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 カニを5匹倒して、ステーションへと帰投する。

 残念ながら甲羅はドロップしなかったが、コアとアップグレード用の鉱石は入手できた。

 早速、ステーション外装用工作機械をアップグレードしていく。鉱石を複数使う事で、2段階アップとかできないかを試してみたが、指定できずに失敗。やはり先の星系に進んで新たな鉱石を探す必要がありそうだ。


 そして服飾用機械を見てみると、やはり売り切れてしまっている。出来上がっている分を出品しつつ、販売履歴を確認すると、Bravoサーバーからの購入者がいた。


「Bravoサーバーもゲート開通したんだな」

「Alphaは人海戦術、Bravoは高難易度のクリアでコアを収集したようです」

「うちのサーバーには中核になる人物や連合ユニオンがないからなぁ」


 フレイアちゃんというメーカー仕込みのアイドルプレイヤーがいるAlphaは人数が多く、βでの任務成績が良かった特務曹長が率いるBravoチームは攻略が上手い。


 うちのサーバーでも一人凄腕のパイロットを知っているが、繰り返し同じ任務をこなすのは好きじゃないようだ。

 常に新しい任務、遭遇を求めて飛び回っている。最近はコバンザメか、それを撃破したプレイヤーを探してさまよっていると聞く。


「サクッと返り討ちにすればいいじゃないですか」

「いやいや、やられるのは俺の方だから」


 人目の無いところで、相打ちでコバンザメを撃破したが、まさか他サーバーを含め唯一のコバンザメ撃破だったのは予想外だった。

 おかげでフウカに狙われる羽目になっている。

 正体を明かせば、戦いを申し込まれるか、自由出撃している時に襲われるかだろう。

 そして現状では勝てる見込みはないし、フウカとしても納得しないはず。簡単にやられた俺に対して、本気を出せと何度も襲ってくる可能性すら想像できた。


「勝てないとしても、互角にやりあえた結果じゃないとダメだな」


 フウカの強さは、動体視力と船体感覚の鋭さにあると見ている。実際に戦っているのを見たのは、カニとクジラを相手にしている時くらいだが、必要最小限の動きで避ける事で、攻撃にブレがなく、長く攻撃を続ける事ができるのだ。


「目の良さを利用するような、蜃気楼ミラージュシステムでも考えてみるか」

「さすがです、マスター。あの小娘に思い知らせてやりましょう」

「すぐにできるもんじゃないよ。それにしても、シーナのフウカ嫌いはどこから来てるのか……」




 カニのコアを納品すると、ゲート解放まではあと少しだというのは分かるものの、やはり明日まではかかりそうな感じだった。

 ネットで調べると、Bravoが昨夜、Deltaがついさっき解放したようだ。

 他のサーバーも明日には解放されそうな進捗しんちょくで、Foxtrotはやや遅いくらいだ。


「第2ステーションがいち早くできた割に時間が掛かってるなぁ」


 第2ステーションのおかげで、色々な撃破任務が解放されて、他のサーバーよりも有利なポジションにいたはずなのに、後から来たのに追い越されている状況だ。


「泣くのが嫌なら、さあ歩けってか」

「人生〜らくありゃ蜘蛛いるさ〜」

「なんだそのカンダタな歌は」


 などとくだらない話をしながら次の出撃に向けて準備する。貝にリベンジしなければ。




「しかし、修正がこんなに早いならファルコン隊で貝を先にやっておけばよかった」


 近くの小惑星を使って撹乱してくるミミックラムに対しては、小惑星を破壊する速度も必要になってくる。攻撃手段が増えるファルコン隊で対処すれば、かなり楽になりそうだった。

 しかし、先日の修正で回避能力も下がってしまった。

 小惑星が乱舞する中に入ってしまうと、深刻なダメージを受ける可能性が高い。貝一匹を倒すために、ファルコン3機全損とかしたら確実に赤字だ。


 なのでマンタを連れて行って採掘を優先。貝には俺一人で戦うことにした。




「それじゃ、やるか」


 マンタの採掘が終わり、レア鉱石に狙いを絞って高速振動剣を撃ち込む。それに合わせて時空震が発生して、他次元生物が出現。しかし、視界内には現れず、レーダーには小惑星が多くて確認できない。

 やがてレーダーに映る小惑星が動き出し、視界内の小惑星も動いていく。


「やっぱりこっちから探しにいかなければ、向こうから寄ってくるんだな」


 周囲のどこに潜んでいるかわからず、こちらを囲むように小惑星が動き出すと狙いが定めにくいが、向こうから寄ってきてくれる場合は、方向が分かるのでこちらに向かってくる小惑星を攻撃していく。

 火力を上げた中口径粒子砲は、動き回る小惑星を確実に破壊できた。

 前回に比べると余裕を持って周囲の様子を確認できている。


 すると小惑星の一つがこちらの射撃を避けた。


「見つけた!」


 周囲の小惑星を破壊しながら、攻撃を回避した小惑星をマーキング。距離を詰めていく。貝も周囲の小惑星に紛れる様に移動するが、純粋な機動性能ではこちらが上だ。逃がすことなく追随して、攻撃していく。

 ただ貝に何発か当たっても、少し揺れるくらいでなかなか手応えはない。たまに開く口に撃ち込めればダメージが大きそうなのだが、俺自身の射撃センスが追いついてない。

 距離を詰めるしかないのだが、油断すると大きめの小惑星に跳ね返るようにしてこちらへと襲いかかってくる。


 そうした攻防を繰り返すうちに、周辺の宙域の小惑星が減り、こちらが有利な場が整ってきた。こうなると貝の動きも読みやすくなってくる。

 貝の動きは小惑星にぶつかって方向転換するか、口を開けて閉じるタイミングで加速する。水中だと貝殻に挟まれた水が押し出される事で推進力を得るんだろうが、宇宙空間ではどうやって加速を得ているかは不思議だ。


 何はともあれ、移動が読みやすくなれば、こちらの攻撃も当てやすくなってきた。ただ口を閉じた貝は固く、表面には小惑星を纏っているらしく、なかなか有効打にはならない。

 やはり決着をつけるには高速振動剣をぶち当てるしか無いのだが、その間合いに入るのは難しい。狙うのはカウンターとなってくる。


 ついに貝を追い詰め、正面にある大きな小惑星で反射して向かってくるタイミングを得る事に成功。まっすぐ突進してくる貝に対して、高速振動剣の射出タイミングを計る。わずか100mの射程は高速で飛び交う宇宙戦では一瞬の攻防。意識を集中……ここっ。


「消えた!?」


 正面に捉えた貝の姿が、急激に移動方向を変えた事で、一瞬姿を見失う。機体を滑らせ、周囲を確認。何とか姿を捉えた時にはこちらに向かって大きく口を開いている。

 何とか機体を正対させる事はできるが、高速振動剣の射出は間に合わない。


 再び迫る貝の大口の中へと取り込まれ、機体が激しく揺さぶられる。が、そのまま視界がホワイトアウトする事はなく、モニターには宇宙空間が映っていた。


「ミミックラムの撃破を確認しました」

「何とか間に合った様だな」

「多少なりとダメージを与えていたのも良かったと思います」


 こちらの攻撃と相手の噛み付きが互いの体力を削り合い、何とかこちらの体力が勝ったという事だ。

 おかげでハミングバードの船体にも結構なダメージが入っていて、翼の一部やアンテナなどが失われていた。


「やっぱり白兵戦はリスクが高いな」

「ハミングバードは耐久力がほとんどないので削り合いは無謀ですよ」

「まあ、でも新兵装の有効性も試せて良かったよ」

「新というか、戻したというかですけどね」


 少し前に思いついて高速振動剣の回収タイムラグを減らすための手法を組み込んでいたのが幸いした。

 それは単に撃ち出すだけでなく、船体にくっついた状態でも使えるように、元々の白兵武器に戻すというものだった。互いの機体が接触する距離で、相手を斬り刻んでいける。

 貝の突進に合わせて起動は間に合い、貝殻に押しつぶされる前に、相手の本体へと突き刺さり撃破に成功した。


 仕組みとしては普段は棒状の先端に高速振動剣を保持して、元来の白兵武器として使用できるようにしておき、射出する時は弓を引き絞るように、レールに引き込んでから射出を行うような機構を付けた。

 これにより、射撃を行うまでの準備時間が必要になったが、船体に付けて攻撃する分には繰り返し使用が可能となっている。

 イメージとしては銃剣が近いか。

 昔見たロボットアニメで、ビームライフルの先端がビームサーベルとして使えるのがあったのを思い出し、再現を試みた結果だ。


 射出するとその運動エネルギーが失われれば、質量の軽い刀身部分は弾かれてしまうが、ハミングバードに接続した状態で振るえば、コバンザメなどに当たってもハミングバード自体の推力で押し合うこともできるようになる……はずだ。


 とはいえハミングバードはもろい機体でもあるので、体当たりされると相手を撃破する前にこちらが壊される危険も高い。

 やはり基本は射出して使う方がいいだろう。


「ひとまずは勝利……ドロップはなしでコアもそんなに大きくないな……後は鉱石を回収して帰ろう」

「はい、マスター」

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[一言] 「人生〜落らくありゃ蜘蛛いるさ〜」 「なんだそのカンダタな歌は」 ↑ www(ノ´∀`*) 何処かのラジオ番組のクイズで水戸黄門の主題歌のタイトルは?って問題が6回くらい出してるけど正解者ゼ…
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