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【STG】シューティングゲームで生産職 製品版  作者: 結城明日嘩
宇宙開拓時代(フロンティア)
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「散れ散れーい」


 拡散粒子砲をゴブリンの群れへと放っていく。ドローンをハミングバードの斜め前方に2つ、後方に1つを配してそれに誘導されるままに粒子砲を撃ち込む、簡単なお仕事だった。

 ラケット型ドローンへと中口径粒子砲を撃ち込むと、16本ほどの小口径粒子砲へと分散する。耐久力のないゴブリンなら問題なく撃ち抜ける。


「これ、普通の戦闘でも使えそうだな」


 威力は減じるものの、範囲は拡散するので命中率は上がる。中口径の下手な鉄砲は数撃っても当たらないが、拡散粒子砲なら一気に命中率は上がる。

 もちろん、当たっても大したダメージにはならないが、ゼロと小ダメージの差は大きい。


「あと受ける側からすると、視界も奪われるよな」


 視界が幾筋もの粒子砲に覆われる状況は、目くらましにも使えるだろう。そしてドローンとの距離で拡散率を変える事ができるので、目くらましに使うなら手前で拡散してやる事もできるし、威力を出そうとすれば敵の近くで拡散して、複数の弾が当たるようにもできる。

 いっそラケットのガット部分の電流を切ってしまえば、中口径粒子砲そのままで素通しする事もできるはずだ。


「何気に一番嬉しいのは、敵の近くに誘導ポイントを作れる事か」


 射撃が下手な俺にとって、ドローンに誘導して貰える事で、敵を狙いやすくなっている。もちろん、ドローンがついていけない高速移動するような敵だと無理だが、ゴブリン程度なら十分に狙えた。


「これ、ファルコン達も使えば、カクタス要らないんじゃないか」

「さすがにキャパオーバーですよ。ファルコン3機でも一杯一杯なのに、更にドローンの制御は無理です」


 それじゃあ仕方ないな……いや、ファルコンが3機が問題であれば、1機に減らせばいいんじゃないか。下手な粒子砲よりも、当たる小口径の方が嬉しい。


「じゃあ、ファルコンを1機にしてそれに拡散用ドローンをつけるのはできるか?」

「それなら制御としては楽になりますね」

「その方向で調整してみよう。まずはボスを撃破してからだが」


 ザコを一定数倒すと、ボスゴブリンが出てくる。ゴブリンに似合わない豪華な鎧を身にまとったジェネラル。大きな剣と盾を持ち、こちらに向かって吠える。真空なので音はないけど。




 ジェネラルは弾幕を張ってくるので、拡散用ドローンにも当たる危険があるので収容。単機で接近していく。

 3次元空間での弾幕シューティングは、結構難しい。弾の動きで距離感を掴むのが難しいのだ。


 シーナに距離ごとに色を変えてもらって、近くに来たものを注意しながら避けていき、距離を詰めていく。

 ちゃんと隙間を用意してくれているのは、ありがたい。その合間を縫って接近していき、至近距離へと近づくとジェネラルの動きも変わる。盾を正面に構え、防御をしながら剣を振るってくるようになった。

 正面を避けるように回りこもうとするが、ジェネラルの旋回速度はそれなりに速い。粒子砲では隙をつけそうにない。


「あの盾も上物っぽいよな」


 粒子砲にもびくともしない盾はやはり多次元構造体であろう。その構造は用途に応じて色々なパターンを持っているらしい。単に硬いだけのもの、通電性を上げたもの、火に強いもの。

 レア鉱石の次にスペックアップしていくには、この多次元構造を解明していくのが必要だろう。


「そのためにはサンプルを増やしたいなっと」


 高速振動剣も盾でしっかりと受け止められる。次元断層剣でなければ突破はできないが、盾を斬れても鎧でまた止められる。次元断層を発生させるにはエネルギーが大量に必要なので、盾から鎧までを一気に断つまでは出力が足りていなかった。

 その隙間を埋めるべく、新兵器を投入する。

 前回と同様に高速振動剣を受け止め弾いたジェネラルに対して、ドローンを2機撃ち出す。それらはジェネラルの左右に分かれて飛んでいく。ジェネラルも一瞬身構えたが、当たらないと思って警戒を解く。しかし、その間にはキラリと光るものがあった。


「あー、すり抜ける……ね」


 ドローン間に張られた単分子ワイヤーは、ジェネラルの中を何事もなく通り過ぎていった。

 単分子ワイヤーとは分子一個分の厚みしかない極薄の刃物として、SF世界ではよく出てくる。分子の隙間に入り込むので防御不能の攻撃とされるのだが、鋭利過ぎる刃物で斬った場合、その断面をくっつけたら再びくっつくというのは知られた話。

 ましてや単分子の厚みしか斬らないとなれば、分子間の電気的な引力が働き、何事もなかったかのように振る舞う事になるだろう。

 そこはBJもぽつりとボヤいていたので想定内だ。


 では斬れるということを原子、分子のレベルで見た時に、どういう事になるのか。そもそも分子って何でくっついているのか。

 理科の授業でならったと思うが、原子というのは電気的にプラスやマイナスに偏っていて、それを安定させるために他の原子とくっつき、電気的に安定した状態になろうとする。

 これは2つの原子の核、陽子の回りを飛ぶ電子を共有する形で保っているわけだ。

 その共有する電子が行き来できない距離を隔ててしまうと分子結合の崩壊を招くことができ、結果切断が成功する……のかもしれない。


 そして電子を制御する件に関しては、最近やったばかりだ。粒子砲を分割、拡散させた様に単分子ワイヤーに電流を流してやればよい。

 この辺り、現実の研究でも演算装置の回路に単分子ワイヤーを使って電流を流す研究が行われ、より微細な回路の構築に成功しているらしい。

 その研究が実を結べば、さらに演算速度が上がって、VR技術の発展にも活かされるのだろう。


 粒子砲を撃ちながらジェネラルの気を引きつつ、単分子ワイヤードローンを帰還させる。今度はワイヤー間に電流を流しつつの切断だが果たして……。


「ぬおっ、ダメかよ」


 ドローンが帰ってきたが、ジェネラルは健在だった。上手く切断できなかったらしい。多次元構造体は、3次元で切断できてもダメって事か。


 そう思っていると、ジェネラルの動きがおかしくなっているのに気づく。攻撃の頻度が下がっていて、弾幕に乱れが生じていた。

 鎧や盾は斬れなかったが、中にはダメージが入っていたと言うことだろうか。


 命中しやすい様に胴の部分にワイヤーを通したが、腕を狙ってみることにした。すると盾を持つ手を切り離すことに成功。剣の方も同様に切断できる。


「なんか、すまんな……」


 両手を失い、攻撃も防御もできなくなったジェネラルに対して、次元断層剣で引導を渡してやる。

 そして部位破壊報酬として、盾と剣をゲットした。これを解析すれば、更に多次元構造体のサンプルを増やせそうだ。




 それからパラス・アテナに戻り、ファルコンの武装を変更。拡散用ドローンを積んで、中口径粒子砲を3門に増やしてシーナに操縦してもらう。


「ははは、ゴミリンがゴブのようだ!」

「もうツッコミようがないよ……」


 敵中に突っ込んで、3方向へと拡散粒子砲を放つシーナは、次々にゴブリンを撃破していく。カクタスの方が命中精度は高いが、殲滅速度は拡散粒子砲の方が早そうだ。

 そしてファルコン1機に専念し始めたシーナの操縦は、進歩しているのを感じられた。ジェネラルの弾幕の中、ザコゴブリンを掃除していくだけのテクニックを見せてくれていた。


 これなら相棒として肩を並べて戦うこともできそうだ。きっちりと回避できるなら、ファルコンをカスタマイズして性能を上げることもできる。今までは被弾率が高くて、修理前提だったから、思い切ったカスタムパーツを付けられなかったからな。

 拡散粒子砲をベースに、蜃気楼ミラージュドローンとか状況に応じて変化させつつ戦えれば、戦術の幅が広がるだろう。


「極小コアも結構稼げたし、帰って改造だな」

「だなだな〜」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴミリン死すべし慈悲は無い。 水圧カッターならぬ、単分子カッター
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