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【STG】シューティングゲームで生産職 製品版  作者: 結城明日嘩
宇宙開拓時代(フロンティア)
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 BJの秘密ではなくなった基地を訪問した俺は、一つ思い出した事があった。鳥籠を形成している鋼線は、粒子砲を受けてもビクともしない、戦闘機の体当たりも止められる強度を持っていたはずだ。

 今の拡散攻撃用ドローンに流用できれば、数発しか耐えられない問題が解決するはずだ。


「鳥籠の鋼線は、多次元構造を持ってるよな」

「ああ、そうだね」

「なら一部を貰って帰れば、解析できるな」

「ほう、あれを斬れる自信があるのか。普段使っている剣では斬れないぞ?」

「多分、大丈夫なはずだ。コバンザメのコバンを斬れたからな」

「ふむ……」


 BJもコバンザメと戦った事はありそうだが、クジラ戦の時点で海賊として暴れていたので、まともにはやりあってないのだろう。反応は微妙な感じだ。


「防衛機構に穴を開けられるのは、修理が面倒だから、鋼線のレシピを教えても良いのだが、その斬る所は見ておきたいか……こちらでネットを用意するから、それを斬ってくれるか」

「まあ、レシピを奪う訳だから、それくらいはサービスするかな」

「じゃあ、準備をするから少し時間をくれ」


 BJはそう言い置くと部屋を出ていった。工作機械へと向かったのだろう。


「何だか不思議な関係です」


 俺達のやり取りを見ていたリンダがやや困惑した様子で呟いた。


「まあゲームだからな。本気で殺し合うような事はないし、恨みつらみよりは利用し合うほうが合理的だ」

「人間の感情はそう簡単に割り切れるものではないと、データベースにはあるのですが」

「俺やBJみたいなのはちょっと尺度の外にいるかもしれないが、その辺はデータ取って分析してくれ」

「はい、ありがとうございます」


 BJとの付き合い方を見出してほっとしているのであろうリンダは、柔らかな笑みを返してくれる。まさに天使である。

 その後、準備ができたらしいBJに呼び出され、ハミングバードで出撃する。




 ドローンの間に張られた鳥籠のネットに対して、俺はまず高速振動剣を使用してみる。多次元構造は熱にも強いのか、溶断する事を許さない。


「どうだい、無理だろう。どうしてもと頭を下げるなら、レシピを教えてあげなくもないよ」

「いやいや、今のは前の武装で試しただけ。本番はこれからだよ」


 俺は続いて次元断層剣を取り出してネットへと突き入れる。高速振動剣は受け止めたネットだが、多次元までを歪め、切断する次元断層を止める事はできなかった。

 推進機スラスターで動かして斬っていっても問題なく断ち切れる。


「マスター、後ろ後ろ」


 その声にレーダーを確認すると、2機のドローンが接近してきていた。ハミングバードの左右を通り過ぎる様な軌道で飛んでくるソレ。前にコーラルボールの中で見た動きだ。

 俺は次元断層剣を引き戻して、その間へと切り込ませる。

 何とか次元断層が継続している間に、何かを切断する事ができたようだ。何事もなく左右をドローンが過ぎていく。


「さすが私のフィアンセだ。単分子ワイヤーも切断してみせるか。それも鳥籠ネットの応用で作れる、ぜひ利用してくれ」

「サプライズプレゼントと言うには物騒だな」


 今のデモンストレーションも一部始終撮影されているだろうから、次元断層の仕組みもすぐに解明されるだろう。

 そうなれば、その持続時間も分かるだろうから、今のままだと追加ドローンを遅らせられて時間差で攻められそうだ。

 さらなる改良が必要だな。




「それではシーナくんに、鳥籠ネットのレシピを渡しておくよ」

「ああ、頼む」


 そんな俺達の様子をリンダが真剣な表情で観察していて、少し恥ずかしい。まあ彼女がBJとのやり取りしていく上で、助けになるなら我慢するしかないか。


「しかし、レシピが必要になるという事は、開発が進んでいるという事だな」

「まあ、全く進まない所は脱したかな。難易度は上がっているが、細かく設定を詰めればできるようだ」

「なるほど、君に遅れないためには、私も本腰を入れなければならないようだ」


「BJも開発に詰まる事はあるのか?」

「それは当然だ。例えばマルチドローンに射撃兵器を取り付けてみたら、数日後には照準精度を落とされたりとかな」


 それは俺が遠隔制御ユニットで撃破任務を荒らしてしまった辺りの話か。


「本格的に使用しようかと思った矢先だったから、計画の変更を余儀なくされた」

「下方修正は時間の問題だったな」


 BJが先にドローンでPKを繰り返していたら、その時点で下方修正されていた事だろう。一人でもたちの悪いBJが幾つもの必中する砲門を伴ってやってきたら、多少の軍勢であろうと殲滅されそうだ。


「他にはEMPとかだな」

「核を利用したEMPは、大気がないと効果が出ないとか?」

「いや、そっちじゃなく、直接電磁波を浴びせる形で実装した」


 EMPの原理としては、過度な電磁波を浴びせる事で電子回路内に過剰な電流を流すことで、回路を焼ききってしまう事で効果を発揮する。

 核を高高度で爆発させる事により、大気との相互作用によって電磁波をばら撒く形が、現在の地球でテストされているらしい。

 しかし、電磁波を出せばよいなら、ヒートブラスターの様に照射するスタイルもありなのだろう。


「開発当初は、回路を焼ききってレーダー諸々を破壊することに成功したんだが、一方的になるのは望ましくなかったのか、エネルギーシールドで遮断されるようになってしまったな」

「なるほど……」

「さっきの単分子ワイヤーも、当初は強度不足ですぐに斬れてしまったり、単に相手をすり抜けるだけに終わったり、切断能力を持たせるまでは、それなりに苦労したんだぞ」


 その当時の情景が浮かんだのか、苦々しい表情を浮かべる。


「でもやりきった時の喜びの方が大きいだろ」

「まあね。初めて披露した時の相手の動揺を見るのは愉悦だよ」

「……反応を見るための海賊行為なのか」

「COMの操る他次元生物ではリアクションは見れないからな」

「それなら対人戦とかでもいいんじゃないか」

「あれも意外とルールが細かくて、新兵器を試すのには向かないのだよ」


 それで襲われた方にはいい迷惑なんだがね。


「これでも相手は選んでいるよ。弱者をいじめる様な真似はしない」

「Foodsが絡まれてたのもその一環か。でも彼らも対人戦ではそこまで上位でもなかったはずだろ」

「いや、特務曹長はやはり凄腕のプレイヤーだよ。距離を詰めるのに苦労させられる。まあ、その分接近戦には難があるようだがね」

「今ならフウカに鍛えられたチームがあるから簡単にはいかないぞ」

「ほう、それはいい事を聞いた」


 しまった、藪蛇やぶへびだったか。BJは好戦的な表情を浮かべる。色々と理屈はこねてるが、戦闘狂バトルジャンキーであるのも事実だろう。


「そもそも新星系探索に主軸が移って、海賊行為はできないと聞いたが?」

「その辺は海外の海賊連中が新ツールを開発している。安穏と探索を楽しめるのもいつまでかな」

「海外の情報までさらってるのか」

「拡張キットから海外サーバーとも繋がったんだ。こちらにその気がなくても向こうはやってくるぞ。特に海外では取得されなかった大型コアを入手していたから、日本サーバーは難易度がゆるいと思われているからな」

「それってお前のせいじゃないか」

「誰かさんのレイドボスへの特攻動画で、戦艦スゲーを起点として、大型コア欲しいのに取れないじゃないか、日本じゃ取れるのはおかしい、難易度が違うんじゃないかという流れらしいぞ」


 まあ遅かれ早かれ海外勢に狙われる可能性は合ったということだな。俺は悪くない。


「しかし、新ツールってなんぞ?」

「次元空間内の痕跡をたどって追跡できるツールらしい。海賊系プレイヤー用の攻略サイトで検証が進められている」

「痕跡を消そうにも何が残っているのかも分からなければ、対策しようがないな」

「正直な話、日本の海賊連中が対戦慣れした海外勢に襲われたら、一気に押し込まれる可能性が高い。しかし、海賊間の連携は誰かさんのせいでズタボロだ」

「アレはお前から逃げるのに必死で……それこそ海賊の王がまとめるしかないんじゃないか」

「いやぁ、私こそ彼らに嫌われているからな、HAHAHA」


 根本的にぼっちプレイヤーが何とかできる問題じゃないか。ただでさえ艦隊戦の反物質騒動でログイン率が落ちている所に、海外海賊が日本サーバーに流入、蹂躙してくるとなると、一気に客離れが起こる危険がある。

 玉藻御前案件だろうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは今回も楽しく読ませて頂きました。 うん、洋美少女キャラ登場フラグですねw 海賊側かPKK側か勝手に妄想して楽しみにして待ってます。 (あくまで勝手な妄想ですのでおきになさらず)
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