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 ある程度、手の内を晒しあった俺達は、本格的な戦闘へと突入する。攻撃を見て避けられるフウカにとって、途中で軌道が変わる電磁弾は、相性が悪かったらしく、いつもは見せない大きな動きで回避を行っている。

 ぶっちゃけハミングバードの積載量だと弾数が少なく内心ヒヤヒヤなのだが、相手からすれば分からないだろう。


 一方のフウカは、マルチドローンを飛ばして攻撃してくる。


『ヒット、ウェーブ、サークル』


 声に合わせて大きく波打ったり、円を描く様に飛んだりと、軌道にバリエーションが多く、複数飛来すると、回避先の選定がシビアになってくる。


『ヒット、ツインバード』


 その声と共に2体のマルチドローンが飛んでくるが、微妙に軌道は外れており、直撃はしないコース……そこに罠があるのは、読めている。

 俺は2体の間を避ける様に移動して回避した。間近に通る際に、ワイヤーらしきものが光るのが見える。ワイヤーで切断はされなくても、機体に絡まれば大変な事になったはずだ。


「しかし、いちいち声に出さないといけないとなると、こっちが予測できて楽だな」

『あ、マイクオフにするの忘れてた』


 ……しまった、余計な一言で、フウカの声が聞こえなくなる。途端にマルチドローンの軌道を、目で判断するしかなくなり、窮地に追いやられる。


「うひっ、やべっ」


 ただマルチドローンを攻撃に使えば、その分守りは薄くなる。僅かに近づいたタイミングで散弾を発射、察したフウカが距離を取ろうとしたが、電磁弾で追撃を入れる。

 残りのマルチドローンがファルコンを守るように動いて、軌道を反らしていくが、何体かは撃ち落とす事ができた。

 とはいえ、残弾がない。打つ手がないかと思った時、通信が入った。




『霧島さん、到着した。後は任せてくれ』

「まずは情報を送るから確認してくれ、最後まで情報を集める」


 エースチームの到着だ。ここまで保たせられたら俺の役割は終了。あとはマルチドローンをもう少し道連れにできれば御の字だろう。

 マイクをオフにされたので、その声は聞こえないが、タイマンじゃなくなった事に不満を言ってそうだな。

 最後くらいは勝負に出てやるから安心しろ。

 俺は最後っ屁をしかけるべく、フウカへと特攻を仕掛けた。



 俺の動きに気づいたらしいフウカは、一旦全てのドローンを回収。レールガンで攻撃してきた。そういえば、マルチドローン以外にも攻撃方法はあるか。ミサイルもあるはずだ。

 大きく避けたくなる気持ちをぐっとこらえて、距離を詰める事を重点に置く。羽にも胴体にも弾がかすり、ヒヤリとするが、昨日の調整が活きている。船体の大きさも自分の体の様に感じられた。

 最短コースで距離を詰めた俺に、マルチドローンをまとめて攻撃してくる。これはさすがに避けれない。が、俺の目的はドローンの数を減らすこと。

 高速振動剣を起動して、ドローンを正面から受け止めていく。早いうちから切り落とす事もできたが、それだと次からは攻撃方法を変えられる。なので、まとめて使わざるを得ないこのタイミングを待っていた。


 2枚、3枚とブーメラン型のマルチドローンを切り裂き、代わりに2枚、3枚と本体に衝撃を受ける。一気に減っていく耐久ゲージを見ながら、高速振動剣を射出。咄嗟に反応して回避に移るフウカはさすがだが、高速振動剣もスラスターで軌道を変えられる。

 逃げるフウカを追うように軌道を曲げ、直撃を与えるかというところで、ワイヤーが限界に達して軌道が変わってしまった。まだちょっと遠かったか……。

 ファルコンが健在なのを確認したところで、視界は白く染められていった。




「ふぃ〜また負け先行だな」


 本当ならヘルメットを外して一息つきたいところだが、VRゴーグルを外す訳にもいかない。緊迫した一戦に手汗が凄くなっていたのを拭う。


「マスター、ちゃんとギッタギタにしてくださいよ」

「いやいや、俺にはあの辺が限界だって」

「そう言いながらアレを用意してあるくせに」

「おっと、ネタバレはそこまでだ。どっちみち俺の体力を回復しないとまともに戦えん」


 空母の艦橋へとリポップした俺は、戦況を確認する。このリポップ機能は空母保有者の俺しか使えないのが残念だ。まあ、バンザイアタックを繰り返すのも面白くはないか。

 俺がフウカと戦っている間にBJの方も戦場に現れ、ゲート側の主力へとジャマードローンを散布。戦場に一定の混乱を与えていた。

 ドローンを撃破すれば妨害はなくなり、ミサイルを熱源探知に切り替える事で被害は減らせるが、通信ができない一点だけでも、割と面倒な事態に陥っていた。


「司令部からの情報がなくなるのは厄介だな」

「今の所、小魚に押し込まれる様子はなさそうです」

「ただレーダーのリンクも切れたから、BJがまだそこに居るかは不明か」

「ですね」


 ゲート破壊を目指してレイド失敗を狙うかもしれないし、フウカの援軍にくるかもしれないし、コーラルボールに突入している部隊を狙う可能性も否定はできない。


「神出鬼没、自由気ままってのは厄介だ」


 いっそのこと、また秘密基地を攻撃して、帰ってもらえないかとさえ思ってしまう。

 対海賊戦線はやや押し込まれ始めているか。エースチームが対フウカに動き、修理のペースが遅くなったために、戦線が空母に近づきつつある。


「テコ入れしたいところだが、何かないかな」

『俺達が向かうか』


 減速したことでコーラルボールから距離ができ、小魚の襲来数が減っているので、狙撃隊がやや手余りになっている。半分を援軍に出せなくはない。

 ただ乱戦になっているので援護射撃は難しいし、遠距離からの狙撃は有効になりにくいのはレイド前の射撃でも分かっていた。


「どちらかというと、レイドのクリアを早める方向で考えたいですね」

『もう一度近づくか』

「空母の加速力だと時間はかかります……いっそ、空母を離れてコーラルボールに仕掛けてもらいましょうか」

『了解した。弾が切れそうになったら戻ってくる』


 激戦で消耗した体力が回復すると、待っている時間はもどかしい。狙撃隊の半数ずつ交代で、コーラルボールへの攻撃に回ってもらう事にした。

 その間に空母も再びコーラルボールへ接近するための回頭、加速を開始する。そうすることで、海賊達の戦線から距離が伸びる形にはなる。




「フウカの方はどうだ?」

「エースチームの方々は頑張ってると思うんですが……」

「マルチドローンの数が減ってない?」

「はい、分離機にまだストックがあったようです」

「むむむ」


 俺が決死の思いで減らした分は、簡単に補充されてしまったようだ。分離機を先に撃破するべきだったか。

 ただエースチームもマルチドローンという全く新しい攻撃に対して、しっかりと対応できていた。戦況としては拮抗していると思う。


「こうなると頼みの綱は突入チームだな」


 レイドをクリアできてしまえば、それぞれの戦場が膠着状態でも勝ちだ。




「で、突入チームは?」

「こちらも難航していますね。前回とはコーラルボールの内部構造も変わっていて、マッピングのやり直しが必要なようです」


 小魚もかなり引き出したが、まだまだ数はいるようで、撃退しながらの探索らしい。

 BJとフウカと海賊と突入チーム、それぞれに時間との戦いの様になっている。この状況で俺ができる事としたら何か……。

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