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【STG】シューティングゲームで生産職 製品版  作者: 結城明日嘩
宇宙開拓時代(フロンティア)
197/200

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 BJがルークに止めを刺す。そう思った時、2機の間に黒い板が出現した。おそらくは航行船の装甲板だろう。


「まずい、逃げろ」

『くっ』


 BJも即座に反応し、接合していたコンテナ兼ブースターを切り離し、オパ2のみの軽い状態で反転。装甲板から距離を取ろうとする。

 が、必死に進もうとしているのに、進めない。逆に装甲板へと引っ張られていく。


『お姉さまっ』


 リンダの操る追加ブースターがオパ2へとドッキングして、更に引っ張りだそうとする。大型戦闘機を加速させる推力のあるブースター。徐々に装甲板から距離ができ始めた。


『あの板……?』

「あれは俺の想像が正しければ、重力場の正体だ」

『Ok, ok. Get serious...heroes.』


 ルークの声が聞こえ、BJが装甲板の重力から逃れようとしていた正面に、もう一枚装甲板が出現する。それと共に後方の装甲板が姿を隠せば、勢いよく正面の装甲板へと引き寄せられる結果となる。


『くそっ、これでは役た……』


 旋回して逃げようとはしていたが、間に合う事はなく装甲板へと引き寄せられて激突。小型戦闘機とブースターで加速しながら、航行船の装甲板に勢いよくぶつかれば、結果はわかりきっている。




 レーダーの情報を読み、想定通りの代物だと判断する。


「あれは多次元構造体をできる限り重ねた超重量の装甲板だ」


 多次元構造体は頑丈な分、重く設定されている。多次元構造が積み重なっているためらしい。本来なら運用するためにいかに軽く抑えるか、強度と重量とを天秤にかけて最適解を導き出すところだ。

 しかし、ルークは多次元構造体をより積み上げ、その質量を武器に変えたのだろう。


 ただそんな重たい物は宇宙空間でも動かない。不動のオブジェとして留まる事しかできない。

 それを次元空間に身を置くことで、好きな座標へと出現させる。多分、ルークの乗っている戦闘機をシーカーとして座標を割り出しているはずだ。


 3次元へと出現した超重量の物体。現代の元素記号では考えられない高次へと積み重なった質量は、点として出現しただけで他の物を引き寄せる。

 それがルークの持つ航行船の装甲板。

 あれは今までに出現させていた重力場の比ではない引力を発揮しているだろう。

 そしてそれは兵器ですらなく、船体の一部。次元空間での兵器の使用を禁止するという規制にも引っかからない。


「ただ仕組みがあれば対処のしようも出てくる」


 あの装甲板が移動できるのは、次元空間から部分だけ出しているからだ。イカと同様に本体が3次元空間に出てしまえば、再び次元空間に戻ることはできなくなり、その場に置かれた重量物としてしか機能しないだろう。


「本体を次元空間から引っ張り出す」


 そのための武器は次元断層剣だ。ただもう一つパーツが欲しい。次元空間での座標を割り出す為の何かだ。


「BJ、そろそろ復帰しただろ。現場に来るのは難しくても、次元空間の本体を探せないか?」

『不甲斐ない私にチャンスをくれるという訳だな。次元座標を追尾する海賊用探知機で探ってみよう』

「こっちで観測した次元震のデータを送る」

『了解だ』


 次元断層剣で次元空間の物を切るわけではなく、こちらの空間との接点を切り裂き、本体を強制的に現出させる。

 それができれば、もはや動けないただのオブジェだ。しかも勝手に弾を引きつけてくれる機能付き。レールガンの弾をばら撒いたら命中してくれる。


「という事で止めはシーナの役割だ。バリスタで仕留めろ」

「了解です、マスター!」

『私は?』

「奴を次元空間から引っ張り出すのに時間が必要だ。俺と一緒に時間を稼いでくれ」

『ん!』

「反撃の狼煙を上げようじゃないか」




 ルークの戦闘機自体はもう瀕死の状態で、まともに動けなくなっている。ただそれを守るように重力場を備えた装甲板が守っている状況だ。

 そして本体は次元空間にある事で、航行船の兵器は使用できない。ただ装甲板を出現させるだけで、相手にとっては脅威となる。

 下手に近づけば、BJの様に引っ張られ、最大5つの装甲板に翻弄されて、自らぶつかって大破となるだろう。


 しかし、脅威の目を持つフウカは、次元震の反応を見て距離を測り、捕まらない方向へと逃げられる。

 ガス惑星の乱気流を飛び回り、感覚を磨いた操縦技術は、この戦闘でも十分に真価を発揮した。


『What's happening!?』


 重力場を避け、時には足場としてスイングバイを発生させて加速する真紅のファルコンに、ルークも驚きの声を出す。

 その動きは多数の海賊を相手にしたことで、更に磨かれている。特に攻撃時の隙が減っていた。


『お姉さまの仇……』


 ルークを守るように展開する装甲板をかいくぐり、粒子砲を撃ち込み当てる。流石に連続で当て続ける事はできず、大型戦闘機のシールドは破れなかったが、肝を冷やすことはできただろう。

 そうやってルークの気をフウカが引いてくれている間に、俺は次元断層剣を撃ち込む座標を探っていく。


 フウカが誘発させる装甲板の出現からサンプルデータを集め、BJへと送って精度を高め、後はタイミングを計る。

 死角となる位置につき、粒子砲を撃ち込めば、それに反応したルークは装甲板を出して防いできた。本来ならシールドでも十分防げる中口径の粒子砲、しかもほっといても当たらないコースだった様に思う。

 それでも装甲板を出してしまったのは、フウカに対する焦りだろう。


 装甲板が近距離で出現すると引っ張られる。最軽量の機体を更に軽量化して、多重コアで上げた出力、スラスターをもってしてもその引力から抜け出せたかは分からない。

 ただ俺の目的は逃げることじゃない。


「これで詰みだ」


 俺は次元断層剣を起動して、自ら装甲板へと突進する。




 俺の振るった次元断層剣は装甲板から繋がる次元の歪みを切り開き、ルークの想定以上に装甲板を3次元空間へと引っ張り出す。

 出して引っ込める、そんな不自然な動きは、不安定な空間を利用して行われていると予想した俺は、装甲板の均衡状態を崩すことで、傷口を大きくできると考えた。


 実際、想定以上に現出してしまった装甲板に引っ張られるように、次元空間から災厄の本体が姿を現す。

 その巨大な航行船の全貌を見る前に、俺は装甲板へと吸い込まれて激突した。




「さてと」


 シュネーの艦橋へと死に戻りした俺は、状況を確認する。正面にあるのはルークの航行船。それは骨だけの傘といった姿だ。

 細長い棒から何本も腕が伸び、その先端に装甲板が付いている。ただ本体の方はそれほど重装甲というわけではなく、放射状に伸びる腕を支えているだけだ。


 腕の先の装甲板は既に固定されて、それが錨となって本体も縫い止められ動けない……訳はないか。

 装甲を切り離し、その場に置いて骨の腕をたたんでいく。軸の部分が100m、腕がそれぞれ70mと言ったところか。

 ルークの戦闘機は既に見えないから、航行船に回収させたのだろう。


 フウカは航行船の周囲を飛んで、攻撃できるポイントを探しているようだ。シーナもシュネーからコンドルを出撃させて、攻撃の機会を伺っている。

 航行船なのでシールドはそれなりに強固。フウカのファルコンはメイン武装が中口径粒子砲。カスタムで攻撃力増加はしてるだろうが、航行船のシールドを抜ける性能はないはず。他にもミサイルなどはあるだろうが、やはり航行船相手では役に立たないだろう。

 シールドの内側に入ったとしても、装甲に阻まれる可能性が高い。


 となれば当初の予定通り、コンドルのバリスタを撃ち込むのが必要。ただ命中精度は俺並。当てるにはマーカーを付けないといけない。

 ファルコンにマーカーを持たせる事ができればよかったが、シュネーには工作機械は積んでないので、突貫でつける事はできなかった。


「V2で突撃(アサルト)するしかないか」


 至近距離仕様のハミングバードであるV2は武装が2本の剣のみというシューティングゲームを真っ向から否定するような機体。

 普段のハミングバードから更に粒子砲などを外して、考えうる最高まで機動力を上げている。その分、ピーキーでお釣りが出ないように操作するのが難しい。

 だがそこに浪漫があるのだ。

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