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 小魚型他次元生物の群れの中、BJが配置したジャマーによりできた空間で対峙する。相手はホーク型をベースにした中型戦闘機のカスタム機。フウカと違って、戦闘機部分にマルチドローンを積んでいたようだ。

 武装は腹の下にあるレールガンと、マルチドローン。積載量を考えると、ミサイルは積んでないだろう。


 こちらはハミングバードVer2、高速振動剣に特化したといえば聞こえはいいが、武装はそれだけで接近しないと戦えない機体だ。

 機動力としてもハミングバードと大差なく、間合いを詰めるには何らかの手がないと、レールガンに撃たれて終わだろう。

 蜃気楼システムは搭載してあるものの、相手もまた使える状態。こちらの使い方はフウカが教えてるとなると、相手に追加で策がないか不安になってくる。


『ヒット、行け、チャージ』


 先に動いたのはBJだった。ハミングバードの右後方、他次元生物用のジャマーとは別にその場に置いてあったであろうマルチドローンの一機が、こちらへと突進してくる。

 それをサイドミラーの様に表示しているウィンドウで確認した俺は、人差し指を振ってマニュアルモードで切り捨てる。

 サイドミラーウィンドウに気を取られそうなタイミングで、視界の隅で何かが動くのを感じた。それを確認する前に、左の指先でもう一本の剣を操作。

 下から迫ってきていたマルチドローンを打ち落とした。

 それと同時に機体をスライド、元いた空間をレールガンの弾が横切っていった。次弾の前に間合いを詰めようとスロットルに力をいれたが、レールガンの銃口が、ピタリとこちらに合っているのを見て、思いとどまる。



『それだけ器用に戦えて、戦闘が苦手と言われても納得はできないな』

「精神的に疲れるから嫌なんだ」

『大丈夫、慣れで解決する』

「慣れたくないんだよ」

『ワガママだなぁ』

「どっちがだよ」


 などと会話で気を引きながら、レールガンが発射前の発光を見せる。その射角から着弾点を予測して、スライドしながら回避。レールガンのインターバルを狙って加速しようとして、違和感があった。まだ銃身が発光している。

 それを理解するより先に体が動いていた。人差し指を立てて、コックピットを守るように、高速振動剣を構えるとそこへ着弾。レールガンの弾は溶融しきる前に刀身へと当たり、ブラスターの照射口の幾つかが潰された。


「蜃気楼システムで発射を偽装してきたか……」

『ご明答。しかし、ちゃんと反応できるじゃないか』


 攻撃に移る瞬間というのは、野生動物でも隙ができる。攻撃の直後を狙うのが常套手段なのは対人戦でも同じだ。

 ただ今のBJの攻撃は会話の隙をついたようには見えるが、やや雑に行われていた気がして、勘が働いたようだ。

 しかし、直撃こそ防いだが動きが止まってしまった。


『ヒット、ウェーブ、チャージ』


 そこへマルチドローンが襲いかかる。それを左右の高速振動剣で迎撃すると、レールガンのリロードが終わっており、狙い撃たれる。しかも先程の偽装射撃を避けようとして、ジャマー空間の端へと追い込まれていた。

 レールガンを食らうよりはと、他次元生物の中へと飛び込むしかなくなる。

 レールガンより致命的ではないにせよ、何箇所かにダメージランプが灯っていく。

 そして、ジャマーの空間へと戻った所には、BJが待ち構えていた。


『おかえりなさい、ダーリン』


 その機体には刺突槍が装備されていた。


『君が接近戦に強いのは知っていたからね。多少なりと備えさせてもらった』

「くっ」


 咄嗟にコックピットへの直撃を外せたのは、ひとえにハミングバードの機動力の賜物だった。


『ぬっ』

「くらえっ」


 胴体に大きな穴を開けられながら、高速振動剣を振るって相打ちを狙う。しかし一本は、ブラスター部分が破損していて致命傷とならず、もう一本の剣はやって来なかった。

 先程小魚の群れへと飛び込んだ代償の一つが、剣を移動させていたレールだったようだ。あさっての方向へと飛んでいく剣が目に映る。


『フウカくんが惹かれるのも分かる。君との戦いはセオリーから離れていてトリッキー。それでいて反射も悪くないから、最後の最後まで気が抜けない面白い勝負になる。惚れ直したよ。ただ今回は私の勝ちのようだね』

「それはどう……」


 言葉の途中で機体が爆発して、視界が白く染まっていった。




「空っぽの格納庫だ……」


 ここはどこのステーションなのか。何にせよ、全ての資産は空母に移していたので、星系ステーションの格納庫は何もない状態。2段階に拡張しているので、無駄にだだっ広い空間が広がっていた。

 そして全てを注ぎ込んだ空母もコーラルボールへ突っ込んで大破した。


「すかんぴんになったかなぁ」


 そんな愚痴を零した時、レイド成功のファンファーレが鳴り響いた。




 時間は少し遡り、総員退艦命令により、狙撃隊を追い出した後、カクタスやファルコン達とその場に残されたシーナは、俺の授けた作戦の遂行に向けて動き出していた。


「パージされたアイテムを集めて下さい。カタパルトはこの座標。貯蔵庫はこの辺りにお願いします」


 ファルコンに搭載された蜃気楼システムにより、宙空に設計図が浮かび上がる。


「エースチーム様はフウカをこちらに近づけないように注意してください。ポチョムキムキン様は、小魚の襲来に備えて」

『了解っす』


 狙撃隊はパージされた滑走路のリニアカタパルトを集めてきて並べていく。同じくパージされた貯蔵庫から取り出されたのは、大型戦闘機並の大きなもりのような物体。

 空母の外装が多次元構造体として、カニの次元断層にも耐える強度を持っていると知って、同じ構造体で作っていたものだ。

 カタパルト4基を束のように固定し、その中央に銛を据える。


 そこへ空母から最後にパージされた大きなコアがやってくる。小魚の群れが追いかけてくるのを狙撃隊が迎撃、ポチョムキムキンがコアを守るために迎えに行った。


 そのコアをカタパルトへと接続すれば、即席の巨大レールガンが出来上がる。


『これ、まっすぐ飛ぶかすら怪しいのに、一発必中を求められるのかよ』

「それもそうですね。何回か試射を行ってから、銛はトドメに使いましょう」


 貯蔵庫にあった予備装甲を幾つか取り出し、銛の代わりに装填、射出していく。空気抵抗のない宇宙空間なら形はあまり関係ない。


『フウカがコーラルボールへ向かった』

「急ぎましょう、マスターの足止めも長くはもちません」


 コーラルボールへとステーションの装甲が撃ち込まれ、表層を破壊していきながら、巨大レールガンの軌道を確認、射撃精度を調整。


「マスターから座標が来ました」

『了解、これで当ててやる。座標が間違ってたら知らん』

「レイドの命運が全て乗っていると思って下さい」

『プ、プレッシャーだな』


 そう言いながらも特務曹長が認めた狙撃隊、それをまとめてきた隊長は迷いなく引き金を引いた。


 戦闘機を撃ち出すためのカタパルト4基の力は、しっかりと多次元構造体の銛を加速。コーラルボールの中心、コアへ向かって放たれた。




 巨大な銛は軌道上にいた小魚を巻き込みながらブレる事なく直進し、コーラルボールのサンゴ礁を何層も貫通し、中心にある巨大なコアを貫いた。

 それによりレイドの成功はほぼ確定。ただ宙域に存在する小魚の一部は、カタパルトに接続されたコアを目掛けて襲いかかってくる。

 狙撃隊とエースチームは、その迎撃に死力を尽くす羽目になった。序盤の襲撃と違って、補給も修理もできない状況。守る盾もなく、ポチョムキムキンが必死に盾になり、そこを狙撃隊が撃破していく。


 やがて対海賊部隊が援軍に駆けつけ、最終的には空母のコアも守ることができたのは、嬉しい誤算だった。

ボツネタ。


 BJの機体から宙空へと映像が映し出される。

 そこには黒髪の美女の銀髪の美少女がカメラを見上げるように自撮りしている姿。肩が露出するほど引き降ろされた和服は、不自然なほどの際どさで谷間を見せる胸元に引っかかり、体にフィットするパイロットスーツの少女と身を寄せ合う事で、何も言えない情景を作り出していた。

 視線を釘付けにする光景の中、必殺の弾丸が打ち込まれた……。


 レイドを締めくくるにはコメディ寄りの展開だったので諦め。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これって突入部隊とフウカさらにBJもまとめて撃墜扱いになったのだろうか? [一言] 主人公自身を囮に妨害サイドが手を出せない所から一撃必殺を狙うとは 周囲の人達への信頼で成り立つ方法と…
[一言] おー、これは完全に作戦勝ちですな あくまで戦闘での勝ちに拘ったフウカ、レイド妨害を目的としつつ色気だしすぎたBJに対して、多段的に準備した主人公が一手上回りましたな
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