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 ステーションに戻った俺は、即座に開発用工作機械を見る……が、まだ高速振動剣はできていなかった。

 仕方なくステーションの資材で出来上がっていた物を納品。ついでに生産コロニー用の設備もできていたので納品。


「マスター、今の納品で称号を獲得しました」

「……納品で解禁か。かっこよくはなさそうだな」

「屯田兵です」

「あー、そこまで悪くはないか。付け替えておこうか……ん〜、まだいいか」


 くう、シーナの悲しそうな表情に動かされるとかまだまだ弱い。漫才してるわけでもないのに、漫才師とか付けてるのは嫌なんだが。


「ちなみに、アンドロイド用称号はあるんだよな」

「サポートシステム用のものが存在します」

「その獲得方法は?」

「購入するか、行動で増えるかです」

「買えるのか」


 ショップを確認してみる。

 友達、相棒、愛人、秘書、パートナーなど、無難な物が並んでいる。


「高いな」

「マスターの愛を測るためです」

「ぐぬぬ……」


 宇宙船10機分くらいの価格が並んでいる。そんだけあったら格納庫を拡張するよなぁ。まあ、アンドロイドアバターもβで資金を持ち越せないから思い切って買えたのだ。現状で資金があったとしても、宇宙船80機分は払えないだろう。

 そう考えると入手難度が高すぎる気がする。プレイヤーが利用しないデータを作るとも思えない。β時代はこんなのもあるよと見せる意味で用意したかもしれないが、製品版では入手してもらうのが前提のはず。


「もしかして、アンドロイド自体作れたり?」

「禁則事項です」


 この答え方だとあるな。ただ工作機械で作れるかは不明、あったとしてもグレードLv2じゃ当然無理で、どれくらい上げれば作れるだろうか。

 素材も高価な物が必要そうだし、それで稼ごうとしても無理なんだろうな。

 どちらかというと、何らかの任務報酬とかの方がありえそうだ。その場合も全員が受け取れるようなのじゃなく、トップランカーのみとかになりそうな気もする。


「何にせよ、まだ遠そうだな」


 髪型や服装を変えれる様になるともっと楽しめるかもしれないな。


「そういえば、以前桃色のベストを着てたな。あれってどうしたの?」

「あれは称号と一緒に届いてました。マスターの分もありますよ?」

「それは初耳なんだが、どんなの?」

「着せますね」


 シーナが手元のタブレットを操作すると俺の服装が変わった。金色のラメが入ったスーツに、真っ赤なラメの蝶ネクタイ。


「どこのおぼっちゃま漫才師!?」

「すまんのぅ〜」

「桃色のベストとあってないじゃないか」

「マスターのは、成金王とミックスでしょうね」

「だと思うけど……桃色のベストは?」

「可愛いからじゃないですか」


 自分で言うかね。AIに羞恥心を期待するのが無理か。もうちょっと恥ずかしそうにしてくれると、ポイント高まるんだけどなぁ。


「とりあえず、プレイヤーのアバター用衣装もあるんだよな。となると作れる可能性もあるか」

「禁則事項です」


 この手の攻略情報はシーナに期待することはできない。その辺を見つけるのはゲームとしての楽しさだ。

 服飾関係の工作機械となれば、ステーション内設備になりそうなんだが、Lv2で出てきていない。

 いやまて、衣服の原料となる糸は農業に含まれるかもしれない。石油から作る化学繊維は別として、羊毛、絹、綿花などは生産コロニーで作られそうだ。


「となると、生産コロニー用工作機械をLvアップしたいな」


 ハンマーヘッドへと乗り込み、工作機械をアップグレードできる鉱石を探すために宇宙へと飛び出した。




「でも近場はさっき採ったばかりだからなぁ」

「反応ありません」


 やっぱり見つからない。となるともう少し先の採掘場で掘らないといけなくなる。第3惑星の輪は、まだハンマーヘッドでは探査できてないから、行ってみるか。午前中に倒したゴブリンはもう復活してるんだろうなぁ……。




「まあ、居るわな」


 ゴブリンを狩るのは小惑星帯の中で、機動性が大事になるのでハミングバードの方が戦い易い。中型偵察艇であるハンマーヘッドは向いてないのだが……。


「戦いにも慣れてきたし、火力ではハンマーヘッドのが上だからやれるか」


 午前中に追加武装したマンタも連れているし、出力が大きい中型機の分、ハンマーヘッドのシールドの耐久性能も高い。

 戦闘力自体はかなり上がっている。




「そう思っていたんだが……精神的に辛い」


 シールド性能が高いので、ゴブリンの投石にもほとんどダメージを受けない。しかし、避ける事ができないので、連続的に被弾を続ける。じりじりとシールド耐久度を示すゲージが減っていくのが、真綿で首を締められるように効いてくる。


「早く終わらせたいが……」


 自身が動き回れるハミングバードと違って、どうしてもワンテンポ動作が遅れる。元々射撃が得意ではない俺は、距離で命中精度を誤魔化していたのが良く分かった。

 マンタと合わせて4門の中口径粒子砲があるのに、結局撃ってるのは俺1人。耐久力の高い1体を倒すなら効果は高いんだろうが、一撃で倒せるゴブリン相手だとあまり砲門が増えた恩恵を感じない。

 全方位をバラバラに狙えるフレイアちゃんの様な広い視野があればもっと戦えるんだろうなぁ。


「無いものねだりしても仕方ない。できるだけ敵を固めて撃ち抜くしかないな」


 マンタには攻撃が集中しないように、位置を調整しながらゴブリンが固まって狙える所に集中砲火。何とか数を稼いでいく。


「リーダーが現れました」

「もう一気に行くぞっ」


 下手に動いても回避できないなら、耐久性能に任せて突っ込んだ方が、被害が抑えられる。攻撃こそ最大の防御なり。

 リーダーに向かって真っ直ぐ特攻をかけて、妨害にくるザコゴブリンを蹴散らしながら肉薄。リーダーへの射線が通った所で、中型ミサイルも一斉発射して一気に勝負を掛ける。

 リーダーは三角跳びで回避してくるが、中型ミサイルの爆発範囲で何とか誤魔化し、バランスを崩した所に粒子砲を連射して何とか仕留めた。


「ナイスツッコミでした」

「そのツッコミじゃねぇよ! しかも上手くないし……」


 満身創痍で敵を撃破したのに爽快感は感じない。俺にはタンクな戦い方は向いてないようだ。

 何はともあれ障害を排除したので、探査を開始する。するとやはりカニ付きの鉱石が結構見つかった。

 そして気づく。


「ミサイル使い切ってんじゃん」


 カニを撃破する手段を失っていた。フウカみたいに粒子砲を当て続ける技量はないので、ミサイルがないと倒せる気がしない。

 これならハミングバードで来てからハンマーヘッドで来ても一緒だったな……。

 ひとまずマンタの採掘が終わるのを待ってから、一旦ステーションに帰ることになった。




「うう、流石に時間が……でもせっかくゴブリン倒したしな」


 既に日付が変わっている。今からもう一度、第3惑星まで飛んで戦って採掘……中々ハードだぜ。


「マスターの読みが甘いからですね」

「スケジュール管理は秘書の仕事では?」

「攻略方法に関する指示は、禁則事項なので」


 シーナとやりとりしている間に、ハンマーヘッドの修理と補給が終わり、マンタの鉱石搬出も終わる。


「気合入れて行くか」



 第3惑星に到着し、確認していた鉱石を採掘。その鉱石へとヒートブラスターが届いたタイミングで、シザーズクラブが出てきた。

 フウカの攻略方法を参考に、次元断層の回避を最小限に留めて、攻撃時間を長く取れるように頑張ろう。


「んなっ」


 しかし、1つ忘れている事があった。最も近場のカニしか見てなかったことに。ステーションから離れる程に難易度が変わる。シザーズクラブも強さに変化があった。

 次元を切断して作り出した断層を振り回して来たのだ。そんなのありかと思った時には、直撃を受けていた。中型で耐久性能が上がっているハンマーヘッドのシールドが一気に半減させられた。

 中型とはいえ偵察艇、今まで乗ってきた船に比べれば堅いというだけで、戦闘に向いているわけでも無かった。

 そしてハサミは2本付いていて、連携した動きをしてくる。体勢を立て直す為に機体をスライドさせるが、反応がワンテンポ遅い。2本目の直撃を受ければシールドの残量はあとわずか。


「に、逃げるしかっ」


 とにかくカニから距離を取ろうと一気に離脱。周囲の確認が不十分だった。目の前に迫る小惑星に気づくのも遅れて、そのまま衝突。僅かに残っていたシールドも失われ、船体へのダメージに耐えきれず、視界が白く染まっていった。

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