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【STG】シューティングゲームで生産職 製品版  作者: 結城明日嘩
宇宙開拓時代(フロンティア)
138/200

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『こっち来んじゃねーよ』

「つれないなぁ、仲良くやろうぜ」


 多数の熱源探知式ミサイルを引き連れた俺は、海賊の一機へと近づいていく。熱源探知式は、戦闘機の発する熱を目標に追いかけていくので、近くに同じ様な熱量の物体があれば、そちらにターゲットを移す事ができる。

 なので海賊船へと近づけていけば、全部は無理でも幾つかはなすりつけられるだろう。


 もちろん海賊側もそれを受け取るつもりはないので、俺に向かって攻撃してくる。それをハミングバードの機動力と蜃気楼システムを駆使しながら直撃を回避。するとその弾は後方から迫るミサイルも迎撃してくれるので、今のところ直撃を受けそうな場面はない。


 元々ミサイルの機動力ではハミングバードの機動力にはついてこれないので、数が整理できればそこまで怖い訳じゃなかった。


 ただ海賊側もそれに気づき始め、俺を相手にする機を減らし、リーンフォースへと向かう数を増やしていく。


「マスター、ヘルプミ〜」

「こっちも一杯一杯だよ」


 撃破はされないが、こちらも倒すことはできていない。そうなるとリーンフォースの近くに集まる海賊機は増えていく。

 シールドドローンでダメージを軽減しているが、残数がどんどん減っている。順次生産しているが減るペースの方が早いので、限界は近いだろう。


「いよいよ必殺ボタンを使う時が来たのか……」

『待たせました、霧島さんっ』


 覚悟を決めそうになったタイミングで、Foods連合のエースチームが到着してくれた。先のレイド以降も海賊狩りに参加して、対人スキルを磨いている彼らは、ここに集まっている海賊連中よりはかなり上になっていた。

 そして、その中には赤いファルコンも混ざっている事だろう。


 フウカは先のレイドで海賊側としてプレイヤーの妨害を行い、突入チームの何人かを撃破している。普通ならレッドネームとなって、名実共に海賊の仲間入りするはずだったが、撃破された側のプレイヤーの要望により、猶予が与えられている。

 限りなく赤に近いオレンジネームで、プレイヤー側を一機でも撃破すれば、即レッドネームとなる状況。それを通常のホワイトカラーに戻すためには、海賊船を撃破してポイントを貯める必要があった。

 そのため、レイド以降は海賊狩りとしてFoods連合のエースチームと共に行動しているはずだ。


 俺とはレイド以降会ってもいない状況。

 俺が忙しかったのもあるが、以前なら関係なく来てただろうし、彼女なりに気まずさがあるのかもしれない。まあFoodsの面々しかり、一緒に遊べる仲間ができたのは良いことだろう。

 今回の海賊襲撃はポイントを稼ぐチャンスなので、どんどん倒してホワイトネームを目指して欲しい。




 リーンフォースは、海賊の接近が分かってからゲート方向に移動を開始しているが、一番恒星に近い第一惑星の公転軌道にいたので、時間がかかっている。

 ゲートからやってくる仲間と合流するまで、なんとか耐えないといけない。コーラルボールへと突っ込んだ時の様な、船体を軽くして速度を上げるといった手法は使えない。

 何とか今ある戦力で迎撃していくのだ。


「俺はV2突撃型で出る。シーナはカクタスを収容、ジャマー飛ばして花火を打ち上げてくれ」

「はい、マスター」


 COMシーナの射撃では海賊を落とすことは叶わなかった。それなら下手にミサイルを撃ち続けるよりも、防御に徹する事にする。

 レーダー障害を起こすジャマーを飛ばして、花火と称されるフレア弾を使っていく。これは熱源となって、赤外線探知を誤認させる囮として作用する。また発光も激しいので、目くらましの要素もあった。

 これでこちらからも攻撃しにくくなるが、相手からの攻撃も抑えられる……といいなぁ。




 ハミングバードV2の突撃型は、コーラルボール内で使用したハミングバードに、外部兵装を合体させた機体だ。近接戦に備えて拡散型のレールガンをメインに火力を持たせている。

 その分、機動力は削がれてしまうので、防御面は弱くなるが、シールドドローンを連れて出られる空母の側なら戦えるだろう。


「と、思ったんだが、中々だなっ」


 レールガンを放つが、海賊船にするりと避けられてしまう。元々射撃が下手な上に、レーダーによるロックオンも使えない状況。拡散弾で範囲を多少広げたところで、そう易々と直撃を食らってくれるPK達じゃない。

 そして外装を付けたことによる機動力の低下で、相手に近づくのも難しくなっていた。


「やっぱ、試作の突撃型じゃむーりー」


 合体を解除してV2で海賊へと迫る。突撃型付きの速度に慣れていた所に、急加速したことで海賊船の一機に肉薄。剣によってダメージを与える事に成功した。一撃必殺とまではいかなかったが、戦闘不能には追い込めた。

 しかし、こちらが速くなったとみるや、包囲を大きくして遠距離戦を始めるあたり、海賊達も対人戦に慣れている。V2の機動力とシールドドローンでこちらも落とされる事はないが、相手に近づく事もできない。

 至近兵装しかないV2では手も足も出ない状態だ。

 あとはエースチームの奮戦に期待するしかないだろう。




 膠着状態に陥り、援軍と合流できそうな雰囲気が出てきた時、リーンフォースの船首部分が火球に包まれた。


「何っ!?」

『核の炎を味わえっ』


 どうやら核融合か核分裂か分からないが、強力なミサイルが打ち込まれた様だ。ジャマーで相手のレーダーを潰したつもりが、相手の大型ミサイルの接近を許す結果になってしまった。


「被害状況は?」

「生産区画が消滅、貯蔵庫、倉庫に損傷。内容物が流出。待機中のファルコンが大破です」

「ハイドロジェンは無事か」

「はい、後方格納庫にありましたので」

「じゃあ今から戻るから、最後の手段の準備を」

「了解です、マスター……」


 空母を守る理由の大半は既に失われた。大型コアが奪われるくらいなら、必殺ボタンを使うのに躊躇ためらいはない。

 俺は海賊の攻撃をあえて被弾。撃破されることで空母の格納庫へと戻る。格納庫の前半分がなくなり、宇宙が見える状況に何とも言えない気持ちになるが、仕方ない。守れる力もないのに過剰な財産を持ってしまったという事だろう。


「ハイドロジェンで出たら、後はスイッチを押してくれ」

「ええっ、私が押すんですか?」

「ちょっと自分で沈める勇気がでないわ。それでタイミングを逸して、海賊に奪われるのは避けたい」

「……了解です、マスター」


 爆発により近くのドローンも破壊されたのだろう。レーダーには抗戦能力を失ったリーンフォースへと接近してくる海賊が多数。

 囲まれきる前にハイドロジェンを発進させる。

 格納庫の亀裂というか開口部から飛び出すと、周囲の海賊達から攻撃を受けるが、シールドドローンと持ち前の加速で一気に駆け抜ける。


「よし、いいぞ」

「それでは……」

「うぉっ、コックピットにいたのか」

「だって空母に残ったらアンドロイドアバターが壊れちゃうじゃないですか」


 狭いコックピットの中でもぞもぞとタブレットを取り出し、ドクロが描かれたボタンを表示する。


「本当に私が押すんですか?」

「ああ、やってくれ」

「それでは〜ポチッとな」

『お仕置きだべ〜』


 タブレットからお約束の声が流れると共に、大型コアに仕組まれたオーバーロード装置が作動。カニのハサミを解析したついでに、次元断層発生装置の試作版を大型コアに付けていた。

 元々コアが破壊される時には大きな衝撃が生じるが、それを増幅して次元レベルで影響を与える爆発になっていく。


『な、何した、成金王〜!』


 周囲に接近していた海賊連中をまとめて次元の穴へと送り込み、リーンフォースJrは短い稼働を終えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回の結末について他プレイヤー達がどう思うのか気になるところ 擁護されるのか、ざまぁで終わるのか 新コンテンツへの進出も遅れそうだし、今後の展開に期待
[一言] 汚ねえ花火があがりましたねえ(ブラックホールの色的な意味で) さて、しかしこれは他の連合とかを刺激しそうですねえ なんせ一番奪いやすい成金王のリーンフォースで奪い損ねた以上、次に狙われるのは…
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