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 さて空母型ステーションの全容を紹介しよう。

 全長は100m、幅40m、高さ20mの楕円と言うか、小判型だ。戦艦大和が263mらしいので半分以下のサイズだ。まあ横幅はやや広いけど。

 陸上競技のトラックの内側くらいと同じサイズ感だな。

 中には戦闘機の格納庫が、24機分。

 それと生産区画が入っていて、工作機械が並んでいる。

 一番広く場所を取っているのは、採掘した資源を置いておく貯蔵庫と、作製した物を並べていく倉庫だ。地味に貯蔵スペースが一番効率化を図る上で期待度が高い。


 甲板部分にはリニアカタパルトが4本、俺とシーナが操る3機分だな。甲板後部の中央に艦橋が設置されていて、パーソナルスペースは艦橋直下にある。基本的に転移装置で移動するので、位置関係はあまり関係はないけどな。


 武装は現状ゼロである。

 要塞砲を撃つにはエネルギー供給量を考えると厳しいし、デフシンでは使えない。

 レールガンやミサイルを残弾をほぼ気にすることなく撃てるのは魅力だが、俺やシーナの射撃精度では目立った功績を上げるよりも、誤射の方が怖かった。

 元々空母自体に交戦能力を求める事もないだろう。補給基地としての運用が大事だ。


 その分、装甲には厚みを持たせて、生半可な攻撃では破壊されないし、1区画が破られても隔離シャッターで連鎖を抑えられる作りだ。




「やっぱり加速はもっさりだなぁ」

「戦闘機と比べるものじゃないですよ」


 第3惑星にある輪っか状の小惑星帯へと向かっている。ステーション建造の為にストックしていた汎用素材は底を尽き、不足分を購入して建造する羽目になっていたので、それらの補充も兼ねての練習航海。

 赤外線探知式ミサイルを量産するにも必要なのだ。


 目標地点の中間まで加速していき、そこを過ぎれば減速していく。ちなみに減速用には前方に取り付けたバーニアを使用。

 反転して推進用バーニアを減速に使用する方法も考えたが、この巨体だと旋回するにも時間がかかりもったいない。

 それよりも積載能力に余力があるので、バーニアを追加した方が効率が良かった。


「レイドでは固定拠点としての運用だし問題あるまい」

「他次元生物はもとより、海賊にも狙われますよ?」

「そこは皆に守ってもらうさ」


 転移ゲートを壊されたら、レイド失敗。それよりも1週間で作った空母がやられる方が痛みは少ない。もちろん、ただでやられるつもりもないが。


「新星系で採掘できそうなのは、デフシンだからな。そこの攻略が落ち着かないとまずい」


 ダクロンは海賊の住処だし、グラガンはスカラベを倒さないと採掘できない。空母ステーションを横付けして旨味がでるのは、デフシンだけなのだ。




 やがて第3惑星の小惑星帯へと到着。ゆっくりとした速度で、そのまま小惑星帯へと分け入って停泊すると、周囲には次々にゴブリンが現れた。

 投石や体当たりで攻撃してくるのを装甲板が受け止める。


「被害状況は?」

「軽微というか、ノーダメージです」

「まあ他次元生物でも最弱だしな」


 物理攻撃はシールドでは防げないが、装甲が分厚ければ止めることはできる。それを実証したかった。


「ただ弱すぎて分からんか。とりあえずはんげ……」


 むむむ、武装のない空母ステーション。反撃する武器はない。当然、戦闘機を出して攻撃するしかない。

 しかし格納庫からせり出して、甲板のカタパルトで加速していく間を狙われたら、満足に回避もできやしない。


「どうしようか」

「こんなこともあろうかと、内部カタパルトも用意しています」

「内部カタパルト?」


 ステーションの下部から打ち出す形のカタパルトは、内部で十分な加速を行ってから外へと飛び出す仕掛けになっている。一機分しかないが、初速をもって発進できるので、周囲のゴブリンからも狙われにくい。


「ハッチを開けるタイミングを間違えると、そのまま激突ですけどね」

「おいおい」

「そんなヘマはしませんよ! たぶん」

「たぶんってなんだよ……まあ、信用してるけどさ」


 言動はともかく仕事はきっちりこなすのがシーナだ。ハッチの開閉くらいはやってくれるはず。


「ま、ゴブリンくらいちゃっちゃと片付けますかね」

「いってらっしゃいませ」


 ハミングバードのみで出撃する。宇宙空間にレールだけが伸びたリニアカタパルトと違い、内部カタパルトは船内で加速する。

 暗い通路をライトが照らし、その中を一気に加速していく。宇宙そらの中を加速するより、壁が間近にあり、そこに並んだライトが過ぎ去っていくスピード感はかなりのものだった。


 そのままステーション外へと飛び出して、周囲のゴブリンの状況を確認。空母ステーションの前方で群がっている集団に向けて近づいていく。


「俺だけでも問題ないが、ファルコンで順次出てくれ」

「了解です、マスター」


 あ〜、甲板の上を掃除した方が出やすいか?

 ま、いいや。ゴブリン相手の無双プレイは爽快感があるので、そっちを堪能することにした。




 ゴブリンは、小惑星帯に住む他次元生物で、粒子砲一発で撃破できる雑魚だ。動きも遅く、あまり小惑星から離れる事もないので、無傷で倒すのも難しくはない。

 ただ数は多くて、周囲の小惑星に隠れていたりするので、油断をしていると不意打ちを受ける。

 攻撃方法は投石か体当たりで、宇宙空間での戦闘としては最も遅い部類の攻撃、見てから回避できるものなので、ハミングバードのスラスターで上下左右に滑りながら、粒子砲を撃ちまくる。


「むむっ、機動力を上げた分、小惑星帯で動き過ぎるとぶつかりそうだ」


 右手のスティックを細かく調整して、ゴブリンや小惑星の隙間を縫いながら移動していく。機動力アップの鉱石を利用した追加スラスターのおかげで、操作はかなりクイックに反応し、僅かなブレが大きな差になってしまう。

 PCのマウスカーソルのスピードを上げた様な状態で、狙ったところへ行くのは早いのだが、行き過ぎてしまう事も多い。狙った所に止めるのは早々に諦め、微調整で動きながら次のポイントを探す。


「でも楽しい……っと」


 一発の粒子砲で直線上に並んだゴブリンを5匹まとめて葬って、次の獲物へと向かう。目まぐるしく動く視界、射撃は銃口を向けるというより、船体を滑らせながら、正面で捉えた時にトリガーを引く感じ。

 船体操作と射撃カーソル操作を同時に行うなど神業に近いが、決まったタイミングでボタンを押す程度なら俺でもできた。

 外すようなら、こちらから近づいて的をでかくすればいいだけの話。高機動のハミングバードを自在に操っていく感覚は、俺の好みに合致していた。


 やがて一定数を撃破したところで、ボスの登場である。一回り大きなゴブリンリーダーは、両手に大きな岩を持ち上げ、こちらへと投てきしてくる。

 ただ目に見える程度の速度、ハミングバードであれば回避は容易。攻撃の合間を縫って、一気に距離を詰めていく。

 ゴブリンに比べるとタフで、何発も粒子砲に耐えるリーダーだが、高速振動剣の一撃には耐えられない。あえて射出はせずに至近距離まで迫り、なで切るように周囲をスライド。軽くバックして離れると、腰をひねってこちらを向こうとしたリーダーの上半身と下半身がズレていき爆発する。


「他次元生物も爆発して消えるのは何でかね?」

「多次元構造体のコアが損傷してエネルギーが放出されるから……みたいですね」

「なるほど、なるほど」


 多分、すぐに忘れそうな設定だ。

 とりあえず敵は排除したから採掘タイムだな。


「補助電源にしているマンタを採掘に出して、他次元生物へのジャマーを発動……いやまてよ」


 空母ステーションの武装容量キャパシティは、要塞砲を搭載できる程度には大きい。それを利用して、大型のヒートブラスターを取り付けてみよう。

 ステーション内の生産区画で、汎用素材を……ってないじゃん!


「やはり初心は忘れちゃ駄目だな。マンタで採掘だ!」

「仕方ないですねぇ」


 個人ステーションの難点は、ステーションから距離があるとオークションが使えない事だな。近づけば転送装置の許容範囲に入れて、オークションや納品任務も使えるようになるらしい。


「先立つものもないし、地産地消だな」


 シーナにマンタで採掘してもらいつつ、俺もハイドロジェンでレア鉱石を探してマーキングしていく。カニ程度はサクッと倒してしまえるようにはなっているが、空母の耐久力チェックに貢献してもらおう。

 それらの試験を始める前に周辺の小惑星を採掘していく。

 1回目の採掘が終わったところで、生産区画を稼働して大型のヒートブラスターを作製。空母の武装として設定していく。

 マンタやブラックイールに比べて出力の高いブラスターは、射程も長く少し離れた場所へも届く。周囲の小惑星を溶かしての素材回収が加速していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] レーザーなり機関砲なりの近接防御砲台くらいは空母につけといてもいいのでは?針鼠にしなくてもハッチ周辺と機関部、あと艦橋付近をカバーできる位置に一~二基置いとくだけでも気持ち程度のミサイル迎撃…
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