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 海賊らしく黒塗りにされたやや丸みのある機体。棒状の長い武器が伸びているのは見て取れる。


「ベア型戦闘機、主武装はレールガンで長距離戦闘に長けた艦です」


 スペックデータがサブディスプレイに表示される。初期型戦闘機の1つで、狙撃タイプの戦闘機だ。ターゲットに先制攻撃を仕掛けて、一気に無力化してしまうのが狙いの機体。

 その分、機動力に劣るため、接近しての戦闘になると苦しい戦いになるだろう。


「やっぱり、ハミングバードの方が戦い易そうだなぁ」


 的が小さく加速性能に優れたハミングバードは、遠距離狙撃しにくい機体のはずだ。中型でサイズが大きめのハンマーヘッドは、しっかりと回避しながら接近しなければならない。

 レールガンは、実体弾を電磁誘導で飛ばす兵器だ。その弾速は宇宙空間の戦闘では遅い方に分類され、その代わり実体を持っている事でエネルギーシールドでは止めきれず、そのまま船体へと直撃する危険のある高威力となっていた。

 ハンマーヘッドのシールドでは止めることはできず、直撃すればただでは済まない。


「逃げたくなってきた」

「敵の第一射撃、来ます」


 レールガンの弾は色々と種類があるらしい。

 そのうちの1つ散弾は、1つの弾頭が無数に分かれる事で、広範囲に弾をばら撒くようになっている。

 一発一発の威力は落ちてしまうが、弾速の遅さを範囲でカバーするので先制を取るには向いている弾だ。


「早めに回避っと。あと、マンタ達はもう少し離れるように指示を出しといてくれ」

「はい、マスター」


 レールガンの弾は基本的に射程が無限だ。空気抵抗のない宇宙空間では減速する事がないので、何かにぶつかるまで威力を保ったまま直進していく。流れ弾でも致命的になりうる。戦場からできるだけ離れていてくれた方がいい。


 ハンマーヘッドを加速させながらレールガンの動向にも注目。弾速が遅いといっても距離を詰めれば、回避する余裕がなくなっていく。その時に参考になるのは、銃身の向きから伸びる予測線だ。

 銃口の正面にいなければ、弾が当たる事はない。


「他の2機は?」

「ベア型の背後に隠れていて姿を捉える事ができていません」


 初期型戦闘機の中でも最大サイズのベア型。その背後にいるものの姿を隠してしまっていた。まだ粒子砲の射程距離には入っておらず、相手の攻撃を避けつつ接近するしかない。

 その背後にいる敵が近距離対応である可能性は高かった。


「レールガンの弾が来ます!」

「なっ」


 慌てて回避を行う。先頭のベア型の射線には入っていなかったのに、直撃コースを弾が飛んできた。


「後ろの奴もレールガンを持ってるのか」

「直線的に飛ぶのは危険かと思います」


 やられ役のNPCのくせに、厄介な奴らだな。

 シーナの助言通り、ランダムに動きながら接近を続ける。余分な距離を動く分、射程内に入るのに時間が掛かるが、直撃弾を受ける危険を考えたら仕方ない。

 計5発の弾を回避しながら接近を続け、何とか粒子砲の射程距離へと突入。すぐに撃ち込むが、ベア型はエネルギーシールドの耐久性能も高め。2発では撃ち抜く事はできなかった。

 粒子砲は帯電粒子を発射する武器だが、距離を飛ぶうちにその収束力が減衰していき、射程ギリギリでは威力自体が落ちてしまう。もっと近づく必要はあった。


「2機目の姿を捉えました。こちらもベア型です」

「了解っ」


 距離を詰めるに連れて、先頭の機体の死角から外れる事が増えてくる。その時には銃口の向きによる予測線が見えるので、少し回避がしやすくなった。

 海賊はベア型のシールドを信じているのか、位置をほとんど変える事なく、攻撃を続けている。こちらは動きながらなのでどうしても射撃がぶれてしまう。


「ホント、下手だね、俺は」

「撃破任務にも出ることをお勧めします」


 俺は星系内を自由に飛べる自由出撃を続けているが、このゲームの基本プレイは目標を撃破すれば終わる撃破任務がメインになるだろう。

 明確に終わりがある分、短時間のプレイが可能で報酬ももらえるので効率が良いのも確かだ。


「でも俺、天邪鬼だから」

「ですよねー」


 そんな雑談を挟みつつ、距離を詰めながら攻撃していく。さすがのベア型にも徐々にダメージが蓄積している。そろそろレールガンより粒子砲の方が有利な距離になってきた。


「3機目の姿も確認。こちらもベア型です」

「むむ、レールガンは撃ってきてないよな」

「はい、まだ3機目からの攻撃は確認できていません」


 となると別の攻撃手段を持っていると見るべきか。未知の攻撃に備えつつ、こちらも攻めるしかない。

 粒子砲をできるだけ早く撃ち込んで行くものの、どうしても回避を優先するので連続では当てられない。互いの距離が詰まってきた時、相手に動きが出た。


「海賊船3機がこちらに向かって加速を開始しました」

「遠距離型が特攻か……3機目に何かあるんだろうな」


 とはいえここで背を向けて逃げたところで、それはそれでレールガンの餌食になるだけ。こちらも一気に加速するしかない。

 中型ミサイルを2発、先頭の機体へと撃ち込む。1発目は対空レーザーで撃ち落とされ、もう1発は命中するもその勢いを留める事はできずに、向かってきた。


 相手はこちらにレールガンを向けてくるので、極力回避を続けているが、やはり重なる地点は出てくる。その瞬間を狙って発砲してきた。

 レールガンから発射されるやいなや弾頭が分裂して広範囲を撃ち抜いてくる。ある程度備えてはいたので、範囲外へと退避。


 すると1機目の影に隠れて銃口を見せていなかった2機目が回避先へとレールガンを発射。慌てて制動を掛けて逆に移動。すると1機目の散弾に突っ込む形になってしまう。とはいえ、散弾は1発ごとのダメージは小さく、シールドもある程度防いでくれる。

 それよりも問題は……。


「来ると思ったよっ」


 1機目の影から3機目が飛び出してくる。そこへ向かってミサイルを発射。迎撃をする間もなく直撃するが、それだけで動きは止まらなかった。

 体当たりする勢いでそのまま突っ込んできた3機目のレールガンの先端には、見覚えのある棒状の武器が付いていた。


「粒子刺突槍かっ」


 遠距離用の戦闘機に白兵武器なんか付けるなよ。

 心の中で悪態を吐きつつ、全力で逃げるように舵をきる。それでも躱しきる事はできずに、腹から船尾に掛けてを削り取られた。

 尻にぶつけられた反動を利用してそのまま反転、飛び去ろうとする背後に粒子砲をお見舞いするが、まだ撃墜には至らない。偵察艇の火力では必殺とはいかなかった。


 幸いダメージは深刻ではなく、航行に支障はない。ただこちらはミサイル4発を使って残弾2、対して相手は1番目と3番目にはダメージが入っているが全機健在。

 至近距離は苦手なベア型とはいえ、その武装は必殺の威力を秘めるレールガン。


「ランダムな遭遇戦にしては、ハード過ぎませんかね……」


 何でハミングバード連れてきちゃったかとか、乗り換えを練習しとくべきだったとか、多少被弾してでも乗り換えていればとか、色々と後悔はよぎるがまだ負けた訳じゃない。

 ダメージを与えた奴から数を減らしていくしかないだろう。至近でミサイルを食らわせた3機目が1番倒しやすいか。


 既に反転は終わっているので、加速して3機目を追いかける。敵は俺を包囲するように展開しつつ、レールガンを撃ってくる。散弾で逃げ場をなくす方向での十字砲火。どうしてもダメージが蓄積していく。

 3機目も奇襲の為に使用していなかったレールガンを使い始めて、距離を保とうと逃げている。

 このままではジリ貧で負けか……。



『てつだおうか、ゆーや』

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― 新着の感想 ―
[一言] ファンタジー系あるあるの賊に襲われる商人(ユウヤ)を助ける主人公(フウカ)ですね。
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