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「高速で飛来する機体があります。ハイドロジェン並みの速度です!」

「来たかっ。2機いるのか?」

「いえ、1機のみですが、合体機です」


 一瞬、それぞれにコックピットがあれば、二人で乗ることもできるかと思ったが、それだと合体機構の分、積載量が減るので弱体化するかと思い直す。

 となれば来るのは一人。


「フウカなんだろうなぁ……」


 まだどこかで覚悟しきれていない自分がいる。とはいえ受け止めてやる必要はあるのだろう。


「エースチームに一報を入れておいてくれ。俺はハミングバードで出る。すいません、厄介なのがくるんで迎撃に出ます。修理等に時間がかかるようになるんで注意してください」

『了解した』


 修理作業はシーナに任せる事もできるが、カクタス部隊も操っている状況。どうしても俺が対応するより遅くなってしまう。

 そこは予め順番を決めてローテーションしてもらうしかなかった。


「霧島さん、俺も一緒に行くっすか!?」


 ポチョムキムキンが名乗り出てくれるが、機体性能的に向いてないのは否めない。


「この相手は高速機動戦になる。シールド機ではついてこれないから、ここは我慢してくれ。留守を頼む」

「……わかったっす。ご武運を」

「ま、エースチームが戻ってくるまでの時間稼ぎさ」




「ハミングバード、霧島遊矢。出るっ」


 船内カタパルトを利用して一気に加速。宇宙へと飛び出した。今となっては最も馴染みのあるハミングバード。昨日の調整で更に乗りやすく、俺の思いに反応してくれる。


「さてさて、一応、一勝一敗といったら怒られるかね」


 俺が勝ったのは、明らかに不調というか、寝不足でテンションのおかしかったフウカだ。あの時のイメージは捨てるべきだろう。

 後はBJのカスタマイズでどうなっているか。

 本命であるエースチームの為に、少しでも情報を引き出さないとな。


 ハミングバードのレーダーでも機影を捉えた。一直線に向かってきている。既にこちらを見つけたらしく、最高速から減速を始めていた。


『なんでやねん……きちゃった、はぁと』

「なんだ、それは」

『お姉さまが言っとけと』

「早くも悪い影響が出とるじゃないか」


 頭が痛くなる気がしたが、フウカと戦う事自体が頭痛の種だから今更か。減速中の機体が2つに別れ、一方が180度旋回してこちらを向く。


「ファルコンか……」


 光学ズームした先にいるのは、真紅に塗られたファルコンだった。




 彼我の距離が詰まり、攻撃する事なくすれ違う。後の先を狙ったつもりだが、フウカは攻撃してこなかった。

 旋回性能でいえば、ハミングバードが何倍も速い。反転して背後から遅いかかろうと操縦桿を倒す。


「っ、速いな」


 今までのノーマルファルコンではなかった加速で、振り向いた時には攻撃圏内から出ようとしていた。

 今までのファルコンとは違うという事を教えておこうということか。


 ゆっくりと弧を描いて戻ってくるのに対して、こちらは蜃気楼システムを起動。残像を付けて視覚を乱す事にした。以前戦った時よりも、ハミングバードの動き自体が速くなっているので、残像から本体部分を判別するのは難しくなっているはずだ。


「くっ、そんなに甘くないかーっ」


 しかし、ファルコンより放たれた弾は的確に本体を狙ってきていたので、大きく回避行動をとる。そして、武器がデフォルトの粒子砲からレールガンに変わっている事も確認する。

 機体を横滑りさせながら、こちらも換装していたレールガンでの攻撃。これはあっさりと避けられた。

 その動きを見ていると加速性能や旋回性能が上がっている。ベースはファルコンのままだが、各種能力がレア鉱石で強化されているのだろう。


 と、ファルコンが急に動きを変えた。こちらを狙う素振りから、逃げるかのような動きだ。その先には分離した機体が待っている。


「BJみたいにコンテナになっているのか?」


 補助武器が積んであるとすれば、厄介になる。合流する前に叩くべきか。こちらも合わせて加速する。


「!?」


 するとこちらの予想に反して、フウカは合流ルートから大きく外れる。それを追うか、先に分離した方を叩くか迷い、直感に従って逆の方向へ離れるように舵を切る。


 やがてフウカを追うルートと分離機へと向かうルート上に、何かが飛んできているのをレーダーが検知した。デブリに見えるソレはある程度の範囲で、それなりの速さで流れていく。もし直撃していたら大破はしなくても、それなりのダメージを負っていただろう。


「レールガンの弾か!」


 こちらに来る加速段階で、レールガンとして打ち出した訳じゃなく、弾だけをバラまいたようだ。重力のない宇宙空間では、一度向きを与えられた物体は、直進してくる。

 それを加速で追い抜き、先程のやり取りやら戦闘で時間を測り、弾が到着するタイミングで通るポイントに誘い込んできたみたいだ。

 レールガンで撃ち出された弾と違って、帯電しておらず攻撃とは判定されていない状態。レーダーでは直前まで認識されないような攻撃になっているようだ。


「BJの入れ知恵なんだろうな……」


 肝が冷える思いだったが、存在が分かればやり過ごすだけでいい。


『むう、誘導が下手だった。お姉さまの様にはいかない』


 少し悔しそうな声が聞こえてくる。BJが模擬戦の中ででも披露した手なのだろう。戦闘中に逃げるようなフウカっぽくない動きだったので、警戒したのが功を奏した様だ。


 ただ弾は近づかないと見えない。無理に弾の流れを横切って、被弾する訳にもいかず、フウカが分離機と合流するのを阻止する事はできなかった。




『マルチドローン、パワーチャージ……イッツショータイムッ』


 分離機にはやはりコンテナが内蔵されていたようで、そこからブーメランのようなへの字型のマルチドローンを吐き出す。しかし、こちらのレーダーがジャマーで潰される様な事はなく、ファルコンの周囲を飛び始めた。


『精神波で操作できる、サイコマニュピレーションシステム。略して、サイコニュ』

「ギリギリのネーミングだな、おいっ」


 色々とBJの影響を受けてそうなフウカの様子に、結構マジで心配になってくる。しかし、元ネタを考えるとかなり驚異か。本体とは別方向から攻撃されたら、新人類ではない俺では避けきれるとは思えない。

 本領発揮される前に畳み掛ける必要がありそうだ。


 そう考えて俺はレールガンを発射する。撃った瞬間から拡散する近距離用散弾だ。ファルコンには命中しなくても、周囲を飛ぶマルチドローンに当たれば数を減らせるはず。

 が、フウカもそれは分かっているのか、いつもの紙一重での回避ではなく、マージンを取っての回避を行う。そこで追加の一発を撃ち出す。弾速の速いその弾が、一瞬発光したかと思うと、周囲の散弾が向きを変える。

 内部に強力な電磁石を仕込んだ電磁弾は、周囲のレールガンの弾を一瞬引き寄せ、進路を無理矢理捻じ曲げる。本来なら距離ができれば広がっていく散弾が、一点に集まる様に動き、それをリードする電磁弾は弾速が速く、目標を捉えやすい。


「やったか!?」


 狙い通りにファルコンの周辺に集弾、破片を撒き散らす。

 が、マルチドローンは思ったほど減ってない。結構硬いのか。


『そのセリフは、負けフラグ。ヒット、行けっ』


 こちらへと加速を開始したファルコンから、マルチドローンの1体が分離、向かってくる。撃ち落とそうかと一瞬思ったが、戦闘機よりかなり小さいそれに当たるとは思えず、逃げる方を選ぶ。

 マルチドローンの機動力はさほど高くないようで、避ければそこまで追ってはこない。


『ヒット、リターン』


 が、使い捨てのミサイルと違って、マルチドローンはまたファルコンへと合流していく。

 弾数が限られる実体弾が、回収できるとなるとメリットはありそうだ。


「というか、精神操作とかいいながら、音声認識じゃないのか!?」

『わからない。声を出すようにすれば、精神波がまとまりやすいと聞いた』


 まあ、フウカに突っ込んでも仕方ないか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] フウカ、BJの影響は確かに受けてるけど、前に会敵したときの盲目的な敵愾心が見えないから、案外その辺もBJがケアしてそうな気がする しかしサイコ〇ュ搭載して〇ット飛ばしてくる高速機ってそれなん…
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