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「え、おまっ、BJの所にいるんじゃなかったのかよ」

「ん、お姉さまの所にいる。今日はレイドを邪魔するって宣戦布告しに来た」


 ズビシィと指を突きつけてくるが、顔はいつものぼんやりとした眠そうな顔なので、インパクトはぶれている。


「いやいや、よく分からん。レイドの失敗を悔やんでいるのに、なんで邪魔する方に回るんだよ」

「ん、ちょっと違う」


 基本的に口下手なフウカの説明は中々にややこしい話になった。

 そもそもの発端は、レイドの失敗だったのは間違いないのだが、その責任は自分にあるとフウカは思ったらしい。

 とはいえレイドの結果を個人で左右できるなんて傲慢じゃないかと、俺なんかは思ったんで、フウカの責任じゃないって慰めたつもりだったのだ。


 しかし、フウカとしてはファルコンに、無改造にこだわったがゆえの失敗。自分のワガママで回りに迷惑をかけた。批難されるべきは自分だと思い込んでいる。

 なのにネットを見れば、俺やキーマさん、フレイアなどに批難が集まり、逆にフウカは成金王に抵抗する英雄的に祭り上げられ、希望の光の様な扱いになっていた。


「罰せられるべきは私」

「いやいや、こだわりを持ってプレイするのは悪い事じゃないぞ」


 俺だって生産メインで好き勝手やってるしな。


「それに罰せられるべきって言うなら、それこそBJだろ。なんでそっちに付くんだよ」

「お姉さまは一人でレイドを左右できると証明した。すごい」


 フウカは自分のせいでレイドが失敗したと思っている。俺やFoodsの皆は、フウカだけの責任じゃないと思っている。

 そこに現れたBJは個人の力でレイドを失敗させてみせた。つまりは、フウカもまた一人でレイドの成否を分けたという論法らしい。


「……発想が斜め上過ぎてついていけないんだが」

「お嬢ちゃんとしては、皆に止めて欲しいんだよ。一人の責任じゃないというなら、皆で力を合わせてレイドを成功して見せてくれって」

「違う、なんでやねんを正面からぶっつぶす」


 ふんすと拳を握って鼻息を荒くする。


「単純に海賊に目覚めただけじゃないですかね?」

「お嬢ちゃんの性根がそうじゃないのは分かってると思うけど? ルールを破る弱いものいじめな海賊タイプではなく、制限の中で突き詰めるタイプだ」

「そりゃそうですけど、対人好きなのも確かだし……」


「言うことは言った。明日を楽しみにしている」


 ニヤリと笑ったフウカは、そのまま転送されていった。




「で、どうしたんだ?」


 フウカの宣戦布告を受けて、再びどよ〜んとした空気に包まれたエースチーム。そこに呼び出されたタイムアタックチームがやってきたのだ。

 俺は自分の中でも整理がつかず、どう説明したものかと悩んでいると、ヤキソバが分かりやすく説明してくれた。


「フウカの考えはよく分からんが、とにかく次のレイドでは敵って事だな。いいぜ、やりがいがある」


 そう息巻くのはこの一週間で、フウカのタイムを塗り替え、第7惑星トップのタイムを記録している者だ。


「まあ、あの時に変な動きしてんなと思ったが、まさかレールガンすら持ってなかったとはな」


 続くのはフウカと共にコアまで突入したプレイヤーだ。フウカに戦闘力がないのが分かっていたら、もっと違うアプローチができたと悔やんだ様子だ。


「といって、俺達も仲良く皆でっていうよりは、個の能力を信じてる派ではあるんだが……レイドが失敗していいって話にはならんな」

「それに、アンタが成金王なんだろ。ネットじゃ色々言われてるが、俺としてはガス惑星突入を見つけてくれただけで、協力する理由にはなるさ」


 ヤキソバの影に隠れていたつもりだが、しっかりとターゲットされていたらしい。


「そう言ってもらえると助かる。俺としてもフウカが悪者にされるって事態は避けたい」

「おう、一つ確認なんだがよ。てめぇがセクハラして嫌われたってだけじゃねぇだろうな?」


 一歩離れて会話を聞いていた一人が、ズズッと近づいてきて凄んでくる。そこに割って入る人影があった。


「はい、マスターにそんな根性はありません。視線が際どい所を見てる事はありますが、表面上を取り繕って何気ない素振りに見せてましたし、女性から嫌悪される程ではありませんよ」

「えっ」「あれ、噂のシーナちゃん」「何か他のAIと違うな」「プレイヤーの会話に割り込むとか」「嫉妬、嫉妬なの?」


 シーナの乱入で周囲がざわついた雰囲気になる。炎上のトラウマが刺激されるが、あの時の様なあからさまな敵意というよりは、戸惑いが広がっているようだ。


「マスターは、変人でコミュ障なので、女の子と仲良くするくらいなら、一人黙々と作業に勤しむのを好むので、皆様が危惧するような事はありえません」


 などと人を山里深くに引きこもった偏屈じいさんの様にのたまうシーナさん。そのためか、周囲の視線が残念なモノを見る目に変わっていく。


「え、いや、まあ、俺だって人並みに性欲がないでもないんだが……いや、フウカとどうこうってのもないし……」


 何とか言い訳をしようとするが、うまく言葉を紡げない様子に、周囲には納得の空気が流れ始めた。


「コホン。フウカの事はさておいて、俺としてはレイドを成功させたい。フウカとBJを相手にするなら、出し惜しみできる状況でもない。全力でサポートするから、腹を割って話そう」


 仕切り直して情報開示をしていく事にした。




「BJの合体機とジャマーは分かっていたが、マルチドローンに鳥籠ねぇ」

「それより、自機のカスタマイズってどうなんだ」

「攻撃力アップの話は聞いてたし、他にも色々と石があるのも判明してるし」

「コイツを見てくれれば伝わるか」


 シーナのタブレットに、ガス惑星でタイムアタックするジェリーフィッシュの映像と、フウカのファルコンと戦闘しているハミングバードの映像を見せる。


「なんだこの機体、見たことないぞ」

「これはハミングバードをベースに、タイムアタック用に作った機体だ」

「ここまで作れるのか」

「それよりこっちのハミングバード、動きおかしいぞ」

「速すぎる」

「赤か、赤色にすれば速くなるのか!?」


 口々に驚きの声が出てきている。カスタマイズのインパクトを与えることには成功したようだ。


「今からできる調整となると、機動力アップと全体バランスの調整くらいだと思うけど、機体を任せてくれるならすぐにでも取り掛かりたい」

「……」


 他人に機体を預けるのはやはり抵抗があるようだ。俺としても他人にカスタマイズさせるのは気が進まない。


「……ま、タイムアタックの結果を見てたら悪くはならんよな。分かった、任せよう」

「そうだな、このハミングバードを見てたら乗ってみたくはなる」

「しゃーねー、任せるわ」

「ありがとう。レイドの成否は要塞に突入するあんたらに掛かってる。精一杯の調整をさせてもらう」


「俺達は多分、乗りこなせないから対フウカの作戦を練っておくわ」

「ああ、師匠を越えるのは弟子の務めだしな」


 Foods連合のエースチームは、残るようだ。正直な話、人数が増えすぎると調整が間に合わなくなる可能性もあるのでありがたい申し出だった。


「すまん、助かる。突入チームは機体に乗って、デフシンまで来てくれ」

「デフシン?」

「レイドに向けた秘密兵器があるんだ。海賊側にバレると色々と厄介なんで、掲示板なんかには書かないで欲しい」

「……」


 俺のセリフに顔を見合わせる面々。しかし、ここは信じるしかない。


「それじゃ、デフシンのゲートで待っている」

ハミングバードの戦闘記録に関して、BJとの戦闘としていましたが、ダクロンでの戦いは映像ないので、フウカとの戦闘に差し替えましたorz

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