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 ゴブリンを撃退した後、シザーズクラブにもリベンジしようかとも思ったが、まだ早いと思って保留。無理をしてはいけない、大事にいこう。

 しかし、最軽量の高機動戦闘機であるハミングバードに慣れすぎるというのもまずいだろうか。この機体は操作し易すぎる。

 このままこの機体を進化させるという手もないではないが、船体の大きさ的に限界は低いだろう。


「でも俺の好きな戦い方は、しっかり避けてからの攻撃だからなぁ。耐えながら攻撃は性に合わない」

「それを突き詰めるというのも楽しいと思いますよ」

「そうだな。勝手に限界を決めるよりは、まずは限界にぶつかる事を試してみよう」


 今後の方針を固めながら、ステーションへと帰還した。




 マンタの解体は無事に完了していて、格納庫にスペースができていた。改めて個人編隊を組み直す算段をつけなくてはいけない。

 シーナの管理能力で制御できるのは3機。直接の戦闘行為は行えず、自機に追随して動いて、簡単な作業はこなしてくれる。


「そうだ。開発用で制御装置のアップグレードをしておきたいな」

「どの鉱石を使用しますか?」

「やっぱり遠距離の物の方が性能が上がるのかね」

「禁則事項です」


 そりゃそうか。

 基本的にはレアリティによって性能が上がるのだろうが、同レアリティの中にも種類がある。ファンタジー系のゲームなら火や氷といった属性ごとに素材が変わったりした。

 SF世界ではどうだろうか。

 ただここで大事なのは、科学的根拠よりもゲームとしてのバランスだったりする。未知の金属を設定して、用途を割り振る場合に必要な素材が偏ってしまうとそれだけ集めれば良いという事になってしまう。

 色々な敵や採掘場所で集めてもらわないと、ゲームとしてのバランスが悪くなり、飽きが早くなってしまうだろう。


「という事で、分からないなら色々と作ろう」

「はい、マスター」


 同じ物を違う鉱石で作ってみることにした。




「なるほど、やっぱり補正が掛かるポイントが変わったね」

「はい、攻撃補正、回避補正、制御補正がそれぞれ違っています」

「今欲しいのは、素材の種別を選別しながら掘ってくれる精密な作業なので、制御補正を強化したい」


 赤色の鉱石が攻撃、青色の鉱石が回避、緑色の鉱石が制御となっていた。となれば、緑の鉱石を中心に、グレードを高めていけば、レアメタルを選別して掘れるようになるはずだ。


「緑の鉱石が掘れるのは、ここだな」


 恒星の向こう側にある第2惑星の公転軌道付近にある小惑星帯。鉱石の種類を集めるための試掘を行ってからは、採掘には行っていない。


「ひとまずは試作した制御ユニットを搭載して輸送機を動かそうか」


 運用のし易さからマンタを選んで購入。輸送機も徐々に値上がりしてきてはいるようだ。それでも戦闘機などに比べたら格段に安い。

 3機揃えてから、攻撃補正の付いた制御ユニットを積んだ機に粒子砲を追加装備させる。


「有事の際に自動帰還できるプログラムを組めたら良いんだけどなぁ」

「制御のパターンを学習させれば可能だと思われます」

「できるの? ならその方向で組んでおいてよ」

「まだ学習データが足りてないので、何度か出撃する必要はあります」

「安全なルートを検索する経験値を積ませないといけないって事ね。了解、頑張ろう」

「はい、マスター」


 修理の終わったハンマーヘッドへと乗り込み、マンタ3機を率いて採掘場に向かう事にした。



 いざ出発と思った時に、ふと思いつくことがあった。


「そういえば、このゲームって船外活動もできるんだっけ?」

「はい、可能です」

「じゃあ、宇宙船を乗り換えたりとかもできる?」

「少々お待ち下さい……はい、可能なようです。主に鹵獲した海賊船に乗り移る事ができます」


 なるほど、海賊船を無力化した時に、そっちに乗り換える事ができるのか。


「ただマンタの遠隔操作ユニットは、コックピット部分を載せ替える形になりますので、乗り換える事はできません」

「いや、ハミングバードをマンタに乗っけて運ぼうかなと」


 マンタはエイ型の輸送船で、お腹側にコンテナを抱えているが、背中側は平らで結構広い。小型機のハミングバードなら十分に乗せられる。

 宇宙空間では空気抵抗も無いので、重量が増える以外の問題はなく、マンタ型は出力に余裕のある輸送船だ。


「それは……はい、可能なようです」

「じゃあ、1回それも試してみよう」

「ただ、撃墜された場合に5機全てを失う危険がありますが」

「それは分かってる。今日はもう無理はしないよ」


 欲張ると良くない事は身にしみて理解した。ただ戦闘する事を考えると、戦闘機であるハミングバードがあるのは心強い。


「ではアタッチメントで固定します」




 改めてハミングバードも連れての出発だ。

 俺の乗るハンマーヘッドを先頭に、ハミングバードを乗せたマンタ、その後に2機のマンタの縦列で進んでいく。

 自動で帰還する際の経験を積ませる意味で、安全なルートを選びながら飛ぶ。


「でも安全な道って暇なんだよね」

「それは仕方ないです。それなら漫才のネタでも考えますか」

「そこでなんで漫才なんだ?」

「ネットの情報を検索すると、2人で楽しそうに会話している映像は漫才が多いので」


 楽しそうというか、そういうお仕事だからねぇ。


「楽しそうに話したいなら別に漫才じゃなくてもいいだろ。何か話のネタを振ってくれれば」

「では、マスターの恋バナを……」

「そんなものはない」


 何が悲しゅうてAIと恋バナしなきゃならんのだ。


「初恋の話とか、お勧めデートスポットとか……」

「無いったら無い」

「好みのタイプとか」

「好きになった人がタイプ」

「むむむ」


 何がしたいんだこのAIは。


「じゃあ、休日は何してますか」

「ゲーム」

「旅行とかの思い出は?」

「修学旅行が最後かな」

「マスター……」


 何とも悲しげな瞳で俺を見るシーナ。なぜAIに憐れまれなければならんのだ。


「そら、もうすぐ目的地だ」

「逃げましたね」


 いつもの心理攻撃以上に心を抉られた気分だが、まあ移動の暇さは緩和された……か。平日は仕事に追われ、休日は1日ゲーム。これでいいのかと思ったのは事実だが、今が楽しいというのは大事だろう。




 第2惑星の公転軌道に近いエリアの小惑星帯に到着。ここは比較的小さな小惑星が多い。目的となる鉱石にマーキングしていき、その小惑星をマンタに採掘させていく。

 以前はソードフィッシュで最低限の調査しかしてなかったが、ハンマーヘッドになってやっぱり新たな鉱石の反応もある。とはいえ、昨日の失敗に懲りている。手を出すことはなく、そこは避けて掘っていく。


「む、次元震か」


 小惑星帯の中を探査しながら飛んでいると、次元の歪が出ている箇所を見つけた。この小惑星帯にも他次元生物が住んでいるらしい。

 レーダーに映っている辺りを望遠してみるが、小惑星があるだけだ。まあ、次元の狭間に隠れているので宙域を見ただけでは何がいるのかは分からない。


「よし、帰ろう」

「え、帰るんですか」

「昨日の失敗を糧にしないとね」

「せっかくハミングバードまで連れてきたのに」

「それは運用テストだからね。自動帰還用の学習が終わるまでは自制するよ」


 ここは冒険する場面じゃない。マンタの採掘も十分なので、さっさと帰還する事にした。




 次元震のある場所は避けながらルートを学習させながら飛んでいく。


「新しいステーションができたらまた覚え直しになるのかね?」

「それは大丈夫です。この星系でのデータを集めているので、新しいステーションができてそちらに帰還するのも問題ありません」

「それは良かった。安全を確保するためとはいえ、何もないルートを飛ぶのは暇だからねぇ」


 そんなボヤキをシステムが聞いていたのか、アラートが鳴り響く。


「レーダーに感、3時方向より宇宙船3機」

「海賊か?」

「プレイヤーではありません、海賊だと思われます」

「う〜ん、自動帰還に新たな障害だな。何にせよ迎撃はしないとね」


 既にこちらを捕捉しているらしく、まっすぐに向かってきている。マンタ達を戦闘空域から離脱させつつ、ハンマーヘッドで迎え撃つ。


「できればハミングバードで迎撃したかったけど、乗り換える時間はないよね」

「だと思われます」


 マンタには少し離れた位置でシールドを厚めに張るように指示して、ハンマーヘッドで海賊船へと向かって加速させる。


「こんな所で2日連続全損とかしてらんないんだよ」


 まだ初期の星系、中型機に乗り換えてもいる。そんな劣勢にはならないと思いつつ、昨日の撃墜もあるし油断はできない。

 やがて光学センサーにも感があり、その姿が見えてきた。

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