値段が俺の半値以下、出品者もざっとみて10人は確認できる。


「どうしてこうなった……?」


 一夜にして状況が一変した事に戸惑っていると、キーマさんの言葉が蘇った。


『オークションで話題になっている』


 昨日のメールにそんな事が書かれていた。

 俺はオークションの掲示板を開いてみる。


==========================================

257:名もなき船乗り


お、出品されたな。購入っと


258:名もなき船乗り


貴様っ、買ってから書き込んだな

もう売り切れてるじゃねーか!


259:名もなき船乗り


当たり前じゃないか

自分が買えなくなるように仕向ける訳があるまい


260:名もなき船乗り


ぐぬぬ……

結局、このキリシマユウヤしか出品してないのか?


261:名もなき船乗り


成金王な

武器で儲けるとかさすが腐った野郎だ

でも買います


262:名もなき船乗り


つまりはプレイヤーが作って売ってるって事だよな

その方法が分かれば俺も……


263:名もなき船乗り


そういえばキリシマユウヤが落札していってるのがあるな


264:名もなき船乗り


ああ、赤色鉱石な


265:名もなき船乗り


ばっ、それを言っちまったら


266:名もなき船乗り


おう、ばっちり作れたぜ

さすが成金王だな、がっぽり利益をとってやがる

俺なら半値で売れるな


267:名もなき船乗り


>266

お願いします、売ってください


==========================================


 ……やられた。俺の購入した物から予測されて、武器の生産に乗り出した奴がでてきたみたいだ。目立たないように数を抑えて落札していたが、ネットの分析力を甘く見てしまった。

 おかげで俺は赤色鉱石の在庫がないままに物価上昇に追いつけなくなってしまっている。


「というか、こんな値段で出してたら赤字じゃないか……」


 値上がりする前に鉱石を押さえていたとしても、原価ギリギリ。利益がでない価格になっている。これじゃあ工作機械を買った費用も取り戻せないだろうに……しかも、便乗して出品者が増えてしまって値上げも難しくなっている。


「生産者が増えるのは同志が増えたみたいで嬉しいんだが、採算も考えない馬鹿だとヤバいぞ」


 もちろん、鉱石で攻撃力が上がる事が分かったら、他の鉱石で試す者も出てくる。命中補正や射程補正の掛かった武器も出品されていて、それらの鉱石も品薄値上がりしていた。


「おおう、俺の武器で稼ぐ作戦が早くも頓挫……いや、ステップが進んだだけと考えよう」


 元々俺が出品を始めれば、コピー業者が増える事は予想できていた。まあ想定外の早さだったけど……。

 俺の持っているアドバンテージは、Lv2の工作機械を持っている事。初期の5%の上乗せ武器だけじゃなく、もうワンランクアップさせた武器を作れる。

 しかし、それを作るためには新星系の鉱石が必要なはずだ。

 新星系で素材を集める為に資金を稼ぎたかったのだが、ニワトリが先か卵が先かのような状況に。

 計画通りにはいかないものだ。


「ひとまず方向転換だな……」


 出品した武器を取り下げて、赤色以外の数を持ってる鉱石を出品していく。ひとまずはこれらの素材で少しでも稼ごう。

 作ってしまった粒子砲は、ファルコンへと搭載しておくことにする。こうなったら、現有戦力で、鉱石を集める方法を模索するしかないだろう。


「とはいえ、平日に新鉱石を取りにはいけないな……」


 大きな変動が起こった時に、ログイン時間が限られる社会人はツライ……。




 それから平日の間に攻撃力アップ武器は一気に広まり、大手連合は自作する様になっていった。おかげで俺が出品したところで赤字覚悟の値段になっていて稼ぐ算段が狂ってしまった。

 多くの人が武器作製に乗り出しているので、部品作製用工作機械を売りに出そうかとも考えたが、名前がマークされている状況でそんな事をすれば、工作機械が作れる事もバレてしまうだろう。

 それだけは何とか死守せねば。


 なので赤色鉱石を自分で取りに行けば売って稼げるのではと思い、マンタを連れて採掘してみた。しかし、オークションでの鉱石の値段はそこまで高騰もしていない。

 撃破任務で得られる報酬にも赤色鉱石はあるので、人数をかけられる連合は自前で鉱石を集められるのだ。

 Foods連合の様に使い道は分からなくても一定数は確保していた連合も多かったかもしれない。

 

 結果、採掘した鉱石は、ファルコン用の新しい武器を作製するのに使ってしまった。

 本当はミサイルを強化したかったが、船を買い換えるには資金が足りないし、レーダーにジャミングがあることを加味して、まずはファルコンにレールガンを搭載する事にした。

 ミサイルほどではないが、拡散弾を使用すれば多少の命中率の悪さはカバーできるはず。


 そうやって準備を進めながら週末を迎えた。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 今度は意味のない物をわざと買って、それをフェイクにして新しいものをださないといけないね、 じゃないと今後大手しか儲からなくなってしまう。
[一言] 環境が変わると一気に儲けが出なくなる。 生産職あるあるですなあ。(・・;
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