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やはり平日はプレイする時間があまり取れない。日々の納品任務と、オークションへの出品、品物の売れ行き情報を確認したら、後は撃破任務を1回こなせるかどうか。
時間に追われると、無用な失敗を生むのは体験済みなので、無理無茶はしない。
そんな感じで平日を過ごすうちに、Alphaサーバーでは遂にゲートが解放された。やはり人数が多いとコアが集まるのが早かったようだ。
ゲート解放によって新たな仕様が公表される。
ゲートの目的はもちろん他の星系への移動だ。未知の星系へと飛び出す事ができるようになる。その先がどうなっているかは凄く気になるが、どうせなら自分で確認したい。
新星系でのプレイを動画配信している人もいるようだが、それらの情報はシャットアウトしている。
他に大きな変更点というと、他のサーバーへも移動できるようになるという事だ。フレイアちゃんのいるAlphaへも移動できるようになると、他のサーバー連中はコア収集を加速させているらしい。
ただ当のフレイアちゃんも移動できるとなるので、どこに行けば逢えるのかは不明になっているが……。
俺としてはオークションなどはサーバー毎に別となっているらしいので、そのサーバー独自の出品物を買いに行くといった事ができるようになるのは魅力だ。
昔の行商人のように、特産品を別のサーバーで売れば、その差益を得られる様になるかもしれない。
逆にそれを期待してうちのサーバーに来る人も増えれば、俺の出品物も売れやすくなるだろう。
「既にAlphaサーバーから買い付けに来てる人がいるのか」
オークションの落札履歴を見て、そこに付随する情報から他サーバーからの来訪者も分かるようになっていた。さすがにプレイヤーの固有名まではわからないが。
おかげで服飾用作製機械は飛ぶように売れている。
「でもうちのサーバーはまだゲート開通してないのに、どうやって来て、帰ってるんだ?」
「マスター、そこはツッコんじゃダメなところですよ」
ゲームのご都合部分らしい。まあ、先にゲートを開通させたサーバーへのご褒美期間という事だろう。
商売人として、先を越された時のデメリットは良く分かる。先行したところは、新素材も手に入るだろうし、どうしたって稼げてしまうのだ。
今が木曜日。うちのサーバーがゲート解放できるのは、早くて日曜日といったところか。それまではうちのサーバーの特産品として、服飾用作製機械を売っていくしかないな。
「コア収集に貢献しないんですか?」
「生産職が1人加わったところで、ペースは変わらないさ」
「このゲームに生産職なんてないんですが……」
金曜日は仕事が押してログインもできないままに就寝してしまった。
土曜日は朝からしっかりとログイン。
まずは情報収集……服飾用作製機械が底をついているので、出来上がってる分を出品。そろそろ値段を上げても許されるだろうか?
まあ宇宙船のパーツや普通の工作機械に比べたら全然安いんだが。2割ほど値段を上げて出品する。
そして、売った分はすぐに増産をかけて生産していく。ただ販売単価が安いので、工作機械を増やしてまでの生産はする気はない。
オークションの出品物を見ると、アバター用の衣装も増え始めている。ワンピースにレースを付けてアレンジしたものや、ベルトなどのパーツ類を工夫している物。ズボンの裾や服の袖の長さを調節して雰囲気を変えているものなど、レパートリーが増えてきている。
シーナを着せ替える日も近いかもしれない。
が、もう一声、これという服が欲しかった。
「ゴスロリとか……」
「マスター、そういう趣味なんですね」
「いやいや、服としての技術でいったらアレが最高峰だろ。細かなレースの組み合わせに布の重ね方、全体のバランスとか……こう、ね?」
「マスター、自分の好きな事になると饒舌になるのは、ヲタクっぽいですよ」
「ぐぬぬ……」
「だがそれがいい」
「ん?」
「好きな物があるって良い事だと思いますよ。他人に強要しなければ」
「う、うむ……」
これはゴスロリは着ないという意思表示なんだろうか……黒髪で肌の白いシーナには、似合いそうなんだけどなぁ。
「お、見たことのない物が出品されているな」
宇宙サンゴ、宇宙コンブ、宇宙ワカメ、宇宙ナマコ……宇宙付ければいいってもんじゃねーぞ!
しかも食事の概念のないゲームで、食材追加されてもなぁ……今後、食事で能力付与でも付くようになるんかね?
ファンタジー系のゲームだと、肉を食べれば攻撃力アップなんて効果が出るゲームもあるが、肉体で直接戦うわけでもないこのゲームではどうなんだろうか。
何にせよ、珍しさからボッタクリ価格が付けられている状況なので、研究するなら自分で入手してからだな。
「そう言えば、新星系へ行った時はパーソナルルームや格納庫はどうなるんだ?」
「新星系にステーションが建築されるまでは、元の星系から発進する事になります」
そして新ステーションができたら、パーソナルルームごと移動できる……第2ステーションができた時と同じ様に、発進できる場所が増えるという感じらしい。
「となると、またステーション建材が大量に必要になるな」
第2ステーションができた時に、格納庫を拡張したので、戦闘用にファルコン3機を買ってもまだスペースには余裕がある状況。今後を見越して、ステーション外装用の工作機械を増やしていく事にした。
初期ステーション近くで汎用素材、第3惑星の輪で工作機械に使う素材を集めていく。
「久々のゴブリン戦だったが、特に問題はなかったな……ただ、リーダーはともかく雑魚を処理するのに砲門1つじゃ面倒だな」
小口径の粒子砲でも一撃で倒せるゴブリンに、中口径の粒子砲を使ってもオーバーキルなだけで、一発は一発としてカウントされて、殲滅速度は上がらない。
威力を抑えて連射できるようにするか、貫通力を付けて後ろの奴もまとめて処理できるようにするか、何らかの開発が必要だろう。
「中口径の威力を絞って連射させる……攻撃力アップでその辺の数値は変わらないし、他の方法だろうか」
出力をコントロールするという意味では、やはり制御系の強化になるのか?
マンタの遠隔制御ユニットの機能を上げた事を考えると、そちらの鉱石を利用して作製してみるのが良さそうだ。
そのままその鉱石を使って生産するよりは、専門の機能を付けた方がより効果は高いだろう。
「帰ったらその辺の機能を強化だな。マンタは採掘が終わったら自動帰還させて。俺はカニ鉱石を掘ってから帰る」
「はい、マスター」
第3惑星のカニは、撃破された苦い思い出もあるが、改造されたハミングバードでは遅れを取ることはない。
ハサミから伸びる次元断層を振り回す線の攻撃も、ハミングバードの機動力なら回避可能。粒子砲を防ぐ泡もその成分を含む甲羅も、高速振動剣の前では脅威ではなくなる。
かといって油断して撃破されては間抜けだ。
気を引き締めて掛かる。ハサミの動きに注意しながら距離を詰め、次元断層を振り回し始めたら一気に回避しながら、カニの背後へと回る。
関節的に背後を攻撃できないカニは、必死にその場で回ろうとするが、ハミングバードの機動力ならカニの旋回よりも速く、背後を取り続ける事ができた。
後は連射の効かない高速振動剣での攻撃をしっかり当てるだけ。
「うっし、大丈夫だな。ハミングバードの装甲に予備を作っとく為にももう少し狩っていくか」
カニの甲羅はレアドロップらしく、毎回落ちる訳ではないらしい。数を討伐する必要があった。まあ外れを引いたとしてもコアは出るし、アップグレード用の鉱石も掘れるので無駄にはならない。
ハミングバードの収納庫がいっぱいになるまで狩りをして帰った。
コロナに関する私見をエッセイとして公開しました。
興味ある方は一読していただけると幸いです。