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『フウカァ、助けて〜』


 俺の情けない要請への返事は、上空から降り注いだ光の帯だった。俺の目の前にいた3番機へと粒子砲の連撃が直撃して、エネルギーシールドの過負荷を引き起こし、丸裸にされた本体をそのまま一気に削り切る。

 轟沈する3番機の横をファルコン型戦闘機が通り過ぎて行った。


「何アレ、かっけぇ〜なぁ」

「マスターがダメージを与えていたからです」

「ホント、シーナはフウカに厳しいねぇ。何にせよこっちは助かったんだ、感謝しないとっ」


 1対3が2対2になったのだ。しかも助っ人はエース級、これで生還の可能性がグッと高まった。

 俺が1番機の方へと機首を向けて加速を開始すると、フウカは2番機の方へと向かってくれる。無傷の2番機を任せるのは心苦しいが、腕の差を考えれば順当だろう。

 戦闘距離はまだ粒子砲が有利な中距離のまま、離されないように加速して1番機を追う。機動力ではこちらが上回り、距離を保ちながら攻撃を開始。シールド負荷が溜まったところで、残ったミサイルも撃ち込み、きっちりと勝ちきれた。



 それから程なく2番機もフウカが撃破して、窮地を脱する事ができた。


名付ネームド海賊パイレーツB.トライベアの撃破を確認」

「ネームド?」

「はい、特別手配の掛かっている海賊で、撃破にボーナスが加算されます」

「なるほど、単なるザコじゃなくて、特別な個体だったって訳ね……危うく2日連続撃墜されるところだった……」

『助かったよ、フウカ』

『別に』


 素っ気ない返答も慣れてきた。


『フウカは亀とは戦った?』

『知らない』

『じゃあ、助けてくれたお礼に座標を送るよ』


 チームを組んで、ワニガメ型他次元生物の出現座標を転送した。


『俺はまだ戦ってない相手だから何とも言えないけど、ステーションから離れてる分、カニより強いかも』

『ん』


 短い返事と共に去っていくかと思いきや、何やら通信が入った。


「フレンド登録申請ですね」

『ゆーや、色々知ってそうだから、何か見つけたら教えて』

『あいあい、見つけたらな』


 過去一番の長さの言葉に、フレンド申請を受諾する。俺としては、助けてくれた恩が亀の情報だけじゃ釣り合わない気もしたので、今後の情報に期待してもらおう。

 ファルコン型で適当に飛ばすだけじゃ、他次元生物も見つけにくいだろうしな。


『それじゃ、バイバイ』

『おう、ホント助かったよ。また情報仕入れたら教えるから』

『ん』


 チームが解散されると、フウカは俺が教えた座標に早速向かうようだった。その姿を見送り、俺は少し離れた所に停泊しているマンタの元へと急いだ。




 あれからは何も起きないままにステーションへと帰還する事ができた。まあ、ネームドに何度も遭遇なんてしたくないがね。

 ステーションのそばまできたら、一度停泊してハンマーヘッドからハミングバードへの乗り換えを試してみた。

 腰の辺りに推進機を取り付けて、それを使ってハミングバードのコックピットへと向かう。無重力空間を飛ぶ体験は中々にスリルがある。加速しすぎるとそのまま船体にぶつかるし、回り始めると制動をかけないとずっと回り続けてしまう。

 宇宙方向へと押し出されると、何もない空間に吸い込まれる様で肝が冷えた。

 そんな失敗を繰り返して、何度かハミングバードとハンマーヘッドを往復して乗り換えを確認。素早くはないけど、乗り換えできるようにはなれた。


「やっぱり練習は大事だな」

「マスター、宇宙船の操縦は上手いのに、宇宙遊泳は苦手なんですね」

「安定感の差かなぁ。姿勢制御が難しかった」


 バランスを崩すと回転し始める体を静止させるのは、結構な慣れが必要そうだ。船に乗っててそこまで姿勢制御を乱すことはなかった。スラスター吹かすのと、個人用機動機器もさほど違いはなさそうなんだが不思議だ。


「無駄に手を動かし過ぎです」

「いやぁ、水中で姿勢制御する時は手だからねぇ」


 シーナには見えていないだろうが、足もジタバタさせている。無駄な力が制御に悪影響を与えているのだろう。



 ひとまずは乗り換える感覚を掴んだところで、格納庫へと入る。

 またもや傷だらけになってしまったハンマーヘッドを修理用ドックに入れる。先代のソードフィッシュといい、偵察艇で戦うからこうなると分かっていつつ、移動中は偵察艇のレーダーが欲しいので仕方ない。


「遠隔制御ユニットで偵察艇も操れたら楽なんだが」

「それにはもう少し高度な制御ユニットが必要ですね」

「という事で、そっちを作ってみるか」


 マンタから集めてきた制御に有利な緑色の鉱石を開発機にセットする。ここで鉱石の数を増やしてみることにした。

 グレードの高い石はまだ採掘できないのを数で補う形だ。工作機械のLvアップに伴い、同時に使用できる鉱石が増えているのに今気づいた。


「こういうのは教えてくれてもいいんじゃない?」

「すいません、考えが至りませんで……」


 AIの機転というのも学習内容なのか、こちらが指示した事には的確に応えてくれるが、自発的に何かをするというのは苦手らしい。

 まあ、先回りして色々教えられると、それに従ってプレイするようで、それはそれで気に食わないのだから人間は勝手なんだが。


 何はともあれ開発は結果が出るまで時間がかかる。そっちは機械に任せて、ステーション資材の納品を進め、次の作製分を予約してログアウト。




「もう昼過ぎてるなぁ」


 朝早くにログインしたのに、色々とやってるとあっという間に時間が過ぎている。熱中してると食事はおろか、トイレすら意識の外になるようだ。

 そんな事を思いつつ、トイレへと駆け込む。


 昼を食べて、掃除やら洗濯やら家事を済ませていると、夕飯時も近づいてくる。買い出しに出かけて、簡単な料理をしてからご飯に、お風呂と日常を過ごしていると休日が終わろうとしていた。


「枯れた独身生活か……」


 シーナに抉られた傷口が痛む……事もなく、楽しければそれもまた人生だなと思ってしまう。

 明日から1週間の準備が整ったところで、再度のログイン。




「制御装置はできた?」

「おかえりなさいませ、マスター。開発は終わっています」


 宇宙船のパーツ開発用工作機械により、開発が終わっていた制御装置を確認する。


「制御の数値が上がってるのは分かるけど、具体的にどこまで指示をだせるんだ?」

「はい。採掘時に、レアメタルを指定できるようになりました。あと帰還ルートの選択性能が上がったので、自動帰還も可能になりました」

「お、それは嬉しい誤算だな」

「ただレーダーの運用はまだ不可能です」

「仕方ないかぁ。もっといい鉱石を探したいけど、プレイヤーの腕も装備も上げないとな」


 偵察艇であるハンマーヘッドに採掘能力を付与したまでは良かったが、採掘する際に敵が出るとは想定してなかった。

 サポート機であるのは分かってるので、戦闘力を上げるなら戦闘機でというのも理解している。

 現時点では、その場でハミングバードに乗り換えるという方法を模索中だが、楽なのはレーダーによる選定も遠隔制御ユニットに任せられる事だろう。


 装備が足りない分は腕でカバーとかできたら良いんだが、フウカみたいな事はできない。


「どっちかというと、装備で腕をカバーする方だからなぁ」


 現状で更なる強化を目指すとしたら、ハンマーヘッドに付いている粒子砲をパーツ作製用工作機械のアップグレード版で作製する事だが、そうなるとカニを倒さなければならなくて、第3惑星のカニにはまだ勝てないと。

 近場の採掘場に再び鉱石がでるまでの時間も分からない。


 ショップには並んでないし、プレイヤーが中古にも流していない。そもそも採掘でしか出てこないので、掘り出すようなタイプなら自分で使うよなぁ。


「ならちょっとでも腕を上げるしかないかぁ」


 β時代から手を出してなかった撃破任務をやってみることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言]  β時代から手を出してなかった撃破任務をやってみることにした。 ↑ 主人公、STGにてSTGらしい任務をようやく受ける(´ω`) そこそこの上手さの平凡なプレイヤーが工夫して攻略を進めるのも…
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