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「そろそろコアを採りに行くか」


 レイドから1週間で、ハミングバードとハンマーヘッドの修理は終わっている。そろそろ機体のパワーアップも考えてはいるものの、基本路線は変えないつもりだ。

 特にハミングバードは、戦闘機の中でも最小最軽量で機動力でトップの性能を誇る。これはコア出力が高くなった機体の中にも代わるものはない。

 コア出力が高いという事は、多次元化合物が大きくなり、それに伴って全体の質量が上がるためだ。宇宙空間での加速性能は、重量によって変わってくる。重たい機体を動かすには、それに応じた出力が必要になってくるので、結果として出力が上がったメリットよりも、加速が鈍るデメリットが大きくなるので、ハミングバードを超える機体はないのだ。


 ただハミングバードに改良の余地は無いのかというとそうでもない。ハミングバードを構成するパーツをより伝導効率の良い物質に変えたりする事で性能が上がるのだ。

 詳しい理論までは分からないが、レアメタルを使ったパーツを使えば実現できる。


 第2ステーションが稼働した事で、それらのパーツも購入可能にはなっているが、お値段はそれなりにしてしまう。

 となれば俺としては自作するわけだが、その為にはまずLv2の工作機械が必要になってくる。


「という事で、カニからだな」

「はい、マスター」


 ハミングバードに乗って、マンタ3機を伴い自由出撃で宇宙へと出た。




「第1ステーションの側は閑散としてるねぇ」

「まあ、ほとんどのプレイヤーは撃破任務に出ますから」

「それもそうか」


 俺としては宇宙の広さを実感できる自由出撃が好きだが、どうしても移動に時間が掛かってしまう。効率を考えたら撃破任務を受ける方がメリットが多い。


「でも採掘しようと思ったらどうしてもね」

「報酬で鉱石が貰える任務もありますよ?」

「未知との遭遇が待っているのだよ、男のロマンだ」

「そこはマロンでしょ!」

「そのツッコミはおかしい」


 などと言ってる間に勝手知ったる採掘場へ到着。

 マンタから詳細探査ポッドを打ち出して、小惑星の成分を検索。カニを伴う鉱石に目星を付ける。


「じゃあ、マンタ達は汎用素材の採掘で」

「はい、マスター」



 マンタが戦闘に巻き込まれない様に位置を確認して、小惑星へと高速振動剣を撃ち込む。ワイヤー付きで撃ち出された刀身は、スラスターの力も借りつつ、小惑星へと斬り込んでいく。

 ピンポイントで鉱石目掛けて進むので、ヒートブラスターを使うよりも早く鉱石へと到達した。


「次元震を感知、出ます」

「オーケー」


 高速振動剣に繋がるケーブルを巻き取りながら、次元震の発生ポイントへと機首を向ける。そろそろカニの相手も慣れてきた。

 この場所のカニなら次元断層を振り回す攻撃はないはずだが、一応十分なマージンを取りつつ、ハサミの動きを回避。そのまま背後に回り込みながら近づき、剣を撃ち込む。甲羅へと垂直に突き立った剣が、スラスターを吹かして斬り裂き、そこへと粒子砲を撃ち込めば仕上げだ。



「ここのカニは問題ないな。ひとまず戻って工作機械をアップグレードしたら、第3惑星のカニを狩ってみるか」

「マスターならもう余裕だと思いますよ」


 ハミングバードの操作にもかなり慣れたし、高速振動剣の間合いも掴んでいる。カニはダメージを与える前はほとんど動かないので、楽な相手になっていた。


「まあ、それでも全損させられた相手だし、リベンジしておかないとな」


 マンタを連れてステーションに戻ると、宇宙船のパーツ作製用工作機械をアップグレード開始。完成にはしばらく掛かるので、第3惑星を目指す。



 ゴブリンを粒子砲で蹴散らし、ゴブリンリーダーは高速振動剣で倒して安全を確保。詳細探査ポッドでレア鉱石の情報を集めて、その中からカニを呼ぶ石を見つける。


「マンタはこの辺の鉱石を掘って、自動帰還だな」

「はい、マスター」


 この辺の採掘に関するルーチンもこなれてきた。自動帰還を繰り返した事で、海賊にでも襲われない限りは問題なく帰ってくれる。



「さてカニだ」


 鉱石を剣で切り出すと、シザーズクラブが出現する。さっきのものより一回り大きな体が、次元の狭間から現れた。

 泡を吹きながらハサミを動かすと、次元断層が生み出され、それがハサミと共に動いて辺りを斬り裂いていく。


「いきなりやられたら戸惑うけど、動くと分かれば避けられるな」

「ハサミの可動範囲も限られてますしね」


 シオマネキの様に外から内へと水平に振られる次元断層を掻い潜り、粒子砲で牽制しながら回り込んでいけば、ハサミの可動範囲からは逃れられる。

 後は距離を詰めて剣を撃ち込む。一回り大きくなり、甲羅も相応に分厚くなっているようで、一瞬突き刺さる前に間があったが、コバンザメの様に弾かれるには至らず、そのまま刀身が突き立つ。

 そうなればスラスターで甲羅を切り開き、粒子砲を撃ち込んでいけば、一気に体力を削りきれて撃破できた。


「よしよし」

「シザーズクラブの甲羅が手に入りました」


 他次元生物のドロップ品として、多次元化合物を含むコアや素材が手に入る。シザーズクラブの場合は、その体表を覆う甲羅が手に入ったようだ。


「今までドロップしなかったのは、大きさなのかドロップ率なのか」

「マスターの運の悪さも微レ存」

「そんなに悪い方ではないんだがね」


 微粒子レベルで存在する……程度なら、単なるドロップ率と考えて良さそうだな。


「装甲として考えると、既存の物よりも軽いんだろうか?」

「どうでしょう。開発機で分析する事ができるはずです」


 なるほど、開発機がそのまま分析機も兼ねてくれるのか。更なる機械がいらないのは助かる。甲羅が軽い装甲となるなら、ハミングバードに使えそうだし、重くても強度があるならハンマーヘッドの方に付けられるかな。


「この鉱石も大きめだな」


 カニが守っていた石も普段より大きく、2つ分ありそうだった。宇宙船修理用もアップグレードすれば、一通りの工作機械がLv2にできた事になる。

 もうワンランク上げるには、新たな素材を探す必要があるだろう。

 第1ステーションから見て恒星の向こう側は、第2ステーションから見ると近場になっている。そこの探索はまだまだ甘いので、新たな鉱石が眠っている可能性は高い。


「確かハンマーヘッドで見つけたけど、怖くて手を出してない石もあったよな」

「第2惑星の公転軌道付近の採掘場ですね」

「他次元生物の反応もあったんだよな……第2ステーションから近いし行ってみるか」

「ただマスター、そろそろプレイ時間が予定を越えますよ」

「む、本当だ。新しい所に行くなら無理はできないな。今日はこの辺で休むとするよ」

「はい、マスター」


 以前に無理して判断能力が落ちて、全損させられた事を教訓に、シーナにプレイ時間を管理してもらうようにした。

 やはりしっかり楽しむためには、休息も大事なのだ。俺は後ろ髪を引かれながらも、しっかりと休む事にした。

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